映画『タネは誰のもの』に学ぶ、農業のさらなる工業化=種子法廃止・種苗法改正・農業競争力強化支援法3段構えで

2018年4月1日~種子法が廃止され、同時に農業競争力強化支援法ができ、今年2022年4月1日~改正種苗法が発効しました。

これらにより、これまで、農家に認められていた栽培した作物からタネをとる権利(自家増殖)が制限され、タネをつくる育成者が農水相に登録したタネは、許可なくタネをとることができなくなりました。

都道府県などの登録であれば、農家は自家採種も可能でしたが、

・伝統的な在来種のタネトリをしていたとしても、それが登録品種に該当するとして裁判で訴えられる危険があるそうですし、
・民間企業が、それまで在来種だった種苗の品種登録を行い、一般農家がそれらのタネトリをできなくなる可能性もあるそうです。

・知見が民間に流れ、民間が新たな品種として登録すれば、農家は、企業からタネや苗を買わなければならなくなり、タネの値段が上がる可能性もあります。

自然の恵みを収穫するのが農業だと思っていましたが、タネさえ原材料のように扱われ、まるで畑や田んぼが工場のようで、1次産業のはずの農業が工業のようです。

農業の6次産業化、というのは、こういう事なのだと改めて実感しました。

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映画会は、雨の中、多くの参加者が集まりました。食への関心の高さがわかります。

衝撃だったのは、農業試験場などで開発したタネが、すでに、企業に提供されているということでした。

多国籍企業が、日本の優良な種や苗の知見を(無料ではないらしいケド)得て、それを特定品種として登録し、日本の農家に販売して利益を上げる。

農家やタネトリ農家が農業を続けていけるのかも心配ですが、農業を続けるために、タネや苗の分、食品の価格が上がるのも心配です。

多様な消費者のニーズに対応するため「種子法を廃止」しましたが、種苗法改正と農業競争力強化法の成立により、タネは、登録品種として登録した企業のものになってしまいます。

また、タネや苗の海外流出を止めるため「種苗法を改正」すると説明されていますが、映画をみると、法改正する前に、流出したさくらんぼの国内販売を止めることができています。(山形県で行われたさくらんぼのオーストラリア流出は、輸入差し止めと刑事告訴で和解が成立)

実際、国は、海外流出を止めるためと言いながら、優良な育種知見が海外に流出した例はあるかという質問に「そのような事実はつかんでいない」と答えていますから、種苗法改正の目的は、別のところにあるということではないでしょうか。

農林水産省品種登録ホームページ (maff.go.jp)