大田区の今後の図書館のあり方に大きな影響を与えるあり方報告書の原案ができました。
この「大田区の図書館のあり方検討報告書(原案)」について12月11日までパブリックコメントを募集しています。
https://www.city.ota.tokyo.jp/kuseijoho/publiccomment/publiccomment_bosyu/ootalib_29publicom.html
あなたの一言で、大田区の図書館が良くなるかもしれません。

先日、図書館のありかた報告書原案について勉強会を行いました。今日は、勉強会から見えてきた奈須りえの論点についてご報告いたします。

 

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【大田区の職員が図書館の専門性を備えていなければ、大田区立図書館はよくならない】

結論から申し上げれば、大田区の図書館は、過去(1950年代ころ)には、進んでいたといわれていますが、 過去の蓄積は使い果たし、今は、民間(指定管理者)まかせで、23区の中でも決して先進的とは言えない状況になっている  ということです。

しかも、民営化すれば、民間ノウハウでサービスが向上するといわれてきましたが、必ずしもノウハウを持っている指定管理者を指定すれば、大田区の図書館が良くなるわけではないこともわかってきました。
他の自治体で行っているサービスが、大田区では行われていない事例があり、大田図書館を除き指定管理者を導入していながら、数字に表れる大田区の図書館のデータは、23区の平均のやや下といった状況です。

指定管理者は、募集要項に書かれた以上の提案はしませんし(お金をもらえればするが)、募集要項に何を書くかは、大田区の職員が決めなければなりません。
大田区の図書館行政に携わる職員が、図書館行政に精通していなければ、大田区に図書館の現場をよく知る専門家がいなければ、大田区の図書館はよくならないということです。

指定管理者制度を続けるにしても、直営に戻すにしても、大田区の図書館行政にかかわる職員の専門性を向上すべきです。

 知り合いの図書館の専門家は、報告書を読んで、
「webでの予約サービスの開始が23区最後になるなど、大田区の図書館サービスは立ち遅れが目立つ。今回の報告書をみてもますますその感を強くし、周辺から孤立してしまうのではないかという危惧すら感じた。」と感じたそうです。

みなさまも、報告書を読んで、感じたことを大田区に出されてはどうでしょう。

 


大田区立図書館今後のあり方検討報告書原案

https://www.city.ota.tokyo.jp/kuseijoho/publiccomment/publiccomment_bosyu/ootalib_29publicom.files/houkokusho.pdf

には、大田区立図書館の現状が書かれています。

このデータには、二つの大きな欠点があります。
一つが、他区、他自治体との比較がないことです。
他自治体とのデータ比較により、様々な大田区立図書館の課題が見えてきます。
①中央図書館である大田図書館が貧弱
大田区の図書館は、中小規模館で、数は多いのですが、中央図書館の機能を果たしている大田図書館は中央館としては規模が小さいことがわかります。

東京23区中央図書館、中央図書館機能の図書館比較(日本の図書館2015による)

規模順(㎡) 自治体 図書館 床面積(㎡) 蔵書冊数(千冊) 貸出冊数 人口  (千人) 館数
1 江戸川 中央 7,500 427 898 675 12
2 足立 中央 6,537 787 816 670 15
3 中央 6,163 411 1,110 335 14
4 世田谷 中央 5,808 648 1,151 868 16
5 葛飾 中央 5,078 395 1,024 448 12
6 江東 江東 4,995 346 651 487 11
7 品川 品川 4,668 392 679 369 10
8 中野 中央 4,480 507 700 314 8
9 渋谷 中央 4,450 289 252 215 10
10 杉並 中央 4,397 685 707 543 12
11 みなと 3,997 238 407 235 6
12 新宿 中央 3,951 219 384 324 10
13 台東 中央 3,844 375 1,122 188 4
14 練馬 光が丘 3,576 311 1,299 711 12
15 墨田 ひきふね 3,393 281 620 255 4
16 中央 京橋 3,059 341 398 133 3
17 目黒 八雲中央 3,020 408 925 267 8
18 豊島 中央 3,000 252 900 272 7
19 板橋 中央 2,907 215 435 540 11
20 文京 真砂中央 2,893 188 597 204 11
21 荒川 南千住 2,686 270 705 208 5
22 千代田 千代田 2,616 171 318 54 5
23 大田 大田 2,150    254⑯     505⑰     701③ 13

 

上記の一覧からもわかるように、大田区の中央館である大田図書館は、23区の中でもダントツに狭くて蔵書数も少ないことがわかります。人口3位、面積は一番広い大田区の中央図書館は、これで十分に機能しているといえるでしょうか。

大田区中央図書館の面積・蔵書・人員体制・レファレンスほか様々な機能を拡充すべきです

大田区は、半径900mに一か所といった図書館の新設や、築40年、50年超と言った老朽化に伴う建て替えにばかりこだわりますが、中央図書館をどうするのかの記述があいまいで長期的な方針を明確にすべきです。
一方で、せせらぎ公園内に図書館のサテライトを置くとしていますが、調布地区にこそ図書館を設置すべきではないでしょうか。
田園調布のゆうゆうぐらぶ、田園調布出張所、富士見会館など、この間、施設の配置方針を公表していますが、民間の建物に入っていた事業者をあえて公の施設に入れるなど方針があいまいで、調布地区の公の機能をどうするのか全体像が見えません。図書館についても併せて考えるべきです。

②住民一人当たり貸出冊数7.8は、23区全体の平均8.1を下回る。
③住民一人当たりの資料費302円は、23区全体の平均306円を下回る。


もうひとつが、職員体制が明らかになっていない。ことです。
そのため、管理運営体制の評価検証もできません。

 

指定管理者ありきになっていますがが、文部科学省では、図書館が指定管理者になじまないという見解出している。また日本図書館協会も同様。指定管理者から直営に戻す自治体も出ており、指定管理費を明らかにしたうえで、直営との比較を分析し、ワーキングプアになっていないかなど、労働条件含め優位であることを示すべきです。

肝心の、館別の人員構成(正規・非正規)や人件費。司書の配置、連続勤務年数、離職率などが明らかになっていないため、望ましい体制が示されていません。提示すべきです。

たとえば、板橋区では、指定管理者制度の運用に関する指針で人件費について
「指定管理者制度導入施設の指定管理料及び人件費の算定に関する細目」(平成28年3月改訂)を定め、毎年度社労士のモニタリングや評価委員会の評価などにより人件費が改善されているか検証しています。

図書館では

配置:館長1名正規508500円、、副館長1名正規副館長424300円、司書23名正規正規司書339700円、23名を非正規非正規151200円で雇用し、それぞれに +法定福利費

を目安にしているそうです。

以下、個々の課題について、箇条書きで、指摘します。

 

 

【選書・収集】
●大田区が選書を一元管理しているというが、であれば、司書の数など、圧倒的に不足している。
人員を充実させるべき。
●各館に特徴ある選書をまかせているが、各館の規模は小さく、分担収集が効果的か検証すべき。たとえば、入新井図書館のコーナーの図書受け入れ数は、年わずか132冊。ひと月11冊程度で満足なサービスが出来るか。
●中央図書館が選書においてどのような役割をしているのか見えない。

 

【レファレンス機能】
●レファレンス件数の低下をインターネットの普及の性としているが、
大田区は、レファレンスサービスの指標ともいうべき国立国会図書館の「レファレンス共同データベース」や同「デジタル化資料送信サービス」にも参加していない。これで満足なレファレンスができているとは思えない。参加すべき。
●司書数について、「平成27年度の司書数は、直営だった平成17年度と比較して169人の増、6.3倍に増加し、レファレンス体制が格段に向上してい」るとしているが、勤続年数が不明。数が増えただけでレファレンス機能は向上しない。
●指定管理者制度を導入している図書館は、人の入れ替わりが激しく、館としてのレファレンス機能の継続性、蓄積に欠けるとの指摘がある。しかも、司書の人数と司書率の推移について司書率は6割に達しておらず、近年では低下している。これは、人の入れ替わりが頻繁に起きていることを示しているのではないか。司書の雇用の継続性を担保することでレファレンス機能を向上させるべき。
●レファレンス件数の減少も、レファレンス対応は、司書であればできるというものではなく、経験の蓄積と継続性が必要。指定管理者が、組織としてそれを可能にするしくみを持つべき、また、大田区がそれを指定管理者に求めるべき。
●区内でレファレンス情報を共有するのは当然で、それを可能にするしくみの構築が求められる。

●大田区として司書の定着、レファレンス機能の蓄積を可能にする体制を持つべき。

 

【教育(学校図書館)や幼稚園等との連携。学校図書館支援事業など】
●学校図書館支援事業は、1校あたりの支援時間が「年間70時間」と少ない。来ていなかった事例がありあがら、検証されていない。効果のある支援が行われているのか大田区として責任をもって検証すべき。
●学校司書に教科書を配布し、教育内容を共有すべき。
●学校資料配本サービスができていない。学校や幼稚園等に大量の本を搬送するサービスの検討が求められとあるが、搬送システムの確立は、喫緊の課題。
●学校幼稚園などと連携しているのは評価できるが、本来学校司書が行うことの代替になっていないか。
重要なのは「学校支援の実績づくり」ではなく、教育委員会と連携して学校司書を育てること。資料支援はもちろん必要だが、現在の学校司書体制がどれくらい不備だからこれだけの支援(実際に学校に出向く等)をしなければならないのか。これからどうこの状態が解消していけるのかを示すべき。教育委員会内で検討し位置づけを明確にすべき。

 【指定管理者】
長年の複数の会社による指定管理者体制の弊害が如実に出ている。何か新しいことを行おうとしても1社ならともかく、すべて複数の会社を通して行うことは極めて困難。制度そのものが、現状維持には向いていても、新しいことを取り入れるのに向いていないからだといえる。民営化=指定管理者は、サービス向上に向かない仕組みということになる。
合同で研修を行うなど指定管理者制度の趣旨からいってもおかしい。
2007(平成19)年度からは、「大田図書館を除き全館で指定管理者制度に移行し」、「大田図書館は、中央館としての役割を担う管理部門については区職員による直営を維持することとし、事業部門のみを一部業務委託としてい」るとのことであるが、揮命令は指定管理者や委託業者には及ばないはずなので、職業安定法第44条に違反する偽装請負の可能性がある。確認し問題があれば改善すべき。

【公文書館としての機能】
大田区には公文書館がない。そうした意味では、行政文書や区議会の資料などの収集を明確に位置付けるべき。

【その他】
●高齢化に伴う高齢者向けサービスを障害者から分離し提供すべき
●図書整理などのための休刊日が少なすぎる。年間7日以内。大田図書館のみ10日以内。
●団体かしだし冊数100冊は少ない。
●図書館が沈思黙考の場というのは古いのではないか。静かな音楽を流している図書館もある。
●DVDは高価で破損も多く、民間事業者も多い分野。これからどう取り組むか検討すべき。
●図書館運営協議会は図書館法第14条に設置が定められている「図書館協議会」と同一のものか。もし違うならなぜ設置するのか。明らかにすべき。
 

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