市場経済(企業や家計)と自治体財政を同じにした弊害 無償化について考える
議会にいて、気になるのが、自治体財政を企業会計や家計と同じように考えていると思わる時があることです。
以前財務省のHPに掲載されていたコラムをご紹介します。
市場経済では、
企業であれば企業の売上げ、家計であれば賃金収入、 というように、収入がまず決まり、その収入にもとづいて支出を決める。
というのも、企業の売上げは生産物市場、賃金収入は労働市場というように、市場が収入を決めてしまうからである。
そのため市場経済は、「量入制出りょうにゅうせいしゅつ(入るを量って出ずるを制す)の原則」で運営されている。
ここから、私たちの税金とその使い方を考えるうえで大切なことが書かれています。
ところが、財政では収入が市場によって決められるわけではない。
財政は市場メカニズムによってではなく、政治過程で決定されるからである。
そのため必要な【1】支出を決めてから、それを賄う【2】収入を決めることになる。
政治過程で収入を決めるには、必要な支出が決まらない限り、収入の決めようがないからである。
したがって、財政は「量出制入の原則」で運営されることになる。
この原則で政治は動いていますから、事業が増えれば、増税が行われ、さらに税負担を重くすることになります。
無償化や財源補助は、私たちが税金を払う余裕のあった時代には、それでも、より公平な社会を作るための一つの方法だったと思います。
ところが、日本の構造が変わり、私たちは、一部の超富裕層を除き、全体的に収入が増えなくなってきています。
そのうえ、物価が上がっています。エネルギーから食料まで輸入に依存する経済状況の中にいますから、円安をまともに受け、物価の上昇を加速させています。
今は中間層から多く税を集める構造ですから、物価が上がれば、負担が重くなるのも、低所得者層もそうですが、さらに中間所得層が上の世帯の税負担が重くなります。
本来なら、1267億円ある基金で、物価高騰対策をすべきですが、国も東京都も大田区のこの基金は、公共施設建設と鉄道まちづくり構想に使うと決めているのか、一向に、物価高騰に使う声はあがりません。
全体として、ゆがんだ税金を集める構造と、使い方の優先順位が違っている中、
いいことだからと無償化が加速すれば、税負担が重くなり、さらに中所得層を縮小させるだけでなく、税で収入を補填されていることを知った企業などが、物価上昇ほどに賃金をあげず利益を確保するかもしれません。
資本主義経済における利益確保とはそういうことだと思います。
まず行うべきは、広く、この現状の理解を区民に広げ、上がらない賃金をあげるための構造改革、つまりは、これまで行ってきた規制緩和の逆を行うべきだと思います。
無償化や給付負担の軽減は、一時的には、良いように見えますが、長期的に中間層を疲弊させます。
いま、私たちが目指すべきは、区民一人一人の力をつけることです。特に、暮らしの大半を貨幣経済に依存するいま、区民のもつお金を増やす、経済力をつけなければなりません。
そのために、まず、行うべきは、基金にためた1267億円を住民税減税でお返しし、手取りを増やすことです。
消費税減税では区民の手取りを増やせません。加えて、蒲蒲線や鉄道まちづくり構想に使うのではなく、大田区の各種住民サービスの給付の水準や負担などを物価上昇に連動させ、可処分所得を減らさないようすることだと思います。