大田区が、臨時で議会を開催し、突然、200坪、3億1500万円の用地取得の補正予算を出しました。

田園調布の台風で浸水した区域の水防のための施設を建設するためだと言います。
計画も検討さえなかった土地購入で、浸水した田園調布4、5丁目の方たちは安心を得られるでしょうか。

以下は、議案に対する奈須りえの討論です。


第72号議案令和二年度大田区一般会計補正予算(第五次)について反対の立場から討論いたします。

今回の補正予算は、総額で22億5千376万1千円の増額の予算で、財源は、国庫支出金3億1791万円、基金の繰り入れ17億585万円、区債の発行は2億3千万円です。

区長は、第二回定例会の区長挨拶で、コロナによる今後3年間の財源不足を560億円減と見込む、不要不急な事業の延期や廃止、事業の優先順位付けなど、全事務事業の聖域なき見直しを行うと言っているとおり、決して有り余る財源をもとに編成された補正予算ではありません。

国庫支出金も、国は、コロナ対策費を全額国債を財源にしていて、すでに1年間に発行する90兆円にのぼる国債を発行しています。

長期の国債は極端に減り3か月や6か月という超短期の国債と、政府系の金融機関による財政投融資や債務保証により財源を確保している状況です。民間の金融機関が長期の国債を引き受けなくなっていることからも、金融状況は極めて不透明だということがわかります。

区債発行2億3千万円は、固定金利を選ぶそうですが、低金利で1%を下回ると言っても利息を支払うことになります。

聖域なき事業の見直しを行わなければならないほど、区民の置かれている生活環境が厳しい時に、時に、行うべき事業なのかという厳しい視点での点検が必要な補正予算だと思います。

中でも私は、昨年2019年に発生した台風19号の際に浸水被害を受けた田園調布4丁目5丁目地区の水防活動のための用地購入費として計上されている、3億1500万円には、この用地を購入して水防活動の拠点を整備することが、防災対策として適当か、疑問があります。

第一の問題は、購入し整備する用地が、浸水被害を受けた水路沿いにあることです。

しかも、貯留施設の建設や水路そのものの改善のためなどではなく、水防活動の拠点整備で、購入した用地の上物を解体して、建物を建設するそうです。

場所も公表されていませんし、何を作るか詳細は検討中で明らかになっていません。

田園調布4、5丁目の防災対策や浸水被害への対策は重要で必要ですが、ハザードマップで浸水地区になっている土地を買い、そこに防災活動の拠点整備で箱モノをつくることで改善できるでしょうか。

第二に、大田区はこれまで、水防活動拠点の整備について全く検討してこなかったことです。

この間、田園調布の台風の浸水被害を受け大田区が調査検証し、今後の課題や対策として掲げてきた中には、浸水地区の用地を取得し施設を整備するといった報告や議論は無く、大田区長が国土交通省関東地方整備局京浜河川事務所長へ提出した「多摩川における治水対策の促進に関する要望書」にもそうした必要性には一切触れられていません。

また、私は、今年度も昨年度も防災対策特別委員会に所属していましたし、今年度は、まちづくり環境委員会の委員ですが、どちらの委員会においても、水防活動拠点の必要性についての議論は無く、直近の7月15日開催のまちづくり環境委員会の場でも、一切行われてきませんでした。

昨日、本会議開催前に開催された防災対策特別委員会において、昨年の浸水被害のための用地購入について、質問いたしましたが、コメントは差し控えると、必要性含め、一切発言されませんでした。

昨日の議案質疑で、土地所有者から用地購入依頼があったのが、今年3月だったこと、それ以降に検討し、購入を決めて7月初めに財産価格審議会にかけたことが明らかになりました。

大田区、区長、議会、議員アド、いつだれやどこの組織がどうかかわったかなど、合意形成や意思決定は追って解明したいと思います。

この区域は、大田区のハザードマップの多摩川が氾濫した際の浸水区域に指定されていて、浸水のリスクがあるので、昨年の浸水の要因の一つでもあり、無人でも排水できるよう、今年5月26日の第一回臨時会で遠隔操作が可能な排水ポンプ車1台を納期令和3年2月26日契約金額2,325万740円で購入しています。

議案審議の総務財政委員会で、置き場所について都市基盤管理課長は、

 現在、1台目の排水ポンプ車につきましては、通常、大森地域庁舎の地下の駐車場に配備してございます。

 また、昨年の台風19号のような場合につきましては、その台風の進捗にあわせて、多摩川沿いに配置を、その日の朝方に配置するという状況でございます。

 今回新たに購入します排水ポンプ車につきましては、2台目は嶺町特別出張所の地下の駐車場に配置する予定でございます。

と説明しています。

このポンプ車の購入の審議時には、すでに用地購入依頼がありましたが、ポンプ車が遠いところに置いてあることによる問題点などは、一切指摘されていません。

3月の土地所有者からの用地の購入依頼と交渉にの過程の中で、5月26日以降に必要性がうまれてきたように見えます。

そのうえ、この区域は風致地区で建物の高さも10mに制限されていて、高い建物は建てられませんので、建物を建てても浸水した場合、活用も難しいものがあります。

ここに3億円かけて用地を取得し、さらに建物を建設して、地域住民のみなさんに安心を提供出来るでしょうか。

聖域なき全事務事業の見直しと言いますが、田園調布の防災と言いながら効果の見えない土地を買い箱モノをつくります。

せせらぎ公園の体育館、入新井第一小学校の複合化ほか、区民から疑問の出されている施設は一向に見直す様子が見えません。

区長の意味する聖域とは、福祉や教育だということでしょうか。

浸水した区域は世田谷区と大田区にまたがります。水路と多摩川の間に位置し、世田谷区にある「多摩川緑地広場管理公社」は、世田谷区と大田区が委託をして、運動施設の管理運営をしている施設です。

水防活動の拠点が必要であれば、「多摩川緑地広場管理公社」の敷地に、世田谷区大田区双方でポンプ車を配置し、水害の際には、両区の水防活動の拠点として活用するよう協議すれば、3億円の用地購入費に加え施設整備費も節約でき、その分、さらなる防災のために活用できるのではないでしょうか。

一方で、用地購入における公平性や透明性にも疑問があります。

大田区に土地を売却すれば、民間に売った場合に比べ、公共事業などのために土地建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例が受けられるなど税制における優遇があります。

大田区に、今回、土地所有者からの購入依頼をうけてから、区域の住民に土地の売却の要望等について調査したか、購入を検討していることをこの区域の方たちに知らせたか聞きましたが、行っていなかったことがわかりました。

今回、田園調布で浸水した区域の土地所有者の中には、大田区が用地購入を検討していると知ったら、大田区に土地を売却したいと考えている土地所有者がほかにもいるかもしれません。

この土地でなければ水防活動に支障があるといった説明もないので、不透明で不公平な土地購入になっていると思います

反対です。