一人一票の普通選挙が納税額で選挙権を得る制限選挙状態に逆戻り?住民税納税者が税の使途を決める「ふるさと納税」の心配

都会に住む私たちの地方への想いを形にでき、しかも、返礼品を得ることができる「ふるさと納税」が人気です。

一方、地元産品でない返礼品やギフト券など、問題のあるふるさと納税の在り方から法改正が行われました。

この地方税法改正に伴う大田区特別区税条例改正で、感じた「ふるさと納税の問題」についてご報告します。

住民が住民税の一部を収めたい自治体に寄付すると、税額控除されるため、納税者は、納税額を変えずに、負担なく返礼品などを受け取れるうえ、住民税の納付先を住んでいる自治体から、希望する自治体に変えたり、自分の自治体の事業に直接税金を納めることが出来るのがふるさと納税です。

返礼品にスポットがあてられているふるさと納税ですが、たとえば、大田区には、「勝海舟記念館」という事業にふるさと納税するしくみがあります。
そうすると、大田区民が、大田区に寄付すると、その納税額は、勝海舟記念館事業に使われることになります。
高額納税者が、寄付すれば、影響額は大きくなります。

納税者が、自分で住民税の使途を決めることができる一方、非課税の方は、税の使い道に意思を表すことができません。
納付する税額に応じて、意思決定に関われるというしくみで、かつての「制限選挙」を思い出しました。

戦前は、納税額に応じ、男性だけだった選挙権ですが、戦後ようやく、20歳以上の男女普通選挙が実現しています。
(今は18歳以上)

総務省の「選挙のあゆみとこれから」

file:///C:/Users/fairmin/Desktop/000383678.pdf

予算は、議会制民主主義に基づき、選挙で選ばれた議員で構成する議会が、否決含め決定することになっていますが、
ふるさと納税は、議決によらず、納税額に応じて、予算に影響を及ぼすことができるしくみ、なのです。

以下、地方税法改正に伴う特別区民税改正に反対した際の討論です。

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第36号議案「大田区特別区税条例の一部を改正する条例」に反対の立場から討論いたします。

この議案は、住宅ローン控除の見直しとふるさと納税の見直しのための条例改正で、行き過ぎた不適切な返礼品などを抑止するための条例改正です。

住民が住民税の一部を収めたい自治体に寄付すると、税額控除されるため、納税者は、納税額を変えずに、負担なく返礼品などを受け取れるうえ、住民税の納付先を住んでいる自治体から、希望する自治体に変えたり、自分の自治体の事業に直接税金を納めることが出来るのがふるさと納税です。

 

私は、ふるさと納税という仕組みが、、

①   税制法定主義に反し住民税の納税者だけが、議決によらず、税の使い道を決められてしまうこと。しかも納税額の大きい人ほど影響額が大きいこと

②   納税者だけが、返礼品を無料でもらえてしまうこと

③   そもそも、大田区など都市部に財源が偏在していることを前提に、地方に財源を交付するためにできた制度であること

などから反対です。

 議決によらず、納税者だけが、税の使途を決められる「ふるさと納税」

大田区民が、例えば勝海舟記念館の整備事業に寄付すると、その分が勝海舟記念館に限定されることになり、その他の福祉や教育には使えなくなります。

いったん仕組みを作ると、議会は関与できません。

税制法定主義に反し住民税の納税者だけが、議決によらず、税の使い道を決めることができるのは問題です。

 根底にある大都市富裕論を認め、不毛な自治体間競争に加わってよいのか

また、ふるさと納税のしくみの前提には、大都市富裕論がありますが、大都市には、大都市だからこその需要があります。

ふるさと納税の仕組みを認めることは、大田区はじめ都市部が富裕で、財源が偏在し、余っていることをみとめ、不毛な自治体間競争に加わることになり、反対です。