賃金が物価に連動しない政治の責任
物価に連動しない給料
物価の高騰に給料が連動しません。
どうしても、物価高騰や賃金の問題は、ロシアウクライナ紛争など、仕方が無いように感じる部分も多いと思いますが、実は、政治の責任もかなりあると思います。
給与を物価に連動させなかった人事委員会勧告
たとえば、公務員給与の改定に大きな影響を持つ特別区人事委員会勧告は、賃金を物価に連動させていません。
一昨年、令和4年度2022年の職員給与改定時の直近の物価の動向をみると、
企業物価指数は前年の2021年3月から上がり始め、5、6月には5%を超えていますし、
11月11日に発表された10月の指数は前年同月比8.0%上昇と、1981年1月以来40年ぶりの伸び率になっていました。
企業物価指数は、景況感やインフレ率、消費動向を予測する材料となり、消費者物価指数より卸売である企業物価指数のほうが景気を反映させることが早いと言われています。
当時から、その後、物価は上昇すると予測できましたが、人事委員会は2022年の給与に物価の上昇を反映させませんでした。
消費者物価指数が下がったからあげなかった公務員給与
物価をどう判断したか特別区人事委員会に伺ったところ、
2021年4月の消費者物価指数が下がったから物価を反映させなかったと答えました。
物価が上がる前から上がっていた企業物価指数
不思議なのは、物価が上昇し始めたのが2021年の秋ごろからですが、
その前の4月にすでに企業物価指数が上がっていたことです。
固定資産税評価額評価替えが物価高騰の呼び水?
私は、2021年の1月に改訂された固定資産税評価額が上がったことが大きかったと思っています。
固定資産税額据え置き
住宅地1年、商業地3年の影響
企業は、固定資産税含めたコストを、どう売上で回収し利益を確保するか考えるからです。
しかも、2021年は固定資産税評価額が引き上げられたものの、税額は据え置かれました。住宅地は2021年度限りですが、商業地は、今年2023年まで据え置きです。
企業過去最高益と固定資産税額3年の据え置きの関係
そういう意味では、企業はいち早く固定資産税評価額増という物価上昇傾向をとらえ、売値を上げ、企業物価指数が上がったという見方もできます。
そのうえ、政治が税制で商業地という経済活動に使っている場合の多い土地だけ固定資産税額を宅地より2年長く据えおいたのですから、うまく値上げが消費者に受け入れられた企業は、その分、利益を上げることも出来たと思います。
据え置いたことで、物価の高騰が抑制されていれば良いのですが、物価は上がりましたから据え置きのメリットを最終的に受けたのは企業でした。
2021年秋くらいから2022年度もそうですが、
企業が過去最高益になっていくのも、このあたりが関係しているのだと思います。
消費者物価指数が上がっても連動させなかっら2023年の公務員給与
ところが、特別区人事委員会勧告をみると、2022年4月の消費者物価指数東京区部は対前年2.4%、企業物価指数は9.9%あがっていたのに、本年度2023年の職員給与改定の時にも物価上昇は職員給与に反映されませんでした。
標準生計費が下がったから物価高騰を反映させなかった
同じく人事委員会にうかがったところ、2023年度の職員の給与は、標準生計費が減ったので、物価高騰を反映させなかったそうです。
前年の2022年の標準生計費は2人世帯で44%、3人世帯で35・3%も増えていましたが、消費者物価指数の4月をみて4月が下がっていることを理由に物価を反映させませんでした。
給与が上がらない指標を選んで勧告する人事委員会!?
2022年も2023年も消費者物価指数と標準生計費の上がっていない方を選んで給与改定しています。
まるで物価高騰を反映させない理由を探しているかのようです。
そうやって2年続けて、物価上昇がデータから読み取れていたにもかかわらず、人事委員会の勧告は、物価上昇を給与に反映させませんでした。物価に連動しない給与へ誘導したのです。
官民格差是正で、民間に影響する公務員給与
公務員給与は官民格差是正の視点で、民間給与と比較して決められています。
民間が下がれば、公務員も下がり、民間が上がれば、公務員もあがります。
でも、公務員が下がれば、民間は、もっと下げていいだろう、とさらに下げるのではないでしょうか。
公務員給与は、民間給与へも影響を及ぼしますから、物価を給与に反映させなかったことで、民間給与もさらに上がりにくくなっているでしょう。
物価に連動させない給与の政治の責任
特に東京は物価が高く、物価高騰の影響を受けます。公過去最高益の企業がある一方、多くの給与所得者を中心に収入は物価に連動していないのは、固定資産税評価替えの税額据え置きや人事委員会の勧告など、政治の責任も大きいと思います。