「人事院(特別区人事委員会)勧告」が、公務員給与も民間給与も引き下げてきた
国は、物価高を上回る賃上げを政策として掲げていますが、今年の特別区人事委員会勧告をみると、多くの大田区(特別区)職員にとっては、賃下げの勧告で、配偶者手当の廃止も入っています。
大田区職員の給与は、特別区人事委員会の勧告に基づき行われますが、そのもとになっているのは、人事院の勧告です。
特別区人事委員会(人事院)勧告の【官民格差是正】、というのが、おかしいと思うようになりました。
利益を増やすために、引き下げることがあるのが、民間企業の従業員給与です。この民間給与の「平均」と比べて、公務員給与を決めるようになって、公務員給与も民間給与も、下がるようになってきているのです。
特別区人事委員会の勧告の問題点について、ご報告します。
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今回の勧告で、民間従業員が、公務員を上回ったことから、官民の格差を是正するため、職員給与を初任給、若年層に重点を置き、6.7%から0.9%の間で、すべての級及び号給について、給料月額を引き上げ、特別給の支給月数を0.2月引き上げる議案が出されましたが、反対しました。
この間の、人事委員会の勧告の在り方がおかしいと考えているからです。
この職員給与は、会計年度任用職員の給与にも連動しますから、会計年度任用職員にも影響します。
また、現在6千円の配偶者手当を、令和7年度から段階的に引き下げ、令和9年度から廃止。
現在9千円の子の扶養手当を令和7年度から段階的に引き上げ、令和9年度から1万5百円に増額します。
廃止に伴う減額と、増額は、現時点の試算で、ほぼ同額です。
一方、区長、区議会議員その他特別職等は、部長職の月額給与の引き上げ幅に倣い0.9%程度の引き上げとします。
職員と会計年度任用職員の改定に反対の理由は、算定の基準が、官民格差の是正でしかないからです。
地方公務員法は、給与の原則の1番目に、
★その職務と責任に応ずるものでなければならないと書かれていますが、
守られているか質疑したら、
区は、
民間と均衡させることで、満たせると答弁しました。
この均衡は、調査対象企業の、同種同等の役職、勤務地域、年齢、学歴など外形的均衡にすぎません。
公務労働は専門性、法的知識などの深い知見と、あらゆる住民の困難な状況に対応できる高い人間性が求められる仕事です。
だからこそ、公務員の賃金は、民間給与の指標となってきたのに、官民格差是正という単なる給与比較で決めてきたので、公務員の給与水準を下げ、さらに、公務員と同等の従業員を雇うときの民間給与を引き下げるという、給与の引き下げ合戦を招いたのです。
中高年齢層に低い賃上げ、知見や経験を相対的に低く評価
また、改定の引き上げは、総額ですが、初任給や若手に厚くしたことで、それ以外の層の経験や知見を相対的に、低く評価する不当な人事評価と給与体系になりました。
若手に厚く中高年齢層に薄い賃上げは
未来に希望の持てない賃金体系に
今年の春闘の賃上げが、5%を超えたと言われますが、
実感がわかなかったのは、
企業の組合員が対象で、ミドルシニア層の賃金はカバーされていない、若手の数字に過ぎないからと指摘されています。
官も民も足並みをそろえていて怖いです。
人事院が配偶者手当廃止を言って
民間企業の配偶者手当支給廃止を促進
しかも、配偶者手当の廃止の経緯をみると、
地方公務員法が定める、
★国や民間従業員との事情を考慮して定めるという基準を、
都合よく官民格差是正と名付け、単に、官民双方の給与を下げていくのが目的だというのがわかります。
なぜなら、人事院が、最初に配偶者手当廃止を言ったのは、平成28年の勧告で、
その時に、民間給与調査の結果配偶者手当を支給していた企業は74.8%でしたが、今年で54.4%に下がっているからです。
人事院勧告が与えた影響は大きいはずです。
平成28年の区職員の配偶者手当の支給割合、40.4%をみても、民間は74.8%でしたから、
当時、官民格差是正なら、廃止を言う必要はありませんでした。
官民格差是正は、低いほうに合わせる是正だったということです。
人事院は、公務員の処遇が、民間企業の従業員の処遇に影響することを知って、被用者の賃金水準を下げるため、官民格差是正を言ってきたのではないでしょうか。
結果、配偶者手当を廃止すると言ったことで、
配偶者手当廃止で、配偶者を就労へ誘導して労働力確保
民間企業の扶養されている配偶者を就労へ誘導し、労働力として確保したわけです。
大田区も答弁で、人手不足と労働力の確保を言っています。
今も、103万の壁を外し、減税のように見せ、扶養の範囲で働く人たちの労働時間を増やそうとしていますが、労働力を強化すれば、GDPが増え、投資利益を増やすことができるわけです。
所得税の減収ばかりが取り上げられますが、
106万以上になれば被用者の社会保険料負担が始まり、
財源確保というおまけまでつきます。
労使折半で半々に負担だと言っても、企業は、賃金等コスト削減もできるのです。
それでは、働いて、十分な所得を得られるかと言えば、この間上がっている物価には、到底追いつきません。
物価上昇1.8%に対し、中高層に賃下げ勧告した人事委員会
しかも、住宅費やこどもの教育費や親の介護の負担が大きいミドルやシニア世代は、上げ幅が小さく、官民格差だけで、例えば課長職で0.9%で、人事委員会のいう物価上昇は1.8%を下回りますから、相対的な賃下げです。
中小企業者への配慮、という指摘もありますが、政策的に賃金に関与できるのが、公務員の処遇と最低賃金ですから、個々人の高い低いではなく、国も区も政策的にとらえるべきです。
賃金を上げる、と言いながら、物価高へ誘導し、相対的に賃金を下げるのですから問題のある改定です。
人事委員会の勧告は、被用者や公務員ためではなく、結果、一部の投資家の利益を増やすことになるのです。
区長や区議会議員などの給与等への批判は真摯に受け止め、職責に十分見合った処遇だと認められるよう励むことをお誓い申し上げ、
引き上げの改定ではありますが、引き上げ方が物価高騰に到底追いつかないことや、配偶者手当を廃止することで、被用者の社会保険料負担をさらに大きくすることから、反対いたします。