京急加算運賃というコストの二重取りで得する人、損する人 乗客が、通常運賃に加えて支払っているのは?
京浜急行で、天空橋から羽田空港駅間を通過する場合に、50円の加算運賃が設定されています。
この加算運賃は、羽田空港が沖合に移転して、空港島まで鉄道が延伸され、羽田空港駅が開業した平成10年11月から適用されています。
何を上乗せしているかといえば、延伸した設備投資費と、天空橋から羽田空港第一第二ターミナル駅までの地下部分の「施設使用料・利息分」です。
上乗せ運賃をとることを許しているのは国交省ですが、上乗せ運賃をいつやめるか決めるのは、鉄道事業者。
当初の加算運賃は170円で、回収率50%で終わると言われてきました。
ところが、途中で考え方が変わり、2021年度末現在、85.6%回収されていますが、いまだに50円の上乗せ運賃は続いています。(2019年10月1日~170円から50円に加算額を引き下げ)
国は、上乗せ運賃の認可をしますが、終了する時期は、事業者にゆだねられているためです。
小田急、名鉄、近鉄など、加算運賃を廃止した事例もあるようですが、京浜急行の加算運賃はなかなか終わりません。
先日、交通問題特別委員会に、加算運賃の回収状況などについて報告があったので、あらためて、私たちが支払っている加算運賃について、考えてみました。
京急から出された委員会資料をみると、設備投資費分(鉄道を羽田空港まで敷くためにかかった建設費)は
すでに回収されていることがわかります。
今、私たちが京急の空港線で天空橋⇔羽田空港間を利用して支払う上乗せ分50円は、ほぼ、国が作ったトンネルの使用料や、国や東京都の土地を通るための地代、それと利息です。
借りている費用ですから、毎年請求されて、それを支払わなければなりません。
しかも、人口減少、生産年齢人口減少などで鉄道利用者も減っていますから、基本運賃からの回収も思うようにいかず、加算運賃に頼っていることがわかります。
しかも、利益も含めて回収して良いので、基本運賃で回収できない利益も加算運賃に頼ることになっているかもしれません。
不思議なのは、国が作ったトンネルの費用は、すでに、私たちが税金で支払い済みだということです。
にもかかわらず、その土地と施設の使用料を京急に貸し出し、施設使用料として徴収するので、
私たちは、すでに税金で建設費を負担したはずなのに、京急からさらに、加算運賃として、切符の上乗せ料金をとられます。
国は、使った税金が、国民の切符代を経由して戻ってきますからへそくりをしたようなものではないでしょうか。
京急は、上乗せ運賃をいつやめても構わないので、鉄道需要が減っても事業を継続できます。
私たち国民、乗客が、税と切符代の二重取りで、大きな負担をさせられています。
★京急自ら投資して建設すれば、税金と切符代の二重取りは起きないと思うのですが、、。
そのうえ、大田区は、2018年に、駅や鉄道が通る土地の一部を国から165億円で購入しています。
下の図のオレンジが大田区が国から165億円で購入した土地で、その地下ブルーの部分に京急の線路と駅があります。国の土地を通っている部分がピンクです。
国から大田区に所有権が移転した時、国は、大田区に地代を支払うようになったのでしょうか。
鉄道が通っていることで地代が発生していることについて、大田区から説明もありませんでしたし、財務省の土地購入の審議の議事録にも触れられていませんでした。
国は、大田区の土地にトンネルを作っていることになりますから、大田区に地代を支払っているのでしょうか。
そうなると、大田区が、京急から地代を受け取っているのでしょうか。
複雑なことに、大田区が165億円で買った土地は、鹿島を筆頭事業者とする企業体=羽田みらいに50年間の定期借地権で貸し出していますが、企業体の中には、京浜急行も入っています。
b532fd9280f8d69d40ce67dabe30b474.pdf (nasurie.com)
大田区にも確認していますが、時間がかかると言われており、すぐに返答がないことから、もしかしたら、きちんと整理されていないかもしれません。
大田区議会でも、区民のためにもなんとか一日も早く、加算運賃を廃止したい思いで、議論し続けていますが、加算運賃に関わる国の審議会の議事録も非公開、加算運賃で回収しているコストの内訳も非公開、乗降客数も非公開、とブラックボックスの中、いつまでも終わらない感があります。
今回、加算運賃の施設使用料に大田区が所有する土地が含まれたことがあきらかになり、大田区も、国や京急だけの問題にすることが、さらにできなくなったのではないかと思います。
少し複雑な話なので、見えにくいかもしれません。
動画で説明出来たら、このサイトにリンクをはりますね。
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以下、資料と気になることをまとめました。
通常運賃に上乗せして支払っている「費用」の中身。
以下は、委員会で配られた資料です。
見にくいと思いますので、京急加算運賃PDFのリンクも貼っておきます。
【加算運賃に係る資本費コスト及び回収額】 (単位:百万円) | ||||||||
平成29年度 | 平成30年度 | 令和1年度 | 令和2年度 | 令和3年度 | 累計額 | |||
2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | ||||
A | 設備投資額 700,081 | 70,081 | ||||||
B | 施設使用料・支払利息等 | 946 | 963 | 933 | 772 | 805 | 39,036 | |
C | 加算運賃収入 | 5,961 | 6,236 | 4,210 | 772 | 1,012 | 89,791 | |
D | 基本運賃収入からの回収額 | 326 | 348 | 186 | 0 | 0 | 3,618 | |
年度末累計額による回収率 | 76.3% | 81.8% | 85.2% | 85.3% | 85.6% | 85.6% | ||
(C+D)/(A+B)×100 |
気になること
(その1)設備投資費 70,081は、すでに加算運賃で回収済み
天空橋から羽田空港までの鉄道施設整備の費用は、すでに加算運賃と基本運賃で回収されている
(その2)施設使用料・支払利息とは何か
国が建設した空港内シールドトンネル一部の使用料を国土交通省、東京航空局に支払っている
羽田空港駅及び空港内の鉄道関連施設、変電所などの土地使用料として国に支払っている
都有地海老取川下を通るので都に土地使用料を払っている
借入金の利息を払っている。(金額が変わるのは、借り換えると利息が変わるから)
平成23年10月 羽田空港対策特別委員会-10月18日-01号 (gikai-ota-tokyo.jp)
→ 国(民)の土地に、国民の税金で作ったトンネルを、国が、京急に貸して、
京急から施設使用料を取り、京急がその分を私たちから運賃で回収していることになります。
私たちは、税金でトンネル代の負担をしたのに、切符代で再び、
トンネル代を支払わされていることになります。
→ しかも、状況が変わって、いま、土地の一部が大田区の所有になっています。
京急が地下を通る空港島の土地を大田区が国から165億円で購入。
そうなると、
大田区民は、トンネル建設費を国税で負担したうえ、区民税等で土地代も払っているのに、
加算運賃50円も上乗せで支払わされていることになります。
(その3)基本運賃収入からの回収額が2019年から減ってきており2020年2021年の基本運賃収入からの回収額は0。一方、加算運賃収入で施設使用料・支払利息を回収している。
本来基本運賃で回収すべき投資費用、あるいは、施設使用料を、基本運賃収入ではなく、加算運賃で回収するかたちになっている。
乗降客数が減ると基本運賃収入からの回収額がへり、加算運賃での回収割合が高い
乗降客数が減ったり、他のコスト増の要因があることで、基本運賃収入からの回収額が減れば、
加算運賃はやめ(られ)ないのではないか。
そもそもの、鉄道需要の考え方に関わる問題ではないか。(都市鉄道等利便増進法)
(その4)回収額には、事業者の利益が含まれている(過去の委員会答弁から)
回収額は必ずしもコストそのものではなく、事業者の利益も含まれると説明されている。
仮に、経費がほぼ回収できる状況でも、期待利益を高く設定すれば、加算運賃はやめ(られ)ないのではないか