法人税減税や特区で行われている法人関係税100%減免と私たちのくらし

税金があがると負担ばかりに目がいく。

かせいだ財布からとられるのは歓迎されることではないが、そこばかりに注目すると見えないことがある。住民サービスからみれば、それが国税か地方税か、それも都道府県税か市区町村税かで影響は大きくちがってくる。

しかも、課税方法により私たちのくらしに影響を及ぼすこともある。

【法人税減税が大田区の保育園待機児問題を先送りさせる】

法人税がさらに7%減税?になるらしい。

http://www.asahi.com/articles/photo/AS20140604000300.html

法人税は国税だ。

法人税が減税になると言うことは国税が減るということ。

国税が減ったらその分どこかで穴埋めする必要がある。可能性として考えられるのは、借金(国債発行)か増税。

消費税がその穴埋めだといわれているがそればかりではない。

 

◆法人住民税一部国税化

たとえば、今年から法人住民税(市区町村+東京都)が一部国税化(国)された。

これにより地方から国に6000億円地方交付税として財源が移転したことになる。市区町村+東京都の収入が6000億円減ったということだ。

法人税という国税の穴埋めに地方から国に税収が移転したとはいえないか。

 

◆法人住民税国税化で最も影響をうけるのは23区(総額935億円)

どこも一律法人住民税は国税化されたが、交付団体(国から交付金をうけている自治体)は理屈でその分交付金で戻ってくることになるが、不交付団体はとられたままだ。

今や数少ない不交付団体の中でも、実際に最も影響を受けたのは、23区だ。総額で935億円にも及ぶ。

大田区で年額100億円の減収だ。

これも、法人税という国税が減った穴埋めにあたらないだろうか。

23区の財源が減ると、23区の住民の保育園や介護保険、障害福祉サービスに投入すべき財源がが減ることになる。

23 区の保育園の待機児対策は先送りで大田区の待機児はこの4月に600人を数える。来年度から介護保険の要支援という比較的軽度な方たちへのサービスが、介 護保険制度ではなく、自治体独自の取り組みに変わる。地域のボランティアでといった方向性も示されており、これもサービス低下とはいえないか。

障害福祉の相談支援事業といってケアプランを作成する人員も足りておらず、少し前に大田区では2割しか進んでいないと言っていた。

法人税減税は、最終的に住民サービスにしわよせがきてはいないか。

 

【特区で行われる法人事業税・固定資産税100%減免が外形標準課税の導入と派遣社員を増やす】

こんなこともおきている。

総合特区制度が導入され、大規模開発に対し、法人事業税や固定資産税の100%減税がおこなわれているのはご存じだろうか。

法人事業税は都道府県の税金。

特に東京都を中心に投資による大規模な開発が進んでいるが、じつは、2017年度までは減税措置があるため、都道府県税の税収は増えない。

しかも、「アジアヘッドクォーター特区拠点設立補助金」などにより開発がすすめばすすむほど東京都の財政の負担が増えることになる。

 

◆外形標準課税

こうした一方で、政府税制調査会は来年度から中小企業にたいする法人事業税の課税を外形標準課税にしようかと検討している。

http://biz-journal.jp/2014/07/post_5495.html

外形標準課税とは利益ではなく事業規模におうじ課税する方法で都道府県の財源になる。

2013年から始まった法人事業税、固定資産税、不動産取得税、都市計画税の100%減免の穴埋めが中小企業に対する法人事業税の外形標準課税とは言えないだろうか。

大田区は、「総合特区制度導入により税収が増えないが」という私の指摘に対し、減免の5年を過ぎれば税収が増えるといったが、外形標準課税は時限的な税金だとは聞かない。

仮に、外形標準課税が導入されれば、中小企業も商店ももうかっていなくても従業員数や面積などで課税されることになる。

 

◆派遣社員の拡大

京都の間口が狭いのは間口に対して課税されていたからだが、外形標準課税で従業員に課税されることになれば、自社で雇用していない「派遣社員」にせざるを得ないと経営者はいう。

臨時的な雇用のはずの非正規雇用だが、比較的規模の大きな企業や行政の基幹的事務にまで使われている。それが日本全体に広がり、働く者の権利はほんの一部の特別な人たちだけのものになってしまうかもしれない。

雇用の7割を占める中小企業への外形標準課税は、税収の問題だけでなく、私たちのくらしに大きな影響を及ぼすことになる。