国保年金窓口業務の委託に思う民営化や民間委託

当初は、議論がおきていた民営化や民間委託ですが、経費削減とサービス向上をうたい文句に、いったん始まってしまうと、その後はさしたる議論もなく、進んでいるのが現状ではないでしょうか。

自治体での議論も、現場で働く職員組合と民営化によりビジネスチャンスの広がる事業者、それぞれを代弁する議員などの対立構造ばかりで取り上げられてきたのは、非常に残念です。

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大田区国保年金課窓口業務を委託されました。

http://www.city.ota.tokyo.jp/jigyousha/boshuu_shitei/kokuhomadoguchiitakugyousha.html

委託業務内容は、窓口業務の申請届出その他の手続き及び通常の電話対応端末入力業務。

【問題1】困難な業務をより賃金の低い人が担うことになります。

国保年金課窓口業務は、大田区の業務の中でも、直接区民に接する機会の多い現場です。

特に、国民健康保険は、様々な問題を抱えている区民との対応を求められるケースが少なくありません。

保険者ごとに比較しても、下記データのように、一人当たり平均所得も低く、単に申請用紙を受け、電話を受ければよいというわけにはいきません。こうした現場での対応には、行政サービス全般にわたる深い理解が必要です。

戸籍・住民票窓口の外部化とは異なります。

【加入者一人当たり平均所得・保険料負担率】平成23年度
      *国際医療福祉大学大学院中村秀一先生講義資料より
・市町村国保 84万円 9.7%
・協会けんぽ 137万円 7.2%
・組合健保 198万円 5.0%
・共済組合 229万円 4.9%
・後期高齢者医療制度 80万円 7.9%

* 市町村国保及び後期高齢者医療保険制度においては、「総所得金額(収入総額から必要経費、給与所得控除、公的年金等控除を差し引いたもの)及び山林所得金 額」に「雑損質の繰り越し控除」と分離譲渡所得金額」を加えたもの、市町村国保は「国民健康保険実態調査」後期高齢者医療制度は「後期高齢者医療制度被保 険者実態調査」によるもので、それぞれ、前年の所得である。協会けんぽ、組合健保、共済組合については「加入者一人当たり保険料の賦課対象となる額」(表 十報酬総額を加入者数で割ったもの)から給与所得控除に相当する額を除いた参考値
*保険料負担率は、加入者一人当たり平均保険料を加入者一人当たり平均所得で除した額。

【問題2】制度上課題のある事業を民間が担うことになります。

1961年に誕生した国民皆保険制度ですが、現在は、上記のように、後期高齢者医療保険制度含め5つの保険者により日本の皆保険制度は成り立っています。

ここで、一貫して問題になっているのが、制度間、保険者間の公平の確保の問題です。
上記のデータからも、平均所得の一番低い市町村国保加入者の保険料負担率が一番高くなっているのがわかります。

特に、日本の社会保障制度全般の改革が求められているこの時期に、職員が区民に直接対応すること無く、区民のおかれている状況を知ることができるでしょうか。区民にとっての社会保障制度をどうすべきか、政策立案に関ることは可能でしょうか。

様々な業務を次々民間事業者が担うようになっています。
今は、どうやって外部化するの=民営化、民間委託、規制緩和が、行政、あるいは政治の仕事になってしまっています。

公務員が行っていた業務を民間(株式会社)が行うことの本質は、私たちの税や利用料の一部を株主配当にまわすということです。公的分野に市場は無く、競争はありませんから売上は確保されます。

公共とは何か。私たちはなぜ、公務員に公的分野を担わせてきたのか。今の公務員に公共分野を担わせるには問題が有るなら、その問題をどう解決するのか。解決するために民間に担わせただけで解決できるのか。
そうした議論がすっぽりとぬけ、外部化はますます進みます。

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更新日:2013年11月5日

平成25年度大田区国保年金課窓口業務等委託事業者の選定結果についてお知らせいたします。

1 目的

国民健康保険事務に係る窓口業務の申請・届出その他の手続き及び通常の電話対応、端末入力業務に関して、スピーディに対応できる体制を目指し、適切 な管理の下、自治体の窓口業務等の経験のある民間事業者へ業務委託することにより行政運営の効率化及び区民サービスの向上を図る。

2 委託内容

(1)国民健康保険窓口での申請・各種届出書等の受付、窓口での情報入出力業務
(2)国民健康保険窓口及び電話での国民健康保険制度に関する問合せ対応
(審査判断業務は除く。)
(3)国民健康保険窓口来庁者への案内業務(窓口案内、申請・届書等記入案内等)

3 選定方法及び評価項目

公募型プロポーザル方式
日時 選定方法 評価項目
公募期間 平成25年7月24日から7月30日
第一次審査 平成25年8月28日 書類審査 業務実績、業務改善提案、配置予定の業務従事者の経歴・経験・身分・人員配置計画、指導研修体制、危機管理体制、個人情報保護、予算見積
第二次審査 平成25年9月11日 プレゼンテーション及びヒアリング 業務運営に対する取り組み姿勢、熱意・意欲、論理性

4 平成25年度委託事業者

テンプスタッフ株式会社

新宿区西新宿三丁目2番7号   KDX新宿ビル8階