争点にならない都知事選の争点 「誰が23区民を捨てるのか」 

4月から23区民の税収が減る。
法人住民税の一部を国税化するからだ。

東京都は、他の自治体に比べると、税金が偏ってたくさん集まってくる。
だから、この偏在する税金を再配分して財政の厳しい地方に分けてあげようという理屈だ。

どこかで聞いたことが?そう、同じ理屈で、平成20年に法人事業税が国税化されている。石原都知事の時だ。
地方法人特別税という。

今回は、法人住民税。
同じ法人だし、報道は不親切で、東京都の税収が1,000億円減るとだけ取り上げているから見過ごしてしまいそうだが、実は、法人住民税が国税化されると、一番影響を受けるのは23区民だ。 ちょっと図にしてみた。

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左が、法人事業税国税化の時。
国税化されてしまう分を黄色⇒にした。ピンクの23区に影響は無い。

ところが、今回は、右、ピンクの部分が減る。
実は、法人住民税は23区と東京都とで分けているので、ピンクの部分肌色の部分合わせて減る。

ところが、石原都知事の時に国税化した一部1/3が、復活する。

東京都は、肌色部分=法人住民税は減るが、水色=法人事業税は増える。正確な数字は分からないが、平成20年の導入時の全国の試算が東京都で3,268億円その1/3が戻れば、1,000億円を超える増収になる。
法人税が好調という報道もあるから、東京都の増収はかなりになるのではないか。

1,000億円は23区以外の市部も含んだ数字だが、それにしても、東京都は増収要因があることを考えれば、23区への影響額は大きいだろう。(*ちなみ に、国税化された財源は、交付金として自治体に配分されると言っているから、不交付団体は払っても理屈上は必要な分戻るはず)

23区長会23区議会議長会 も、自民党の税制調査会が出した、法人住民税の国税化に対し、地方分権に反するから、地域の責任を果たすためにもと反対の意を唱える意見書を出している。

しかし、23区の区長の多く、そして、23区議会議長会はほぼ全員、自民党議員、元自民党議員で占められている。しかも、この税制大綱は、自民党・公明党で出したものだ。

日本の1割を超える国民が集中し、税金の稼ぎ頭の東京、それも23区の税収が、偏って多いから、地方へ交付しましょうと、自民党・公明党の議員が言っている。

ところが、23区では、保育園も特別養護老人ホームも足りなければ、公共施設が老朽化し、更新だって満足に出来ない状況だ。

特養に入るために、田舎に引っ越したという話だって聞く。
大田区で、1年間に補修する道路面積は、全区道面積の1/500にも満たない。どうするのかと区議会で聞いたら、誰も答えられず沈黙がしばらく続いた。みんな分かっているけど、自分の責任じゃないということだろう。
老朽化した公共施設も、大田区でできなければ民間にやらせて、それでもダメなら売るとまで言っている。でも、民間に任せたら、お仕事になって既得権になるから、手放さないんだろう。

こうした視点から見れば、23区は、どう考えたって余裕等無い。

一方で、大田区の公園は、ほぼトイレ付。しかも、ありがたいことに、区が業者を雇って、掃除、トイレットペーパー交換だってしてくれている。
公園にはトイレがあまり無い自治体も多いと聞くが、みなさんの自治体はどうだろうか。

サービス量はいつも足りなくて、安い行政サービスでなく、高い民間サービスを買ったり、我慢したりしている区民も少なくない。サービスが受けられることを知らない区民だっている。

5年前には、東京都が金持ちだと言っていた国だか当時の政府だかが、今度は、23区が金持ちだと言っている。
何が変わったのだろう。

23区に税が偏在している=富裕だという税制大綱を作ったのは、自民党や公明党の議員だ。その議員たちが過半数を占める都議会や区議会で、税金の使い道が決まり、住民サービス量が決まる。

そう言うことだ。