地方自治法改正に伴う陳情のオンライン受付についての奈須りえの考え 思想信条もマイナンバーに紐づけ?られる日がくるかもしれない

地方自治法改正に伴い、請願書の提出や議会から国会に対する意見書の提出などの手続きについて、オンラインで行うことが可能になりました。

そこで、大田区議会としてどう対応するかの検討が行われました。
ただちにオンライン化することは、いくつかの課題があり、丁寧に検討していこうということになりました。(これ私の感想です)

私の意見の全文と、その主旨を簡単にご報告します。

書いていて、陳情をオンライン化したら、思想信条もマイナンバーに紐づけ?られてしまうなあと思い当たりました。

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一見便利で問題ないように感じる、請願受付のオンライン化ですが、いろいろな問題があることを知っていただきたいです。

そもそも請願は、国会においては、憲法で保障されている権利です。

第16条 請願権 / 日本国憲法 逐条解説 (law.main.jp)

日本国憲法第16条 – Wikipedia

 

大田区議会では、陳情と請願を同じように扱っていますが、そもそもの効力も違い、請願は非常に重みのある、国民の権利です。

これをメールで送れたら、便利でいいと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

ところが、
請願は、紹介議員が必要なので、議員が請願者となんらかの形でコンタクトをとって
請願の内容について詳細に確認し、紹介議員がいて、はじめて提出することが可能になります。

ですから、
請願議員は、その請願内容の賛否以前に、提出者を確認できるので
メールで起こるかもしれない、なりすましを防ぐことができます。

 

ところが、大田区議会の場合、陳情は紹介議員無く、提出出来て、
一部審査対象外はあるものの、ほぼ、受理され、審議にかけられることになります。

委員会の中でも、

メールでの受付を可能にすると

・なりすましをどうするか
・審議不能なくらい、たくさんの陳情が来た場合、どうするか
・民主主義は、対話や説明などがあって相互に理解が深まりますが
そもそも、メールで一方的に送られることでいいか
・政治参加が難しいなら、メールで対応ではなく、別の方法
休みを取りやすい社会をどうつくるか、
来ることができない障害者の場合どうするか、
など、丁寧な検討が必要だと思います。

ここを十分に審議せず、はじめてしまうと、
なんらかの制限を設ける、儲けざるを得ないなど、
今は、受け付けている陳情の受付の在り方が、すぐにでは無くても近い将来、変わってしまうかもしれません。

 

お手軽に陳情が出せても、
門前払いや、伝えたいことが議会に伝わらなければ
提出する意味が失われてしまいます。

私は、逆に利便性だけで、デジタル化、オンライン化を進める今の流れが

非情に怖いなあ、と思います。

 

スーパーシティは、

個人のあらゆる情報を、データベース化し、企業の営利活動に活用させようとしています。

 

たとえば、その枠の中に、陳情請願が入ると、
政治的な考えも、マイナンバーに紐づけられて、データーベースに
プロファイルされるかもしれないのです。

 

ちょっと、SFみたいで、怖い話ですが
今の国の方向性は、こういう考えを否定する条文はありません。

企業活動に支障のある考えの請願陳情=たとえば、電力会社にとっての原発や
鉄道会社にとって、デベロッパーにとって、好ましくない陳情や請願と
その人のマイナンバーに紐づけられた、行政の持つ個人情報とが
関連付けられることになる日が来るかもしれません。

オンラインでの投票に疑義を持つのも、そういう理由です。

 

以下に、
意見を掲載します。

 

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地方自治法改正に伴う、請願手続きのオンライン化についての意見

今回の請願手続きのオンライン化についての意見を申し述べる。

第33次地方制度調査会答申で

多様な住民が議会に関わる機会を広げる観点や、議会運営の合理化を図る観点から、住民の議会に対する請願書の提出や、議会から国会に対する意見書の提出など、 住民と議会、議会と国会等の間で行われる法令上の手続きについて、一括して、オンラインにより行うことを可能にすべき

ことが提言され、答申を踏まえ地方自治法改正が行われ、議会に関わる手続きについてオンラインで行うことが可能となった

意見を求められているのは、この部分であると認識し意見を申し述べる

住民の意見を広く聴取し、区議会として審議・検討し、区政に反映させることは、大田区議会の最も重要な責務のひとつであることは、地方自治法改正を待つまでもなく重要で、大田区議会としても務めてきたところであると認識している。

拡充すべき点があることは認識するものの、大田区議会では、

・議案や委員会資料のHP上での公開
・議会審議を動画で公開
・会議録を公開するだけでなくデジタルで公開
・委員会資料を委員会後ではあるが適時、資料情報コーナーで公開
などしており、他自治体に先駆けて行ってきたことも少なくない。

大田区議会は、歴史的経緯の中、請願も陳情も同様の扱いをしてきていることから、請願をデジタル化すれば、同時に陳情もデジタル化などその扱いを同じくすることになるため、デジタル化を導入するにしても、十分な精査が必要である

請願についてのオンライン化には、以下のような課題があり、仮に、オンライン化を導入するとなれば、なんらかの請願・陳情の制限を設けざるを得ない可能性もある。拙速なオンライン化の導入は、現在の大田区議会の住民意見聴取の実態を後退させる可能性があり、十分な検討のうえ、判断すべきと考える。

以下にその理由を述べる


・請願は、議員の紹介が必要であり、事前のそれがひとつの、物理的制約となっているため請願の提出が、可能な審議時間を著しく上回ることが無い

・一方で、同様の扱いを陳情でも行えば、議員の紹介が無用のため、審議可能時間を著しく超える数、および内容の陳情が、提出される可能性を否定できない。

・ここに何らかの制約や制限を加えることが、住民意見聴取の排除になってはならず、丁寧な検討が必要である

②大田区議会が取り組む課題は、自治体固有の問題、他自治体での問題、日本全国で起きている問題など、様々であるが、一律にデジタルでの受付を開始すれば、基礎自治体にありながら、他自治体のことばかりを審議すると言ったことも無いとは言えない。

だからと言って、他自治体や日本全国で起きている問題を安易に排除することもまた本意ではない。十分な検討が必要である。

③ デジタルによる請願受付は、利便性の確保という意味での進歩だが、一方で、議員や議会事務局などのとの丁寧な対話による、理解などの機会を失う可能性がある。

文言の選び方や、誤字脱字なども、請願内容を審議の際に内容の理解において欠かせない。提出前の、議会事務局や議員本人との対面での受付や相談の機会を失うこともまた、本意ではない。

④ 請願や陳情は、出せばよいのではなく、提出したことで、請願者・陳情者の真意が伝わり、議会で十分な審議が行われることこそが重要である。一方的なメール等で送付された請願や陳情ばかりが増えれば、そうした人と人との対話に基づく相互理解の機会も失われる可能性もある。

単にデジタル受付が増えれば地方自治の拡充とは言えず、デジタル化を地方自治にどう活かすかという視点を入れるための検討も必要である。

⑤デジタル受付は、忙しい住民の手間を省略できる点で優れているが、一方で、デジタルによる送付でなければ、国民の権利である政治への参画や請願権を行使することもできない、働き方、暮らし方などの実態があるとすれば、そここそが改善されるべきことである。

仮に、利便性や時間短縮のためという点のみで請願のデジタル受付を始めるなら、根本的な政治参画の問題は、改善されない。