大阪市の水道民営化に思う、橋下市長の理屈の盲点:債務と利息2300億円で売れば本当に黒字か

ご指摘ただき、大阪市では、既に、下水道事業については民間委託済。今回は上水の運営権の売却についての話だそうです。上下含めた水道事業として書きましたので、一般論としてお読みください。(2014年4月12日)

_________________________________________

大阪市が水道事業を民営化すると言う。

売却価格は、債務と2000億円と、利息300億の合わせて2300億円。これで、今後、30年は、黒字を確保できるという報道だ。

ところが、ここには、一つ盲点がある。。
________________________________

【水道料金で支えられている企業会計の水道事業の約半分は、一般会計で支えられている】

そもそも、水道事業は、企業会計。

経営は、上下水道料金でまかなうのが原則だ。

しかし、水道会計の中に、上下水道料金でまかなわなくて良い事業があるのだ。

それが、下水道事業の中の雨水対策。ここが、盲点だ。

汚水は、出した人の責任(負担)で処理するから、下水道料金だが、雨水は、社会全体が恩恵を受けるので一般会計=税金でまかなうことになっている。

一般会計から、毎年繰り入れられているが、下水道事業だ。

民営化されたら、民間事業者が、雨水対策を行うのではないだろうか。

(下水道財政の仕組みP2参照)
http://www.gesui.metro.tokyo.jp/jigyou/keieikeikaku/kubu/kubus2_1.pdf#search=’%E9%9B%A8%E6%B0%B4%E5%85%AC%E8%B2%BB+%E6%B1%9A%E6%B0%B4%E7%A7%81%E8%B2%BB’

確かに下水対策だけを取り出せば。黒字かもしれないが、雨水対応は、全額税金。
額にしたら、下水処理費用とほぼ同額の事業費が毎年、一般会計から繰り出されていて、施設建設や、債権の償還に充てられている。

この部分について、全く触れられていないのは、なぜだろう。

______________________________________

【大阪の2000億に含まれていない約1/2を占める雨水対策事業】

分かりやすいデータは無いものかと大阪市のHPを探したが、なかなか無くて、だいぶ古いけど、ようやく平成21年度の数字を見つけた。

大阪市 財政状況等一覧表(平成21年度) 大阪市HPより
http://www.city.osaka.lg.jp/zaisei/page/0000117184.html

黄色い部分が下水道事業会計。歳入は、73,583(百万円)=735億円だ。

ところが、それをずーっと右に目を移すと、。他会計から32,823(百万円)=328億円とある。一般会計=税金で、328億円補てんしているという意味だ。

債務は556,815(百万年)=5,568億円。うち、一般会計から返さなければならない借金は3,179億円になる。

確かに、水道料金に直接関係ないかもしれないが、下水施設整備のために、毎年一般会計で使える金額が、328億円程度少なくなるということだし、3,179億円という借金の利子含めた返済をしなければならないと言うことだ。

この金額も含め、水道事業を担う民間事業者に流れることになる。

しかも、新聞の記事をみると、インフラ資産は市有のままとして、運営権だけ民間に売却という。

これは、民間事業者にとって有利な条件だ。

公有財産には固定資産税がかからないし、上下水道管が道路など公共施設にある分についての占有料を支払わなくてよいからだ。

【命に関る水を誰がコントロールするか】

一方で気になるのが、今後の雨水対策を、どのように行っていくのか。

水は、ライフラインだ。
安全性も気になるし、水道料金だって重大だ。

水道事業は、ちょうど、東京電力が、原発を建設したり、一瞬しか稼働したことが無いもんじゅの建設費、維持管理費を電気料金に転嫁できるのと似ている。

どのくらい=どの程度まで対応することが「適当か」あいまいだ。

今後の、雨水対策計画の決定過程や決定権はどうなるのだろうか。

【都市化に伴い膨らむ莫大な雨水対策費用】

都市化により、降った雨は、大地にしみとおることなく、側溝を通じて雨水管にに流れるが、都市部は合流式なので、下水と一緒に河川に流れ込む。

トイレの汚物も、雨が降れば、神田川や、呑み川に流れている。

たとえば、現在、東京都では、50ミリの雨水に対応できるよう貯留施設を建設したり、雨水桝を作ったり、下水道を整備している。

しかし、大地は、年々コンクリートで覆われ、一気に、河川に流れ込む。

たとえば、東京都では、50ミリ対応出来るようにしてきたが、昨年末には大規模地下街などでは75ミリに対応するなど緊急プランを策定した。

大阪市の水道事業の民営化についての、多くの疑問に答える情報は、どこにも見当たらない。不安要因を抱えたまま、見切り発信してしまうのだろうか。

_____________________________________