大田区の2020年度予算に対する奈須りえの意見

3月25日に令和2年度大田区各会計予算が成立しました。

誰から税金を集めるのか、集めた税金をどう使うのか、は、私たちの暮らしに最も大きな影響を及ぼします。

大田区が、集めた税金の使途を示した予算について、奈須りえは次のように分析しました。

本会議場で行った、予算討論と各会派の態度です。


フェアな民主主義奈須りえです。

第一号議案令和2年度大田区一般会計予算
第二号議案令和2年度大田区国民健康保険事業特別会計予算
第三号議案令和2年度大田区後期高齢者医療特別会計予算
第四号議案令和2年度大田区介護保険特別会計予算

に反対の立場から討論いたします。
 

営利企業(投資家に)の利益のための国政に追従する大田区

2000年前後から大きく変えられてきた日本の制度

私は、2000年前後から行われてきた各種の制度改正により、日本は大きく変えられてしまったと思っています。

地方分権一括法、
省庁再編、
福祉分野への株式会社の参入を許し、
特区制度を使った規制緩和、
公の施設の管理運営の民営化である指定管理者制度の導入、
同じく投資を許すPFI、
最近では、包括連携協定、

数え上げればきりがありません。

多くの法改正と新たな制度により、この国は、投資家の利益のために国民が働き、税を納め、税が使われるようになってしまってきています。

規制緩で、自己責任社会に

一方、規制改革、規制緩和で、多くの法令が改正廃止され、規制(法令)により、守られてきた私たちの安全、健康、環境、人権、命などを、自己責任で、自らが守らなければならなくなっています。

2007年に松原区長になってから、大田区は、積極的に、この流れに追従してきました。

大きくなる区長の裁量権

区長の裁量権が大きくなり、議会が関与しなくても決められる議決が不要な案件が増え、国家戦略特区や包括連携協定、など行政と営利企業とで決められる仕組みができています。

区民の税金が、営利企業に

今の大田区は、区民の負託を受け住民福祉のために執行されているというより、市場経済化して、営利企業(投資家)と手を携え、投資利益のために動くようになってきています。

税を集め事業を執行するほど拡大する格差

民営化とこうした仕組みで、税金を集めて事業を執行すればするほど、税が、投資家の利益に流れるため、格差を是正するはずの社会保障の責任主体大田区が、さらに格差を拡大させています。

この間、私が、反対し声をあげてきた、多くの問題は、それまでは不可能だったことが、この規制緩和により、可能になり、結果、区民生活の安全、健康、環境、人権、命などを壊そうとしている、区民の税金や財産が、一部の投資家利益のために使われる問題ばかりです。

安全、健康、環境、人権、命などを壊し、区民の税や財産が、投資家利益に

税金の使い方の優先順位などの問題もそうですし、
国家戦略特区に手をあげ、
羽田空港を特区に指定し、
特区民泊に全国で最初にはじめ、
大田区地域力を生かしたまちづくり条例の改正と運用、
羽田空港飛行ルート変更、
田園調布せせらぎ公園の大量樹木伐採、
山王小学校に隣接するホテル営業、
リニア中央新幹線、
羽田空港跡地開発、
蒲田4丁目共同化、、、、一つ一つの事業を数え上げればきりがありません。

そのどれもが、必ずしも行わなければならないことではなく、区長や区議会が、やらない判断をできる場面があったのに、それらを選び、少しずつ、今の所得の格差と低賃金化、自己責任と地縁血縁を薄くする社会にしてきたのだと思います。

権限が、区長に集中するしくみ

そのうえ、コロナウイルスの拡大で心配なのが、大田区の災害復興本部条例です。

この条例では、緊急時に区長が災害復興本部長になり、計画、財政、人事、事業を決められるようになっています。

また、大田区は、多くの企業や団体と協定を結んで災害時の対応をすることにしています。

2月7日に議員のサイドブックスに配信された議会災害対策本部の資料には、緊急時に情報を一元管理し、個々の議員が行政と直接連絡することを禁じる図が掲載されていました。

緊急時、災害時において、権限が大きくなった拡大した区長がいて、企業と大田区が連携するしくみがあり、議員の関与が極めて限定的になる状況という風に読み取れます。

権力集中では区民の声は届かない

いま、コロナで、区民は非常に大きな不安の中にいます。その不安を解消するには、大勢の知恵が必要です。営利企業が意思決定の部分に深く入り込みつつあり、議会の関与が減ってきている状況と、合わせて考えれば、政策立案や意思決定過程を、少数の人や営利企業だけにゆだねることは、非常に心配です。

予算反対の理由の一つが、この営利企業(投資家に)の利益のための仕組みを作る国の流れと、それに追従するこの間の大田区の姿勢です。

 

福祉や教育や医療に財源を優先的に使わない大田区

財政豊かな大田区で足りない福祉サービスなど

そもそも、私は、日本の経済の中心東京で、集まる税収も国から富裕団体と言われるほど豊かなのに、福祉や医療や教育に必要なサービス量が足りないことをかねてから問題視しています。

優先順位が違うということです。

それに対し、大田区は、バランスよく財源を使うという答弁を繰り返してきました。

住宅、保育園、特養、学童、障がいなどより優先される土木建設

12月の総務財政委員会で、2020年度予算の編成過程において、「当初の予算要求額が、仮にすべて認められたとしても、大田区の子育てや介護や障害福祉や教育の、サービス供給量の不足は充足できない」ことが私の質問で明らかになりました。

大田区は、今年度2020年度予算で、福祉や教育の必要を積み残した予算を編成しているのです。

2020年度予算で、福祉や教育の区民の必要を放置する予算を編成していますが、2019年度最終補正予算で余った財源を、翌年の福祉や教育に必要な財源として使うことを選ばず、

●公共施設整備基金に10億円、
●防災対策基金積立金に10億円、
●新空港線整備資金積立基金積立金に10億円、
●羽田空港対策積立基金積立金に2487万5千円
積み立てています。

 ここに、大田区の税金の使い方の優先順位は明らかです。
 
 予算反対の理由の2つ目が、この、社会保障の責任主体が、福祉や教育サービスが足りない、保険料負担が重くなっていることがわかっていながら、福祉や教育や医療に財源を優先的に使っていないことです。
 

国税化で、社会保障財源が、使途を限定した土木建設費に

こうした、投資家の声と利益を優先し、区民の声が届きにくい仕組みの中で、住民福祉の優先順位が低い予算編成は、今年の歳入にも表れています。

過去最高規模の予算は、過去最高規模の区民負担

2020年度予算は、約2874億円で、昨年度の2819億円に引き続き過去最高規模です。
特別会計をみても、国民健康保険事業は被保険者数の減に伴い2.3%減っているものの、特別会計全体で、総額11億円増えています。
過去最高規模の予算を組んだということは、何らかの形で、私たち区民の負担もまた過去最高になっているということです。

国の不合理な税制改正で地方流出する財源

一方、国の不合理な税制改正(都市部は財源が豊かなので足りない地方に配分させるしくみ:ふるさと納税、消費税清算基準変更、法人住民税国税化)により、大田区から国や地方に流出する財源は、大田区の試算で、総額で、ふるさと納税32億円+消費税42億円+特別区交付金78=152億円にもおよびます。

納税者人口が増え、消費税負担も大きくなり、固定資産税負担も大きい大田区民ですから、当然これらの財源で、必要な、住宅、福祉、医療、教育などに使うべきですが、国の税制改正で失われてしまいました。

不合理な税制改正の影響額を対前年比でみると、

・特別区税マイナス6億円
・消費税マイナス14億円
・特別区交付金のうち法人住民税の国税化の影響額は、マイナス24億円

で合わせて44億円が国や地方に交付される見込みだとわかります。

国税化された財源が、国庫支出金で大田区に

国庫支出金の増が42億円ですが、そのうち、幼児教育の無償化に伴う影響額が約18億円ですから、実際に増えた国庫支出金は約24億円です。

使途の自由な社会保障に使える財源が、土木建設にしか使えない財源に

ちょうど法人住民税国税化による減収が24億円で、まるで、使途の自由な、区民の住宅、子育て、介護、医療、教育に使える財源が、国税化して国を経由し、ひも付き財源として戻ってきたような結果になっています。

国は、税の偏在だから地方へ、と言っていますが、大田区の国庫支出金を増やすなら、国税化せず、自由に使える財源として残し、国税化すべきではありません。

 

一方で、特別区交付金は
児童相談所などの経費分、財調割合を見直し、55%から55.1%と0.1%約1.3億円程度増える見込みだそうです。
児童相談所開設費用や運営費用を考えれば、1.3億円は焼け石に水の状況だと思います。

都支出金も昨年比で約19.6億円もふえていますが、これも、児童相談所など財調算定されれば、使途の自由な住民福祉に使える財源になるのに、財調算定額は低く見積もり、使途を限定した都支出金で交付しているように見えてしまいます。今後の都区協議の行方を見守りたいと思います。

国税化で復活する悪評高きひも付き財源

ひも付き財源が問題視され、地方分権で、住民税が引き上げられましたが、結局、国も東京都も、本来基礎自治体である区固有の財源を吸い上げ、色を付け、さらに土木や建設など、住民福祉以外の事業に使途を限定しているのが、歳入予算からみえ問題です。

しかも、結果として、歳入で55.9億円ふえても、国庫支出金41.6億円と都支出金の19.6億円合わせて61.2億円は使途が限定されているので、自由に使える財源は、6.2億円減っていることになります。

 

1万人の人口増、高齢化でも、自由に使える予算は減

特別区税増の要因は、納税義務者の1万人の増加です。
現在の区民の増加の主な要因は、マンションなどを購入した転入者と、外国人労働者の転入が主な要因だと思います。

いずれにしても、世代的には、子育てをしている方たちも少なくないですから、健診、保育園、学校、学童など、子育て需要が増えるとみるべきです。
継続して暮らす区民は、昨年より1歳、としをとり、高齢化も進みますから、介護の需要も当然増えます。

高齢化と転入増で、住民福祉の需要は大幅に増え、使途の自由な歳入は、増えるどころか6.2億円減らしちえる予算をくんでいるわけですから、住宅、福祉、医療、教育などを切り詰め削減した問題のある予算だと言うことになります。

今は、価格下落の見えないステルスインフレ

しかも、いま、私たちの社会は、ステルスインフレと呼ばれる、価格の下落が見えにくいインフレ下にあります。

牛乳パックの量が1ℓから900㎖にかわったり、お昼の餃子が5個から4個の減っていたり、お店の内装が、質素になったり、と同じ金額で、過去と同様のものやサービスを買えない質の低下によるインフレが起きていることが、区民生活の可処分所得を引き下げていることを認識し、予算に反映すべきです。

コロナ前でも、景気悪化と大幅な税収減

財調割合が0.1%とはいえ増え、今年から法人事業税が調整三税に加わり、その算定額が総額で438億円も増えたにもかかわらず、特別区交付金が60.7億円昨年より減っているのは、法人住民税の大幅な減収によるものです。

コロナでさらに心配な、深刻な景気悪化

都区協議会において、1月28日に都区財政調整協議が合意に至ったことを考えると、その後のコロナ問題の影響が十分に反映されていない時点で、1000億円もの減収を見込んでいます。昨日、オリンピックの延期も決まり、さらに景況は厳しくなるでしょう。

コロナウイルスの影響が、区民の心に不安の影を落とし始めています。
ウイルスへの感染の心配も当然ありますが、コロナの影響が、いつまで、どこまで、どれくらい及ぶのかもわからない、不安が大きいと思います。

コロナで一気に顕在化する、2000年以降の日本の制度改正

特に、たくわえの無い経済的弱者に、より、深刻な影響をもたらすことになるのではないかと心配しています。この間、じわじわと税や保険料負担の増で可処分所得が減ってきています。

ただでさえ、大田区は、住宅、子育て、介護、医療、教育など住民福祉の課題を放置し、優先順位の低い、箱モノや土木工事やイベントに税金を投入してきました。そのツケが、このコロナウイルスの問題で一気に顕在化するのではないでしょうか。

日本の社会保障制度は、
・元気だけれど仕事が無い。
・仕事はあるけれど、低賃金と言った方たちを救済することが難しいしくみです。
さらに大田区のような都市部は、地縁も血縁も薄く、住むにも、食べるにも、お金が必要です。

 

コロナで常態化が心配な「テレワーク」「遠隔医療」「遠隔教育」による労働者の請負化と医療教育の質の低下

そのうえ、感染拡大防止のためのテレワークが常態化すれば、そもそもの働き方の定義も、労働時間数の定義もない働き方ですから、「請負」の働き方が広がるのではないかという心配があります。

テレワークは、利便性ばかりが取り上げられますが、コロナで業績悪化したから、そのまま正社員から請負へ、と言ったリスクも否めず、大田区が、安易にテレワークを推進する立場に立つべきではないと考えます。また、それを遠隔医療や遠隔教育など他分野に広げ、常態化することはには極めて慎重になるべきです。

コロナが長引くことで、影響が拡大し、深刻化しないよう、一日も早い、住宅、雇用対策はじめ、区民生活を安定させる対策で行政が区民生活を支え、この、たぐいまれな区民生活の困難を議会も行政も区民とともに乗り越えていくことを決意し討論といたします。