大田区の、平成30年度決算の認定に賛成できなかったわけ

老朽化した公共施設、中でも小中学校の更新が大田区の財政圧迫要因に

老朽化した公共施設の更新が、莫大な大田区の財政負担になっていて、課題になっています。中でも、築40年以上の建物の延べ床面積64万㎡のうち、約76%の48万4600㎡は、小中学校などの学校施設がしめています。

大田区の公共施設の老朽化は、老朽化した小中学校をどのように更新していくか、という問題でもあります。

学校複合化は、大田区の財政負担を軽くしているか

そこで、今回の決算委員会で、私は、学校建て替えにおける複合化について、入新井第一小学校や志茂田小学校を事例に、効果の検証をいたしました。
老朽化した公共施設の更新が課題になっているなかで、複合化により施設を更新すれば、コストが下がり、総床面積が減るなど、効率的な建て替えができるかのように言われてきたからです。

学校複合化では減らない、施設数、床面積、建築コスト

ところが、この10年で比較しても、効果といわれてきた、施設数も、総床面積も、建築コストも減らず、建て替え時期が集中しないよう、年度ごとの建設費の負担を均等にすることさえできていないことが明らかになりました。

学校複合化で長くなる工事期間

特に小中学校を複合化して建て替えると、施設が大きくなるため建設期間も長く、建築期間中、良くない教育環境の中にいなければならないにもかかわらず、新しくなった学校に入ることのできない子どもたちも少なくありません。

複合化では向上しない教育環境

そのうえ、出来た学校は、こどもたちの教育環境が特に向上するわけでもありません。

 

複合化でコスト負担のピークの山がさらに大きく

 

それどころか、建て替えピークのこの時期に、複合化して、施設を置きこみ、コスト負担のピークの山をさらに大きくしています。

 

奈須りえの指摘後、大田区も複合化のメリットを言えなく

私の質問のあと、複合化の効果についての質問をうけた大田区は、大田区は公共施設等管理計画に記した複合化のメリットである、

●施設数を減らし、床面積を減らす、

●建て替えや維持管理費を減らす。

●負担の平準化

をあげることができませんでした。

財政的な効果も最終的には認められず、それどころか、容積率に余裕のある学校に、とりあえず建物を建設したり、周辺の施設を入れて、周辺に使用しない公共施設を作り、民間事業者に売却したり貸し付けたりするために行っているのが、学校複合化ように見えました。 複合化の効果はすでになく、複合化のスキームは破綻していますから学校複合化は選ぶべきではありません。

 

公共施設の複合化で効率的な更新どころか、床面積も施設数も増大

そもそも、老朽化した公共施設の効率的な更新として選ばれたはずの複合化ですが、施設数も減らず、総床面積も増えず、大田区の公共施設は、10年前の542から569に増え、120万㎡の床面積は123万㎡に増えました。

月並みな言葉ですが、今の大田区は、箱モノ行政という言葉が本当にぴったり来ます。

 

大田区の問題に関わる、箱モノ建設

この間、私が指摘してきた問題の多くに、箱モノ建設が関ってきました。

古くは大森北一丁目開発ラズ、羽田の跡地、せせらぎ公園、池上図書館駅ビル移転、京急蒲田の共同化による財産交換、そしてこの学校複合化、

箱モノの問題は、学校を建て替えれば教育費、福祉施設を建設すれば福祉費と、一見福祉や教育財源にみえることですが、作りすぎれば、福祉や教育などの事業の財源を圧迫することになります。

 

増える民生費に占める建築費割合

そこで、福祉や教育に占める建設費の割合を調べたところ、民生費に占める建築費は、

平成28年に2.5%、29年3.7%30年5.4%と年々増えていますし、

教育費でも

平成28年度28.5%、29年度23%、30年度33.7%とこちらもほぼ増え続けていてすでに、福祉や教育サービスを低下させてきていることが明らかになりました。

大田区の介護保険の要支援の方たちのデイサービスやヘルパー派遣が1年で打ち切られているのも、低学年で学童保育に安心して通うことが出来ないのも、作りすぎて財政に与える影響が課題にも関わらず、まだ使える建物を廃止したり、目的の曖昧な施設を取得したり、入札もせずに工事を発注したり、あったら良いけれど、福祉サービスを縮減してまで必要か、議会にも区民にもきちんと知らせずに作ってきた箱モノが影響しているのではないでしょうか。

あまりに無計画で、コスト意識に欠ける財産管理です。こんなことを大田区は、いつまで続ける気でしょう。

 

財政圧迫要因でありながらさらに増やす箱モノ建設、賃貸物件

いまの財政状況では、維持管理できないほどに、数も規模も多い大田区の公共施設ですが、この間、数も床面積も増やしただけでなく、この間、賃借により借りる施設も増えています。

 

 

人口減少社会なのに、無計画に増える大田区の箱モノ

大田区は、どれくらいの財政負担により、どのくらいの規模の公共施設、あるいは施設を使って、今後どのように区民サービスを提供しようとしているのでしょう。公共施設を維持管理し、人口減少の次の世代に引き継いでいこうとしているのでしょう。大田区の公共用地が余っているのか足りないのかさえわからない矛盾した施設整備です。

箱モノが圧迫する大田区の福祉教育財源

こうした余裕のある容積率に建てられるだけ箱モノを作ろうと見える施設整備は、今後さらに急激に、大田区の福祉や教育財源を圧迫することになります。

国が、大田区はじめ23区の財源がたくさんあるからと狙い税制改正を続けているからです。

 

 

平成30年度決算は、昨年度に比べ、羽田空港跡地購入のための基金の取り崩し165億円、国庫支出金・都支出金、合わせて27億円、など歳入全体で約273億円も増えたため、この、国の不合理な税制改正の影響が見えにくくなっていますが、国の23区の財源をターゲットにした税源の地方への移転の影響が大田区でも出始めています。

 

東京23区など都市部の税収をターゲットにした国の税制改正

平成30年度決算は、昨年度に比べ、羽田空港跡地購入のための基金の取り崩し165億円、国庫支出金・都支出金、合わせて27億円、など歳入全体で約273億円も増えたため、この、国の不合理な税制改正の影響が見えにくくなっていますが、国の23区の財源をターゲットにした税源の地方への移転の影響が出始めています。

人口増で大田区の特別区民税は増収でも
ふるさと納税で19億円の減収

昨年度に比べると特別区民税は、14億円増えていますが、ふるさと納税による寄付控除で18.9億円、2.79%も減収になっています。人口が6000人も増えているため減額になっていなくて、影響が一見するとわかりません。

 

評価替えと主に大企業の好景気で好調な固定資産税・法人住民税でも
法人住民税国税化で44億円減収

特別区交付金は、法人住民税の国税化による減収は、試算で約44億円ですが、固定資産税の評価替えによる増収と、減収を上回る好調な法人住民税の影響で51億円の増収になっていてこれも見えなくなっています。

 

法人住民税減収は試算で最終的に70億円減収に

法人住民税の国税化は、今回の平成30年度決算の約44億円の減収にとどまらず、今後も税制改正が行われ、最終的には約70億円の減収になるといわれています。

消費税清算基準の変更の影響額は23区全体で380億円減収
消費税10%で23区全体で485億円減収

加えて、地方消費税交付分の清算基準の変更により、平成30年度は、23区全体で前年より380億円の減収で、大田区も昨年度より23億円も減っています。10月1日に消費税が10%になりましたが、消費税10%になると、23区全体での減収は、485億円になると区長会は試算しています。

国の税制改正で、平成30年度決算で大田区歳出決算約90億円の減

今年度だけでも、ふるさと納税約19億円、法人住民税の国税化により約44億円、消費税の清算基準の変更に伴う影響額(23億円)を合わせると、約90億円弱にもなり、今後、さらに、大田区はじめ23区の財源が、税収の足りない地方に振り分けられようとしています。

 

本当に大田区は富裕団体で、財源に余裕があるか

しかし、

本当に大田区は富裕団体で、財源に余裕があるでしょうか。

大田区は、今も特別養護老人ホームも学童保育も、障害児の療育も、足りなくて区民は困っています。

大田区の優先課題である、教育や福祉の需要を先送りし、施設建設に区民の税金を使っているということです。

優先順位の低い箱モノに税金を使い、公共施設の老朽化の更新費用のピークをさらに大きくしている場合でしょうか。

 大田区の優先順位の無い税金の使い方が、国に富裕団体とつけこまれる

大田区が、優先順位の低い箱モノの建設を続け財政負担を大きくすれば、福祉や教育に使える財源は、さらに逼迫することになり、国からは、富裕団体だからとつけ込まれることになります。

 

今の大田区の税金の使い方は、危機感には程遠い状況です。

 国の不合理な税制改正だけが問題か

特別区長会が指摘するように「不合理な税制改正」であることはその通りですが、国の不合理な税制改正だけに問題があるのではなく、大田区が目的の決まらない施設を取得したり、複合化で使用していない土地や建物をたくさん作り放置したり、莫大な土地を高額で購入しながら、民間事業者に建物を建設させ、そこにテナントとして賃貸料を支払って入居したり、を繰り返せば、国は大田区の財源に余裕があるとみられるのは当然です。

 

経済の中心ほど地縁血縁が薄く、社会保障が必要に 

 

平成24年2012年の厚生労働白書は産業資本主義の発展とともに、地縁や血縁が薄れたことで、それまで地域社会や家族が担ってきた子育てや介護などを担えなくなり、社会保障制度が生まれ、構築されてきた、と指摘しています。

経済の中心東京こそ、その豊かな経済をささえている区民の生活を支えるための社会保障や医療や教育が、必要なのです。

 豊かな経済を支えている私たちの消費、私たちの労働力

私たちが暮らす、東京の豊かな経済は、私たちが働き消費することで支えています。地縁血縁の薄い都市部こそ、社会保障需要が大きく、都市部の豊かな経済を安定的に支えるためには、しっかりと子育て、介護、障害、医療、教育といった、誰もが生き働くうえで欠かせないサービスで、住民生活を支えることが重要だという認識に欠けていると思います。

いま、大田区に足りないのは、区長会の指摘する、人口動向による財政需要や災害リスクリスクに備える財政需要や公共施設やインフラの更新による財政需要だけなく、

まず、生きていくための子育てや介護や障害や医療や教育の財源です。

 

そこがなければ、私たちは安心して生活を維持し、お金を稼いでいきていくことができないからです。

 大田区は、税金をバランスよく使っている場合か

この間、フェアな民主主義奈須りえは、区民の暮らしを支えるための社会保障や医療や教育のために優先的に財源を使うべきだと主張してきましたが、大田区は、バランスよく税金を使うと繰り返し答弁しています。

バランスよく、優先順位の低い事業に税金が使う大田区

バランスよく税金を使うことは、優先順位の低い事業に税金を使うということです。

優先順位の低い事業に財源を使うことは、優先課題である子育てや介護や障害や医療や教育の財源をひっ迫させるだけでなく、国に、23区の財源に余裕があると付け入られることになります。

国の無策と、大田区の優先順位亡き税金の使い方から区民生活を守るのが大田区議会の役目

いま、私たち大田区議会は、区民のために一丸となって、区民の福祉のための財源を守らなければなりません。

 

批判すべきは、交付金が足りなくなるようなグローバル化による産業の空洞化と統治機構を作ってきた国の無策であり、その無策のために大田区民の生活を犠牲にしてはなりません。

批判すべきは、住民福祉や教育財源を圧迫する無計画で高コストの大田区の公共施設の整備です。

無計画で莫大な財政負担をまねき、区民の財産を私物化している公共施設整備を改め、地縁や血縁が薄く、土地が高いなど都市部特有の高齢化ふくめた社会構造の変化に伴う福祉や教育や医療に十分な財源を確保し、憲法の補償する健康で文化的な区民の暮らしを守るため、足りない行政需要を満たすことを求め、反対討論といたします。