民間給与と公務員給与の負のスパイラルになっている【官民格差の是正】に偏重した給与改定の考え方

職員と会計年度任用職員については、特別区人事委員会の勧告に基づき、また、特別職については大田区報酬審議会の答申に基づき改定されるものです。

職員については、特別給の支給月数を0.1月引上げ現行の4.45月を4.55        月にするため、金額としては物価上昇においついていないものの、現行制度でやむを得ない部分もあり賛成いたします。

若年層引き上げの意味と課題

職員の20代を中心とした若年層への引き上げについては、採用の民間との競合もあり、悪くはありませんが、結婚、出産、子育て、住宅所得、教育ほか人生のさまざまな局面からみれば、若年層だけに注目することなく、給与については考えるべきだと思います。

給与期末手当における特別職の政治的責任

特別職については、期末手当の支給月数をひきあげるものですが、本会議一般質問で取り上げましたが、国の構造改革に追従し格差をまねいたことや、コロナの対応などを考えても、特別職の果たすべき役割は大きいと思います。

必ずしもすべてが大田区の責任ではありませんが、、インフレ下において困窮する区民に先んじ、引き上げを受け入れることは到底できず、反対いたします。

人事委員会勧告の官民格差是正偏重の問題

また、この人事院会の勧告が、官民格差の是正に重きが置かれすぎていて、是正すべき課題がみえてきていますので、ひとこと申し述べます。

公務員給与の考え方の基本について

そもそも、職員給与は、

  • その職務と責任に応ずるものでなければならない、
  • 生計費並びに
  • 国および他の地方公共団体の職員並びに
  • 民間事業の受持者の給与
  • その他の事情を考慮して定めなければならない、

と地方公務員法で決められています。

官民格差是正で失われる公務労働を担う人材確保の視点

ところが、人事委員会の勧告を読むと、公民格差の是正に重きが置かれ、

職務と責任に応じた給与、
仕事に見合った給与、
生きていくうえで必要な給与、

という視点での評価が見えません。公務労働を担う人材の確保という視点が失われていて、心配です。

逐条地方公務員法に、

企業は、目的が利益なので、利益を基準として給与が決定されるが、公務員の目的は公共の福祉の増進なので、利益でははかれないから、民間企業や他の公務員との比較によって給与を定めることになる。

と公民格差是正の理由が書かれていますが、

 

民間給与が企業利益に連動しない時代の官民格差是正の問題

 

今や、民間給与は必ずしも、企業利益に連動しない時代です。

その民間給与に連動すれば、給与の引き下げ合戦になってしまいますから改善すべきです。

物価上昇を給与に反映させない人事委員会勧告

しかも、今、物価の上昇が区民生活におおきな影響を及ぼしていて、今回、大田区は、低所得者への給付を大田区の自主財源で行うことを決めています。

ところが、人事委員会の勧告は、「特別区における費目別、世帯人員別標準生計費」が前年より減ったことをもって、今の給与で補完できるとして、物価上昇を反映させていません。

区民の低所得者層は物価の影響があるから、現金給付していますが、大田区の職員は、物価上昇の影響を受けていないと言えるでしょうか。

「標準生計費」にみる、
物価上昇に対し生活の質を落とすことで防衛している国民生活

~特に上がった住居費~

「標準生計費」を費目でみると、住居費が大きく増えているため、食費や被服、保健医療、交通・通信、教育、教養娯楽やこづかいなどを節約し、物価の上昇に対し、生活の質を落とすことで防衛している姿がみえてきます。

前年より支出が減っているから問題ないのではなく、支出をそれだけ切り詰めなければならないほどに、生活が厳しくなっています。

消費者物価指数は昨年9月より上がり続け、企業物価指数に至っては今年に入り9%代を超えています。

こうした実態を給与に反映できない制度は改善すべきです。

 

敗戦直後のインフレ時の閣議決定にみる、3月期末手当で生活難緩和

また、昭和43年発行の地方公務員給与制度解説に、敗戦下におけるインフレから職員の生活難を緩和するために昭和21年12月3日の閣議で決定し、2か月分の年末一時金が12月に支給されたと書かれていました。

今後のインフレ動向も不透明な中、敗戦下のインフレから速やかな閣議決定により職員の生活を守ったように、3月期の手当ても残しておけば、利用できるのではないかと思い、3月の期末手当廃止は行うべきではないことも申し述べます。

会計年度任用職員改定の反対の理由は、この期末手当3月の廃止と勤勉手当が無いため、特別給を引き上げることができないからです。

以上をもって討論といたします。