良いこと、便利なこと、心地よいことに財政投入することは、一見良いことに見えますが、優先順位もあれば、公平性という視点もあります。
欲しいものを見境なく買えば、お財布が空になるように、特に地方自治体の場合、財政がひっ迫します。肝心の子育て、介護、教育、障がいなどにお金が回らない、などということがないよう、計画的な財政投入が必要です。
今回、幼児教育無償化の流れで、認可保育園の多子世帯、低所得者への財政投入のための条例改正が行われました。この流れ、みなさんは、どう思われますか?


この議案は、平成26年から始まった幼児教育の段階的無償化の流れの一環として、住民税非課税世帯の第二子の無料化と、要保護世帯等の第一子について国の示した保育料では3歳児以上において、国の基準額6000円以上を上回るためその部分を補助するための条例改正です。

昨年平成28年の第三回定例会で行われた、「年収が360万円未満の世帯における多子計算の算定対象範囲を撤廃し、第2子を半額、第3子を無料」に引き続き行われるものです。

今回の保育料の改定は、結果として低所得者、多子世帯の保育料の負担の減免になり、好ましいものです。

しかし、次の点から問題があると考えています。

第一に
この施策が保育だけでなく幼児教育の無償化の流れの中で行われていて、対象は5歳児以下ですが、どのように取り組んでいくのかのロードマップが示されていないことです。

第二に
今回の大田区の財政負担は、20数万円程度ですが、仮に、完全無償化になった場合、現在、保護者が負担している総額25億円超を全額大田区が負担することになる可能性があることです
保育は自治事務になりましたが、子ども子育て支援法に基づき行われるこの政令に基礎自治体はしたがわなければならないと内閣府の担当は話していました。
今回の負担はわずかですが、完全無償化になった場合、全額負担できる財政力を持ち得るでしょうか。

大田区の保育は最終的に、18園を残し民間事業者が担う方針です。そうなると将来無償化が進みすべての利用者が対象になれば、低所得者や多子世帯への支援制度ではなく、営利の民間事業者が行なう保育事業を税金で支えるかたちになります。

第三に
公務員が行っている事業であれば、給与や予算などの細かいチェックが行われますが、全額行政負担となれば、保育料の条例改正も不要で議会のチェックがなくなり、コスト意識が希薄になることです。
保育の無償化は行政が取り組むべき課題の一つですが、担い手が官か民かや、優先順位などの要件があってのことです。
今も、保育の一部は保育料の高い認証保育所が担っていて、将来認可保育園がすべての待機児童を担えるかもわからない状況で無償化に突き進むのは問題です。

たとえば、今回の無償化は、認定子ども園も対象になっています。大田区は認定子ども園がありませんが、今後の待機児対策に認定子ども園が活用される可能性もあります。

第四に
そうなると、幼稚園は有償で認定子ども園は無償といった構図が将来出てくることになり、幼稚園経営にも大きな影響を及ぼす可能性があります。

あるいは、大田区の私立幼稚園は、認定子ども園へと転換を余儀なくされるかもしれません。

第五に
こうした、大きな制度的転換について政府の根拠が希薄なことです

理由は
①幼児教育を受けていた人の所得状況から支援に効果がある
②生保受給率と幼児教育にも関係性がみられる
③少子化対策

ですが、あまりにも簡単で一般的・抽象的な理由です。

大田区財政への影響、将来に大田区の私立幼稚園への影響、営利事業者への行き過ぎた財政措置という構図になるなどへの懸念が説明されておらず反対です。