都知事選挙が終わり、小池都政が続くことになりました。

小池都政を象徴するこの都市計画(原案)が続けば、無理やり作る右肩上がりの経済成長の負担は、私たち都民の暮らしに大きな負担をもたらすでしょう。

人口が減れば、基本、資本主義経済のボリュームは減ります。

それでも、成長を目指し、右肩上がりの経済成長をつくろうとしているのが今の日本です。

どうやって作るかと言えば、税金では足りないので、PFIで企業に借金させて、箱モノや道路公園を造り、交通、廃棄物施設、港湾、、再開発を行い、あとから税金で返させます。

足りなければ他の事業への財源が減り、さらに足りなければ増税でしょう。

そのもとになっているのが「東京都市計画 都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」です。

現在のその(原案)の意見募集が行われています。

東大名誉教授神田順さんの原案に対するコメントを掲載します。

意見の参考にしてください。
*東京都市計画 都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(原案)意見募集のHP


「東京都市計画」へのコメント
神田 順

はじめに

東京都では、「東京都市計画 都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(原案)」を提示しており、パブリックコメントを求めている。全体を通読した上で、私たちの住む東京の将来像として必要と思われる内容を整理することを試みる。

原案の概要について

A4 版で 113 ページに及ぶもので、基本的方針を定めるとしているが、すでに 2017 年 9月に「都市づくりのグランドデザイン」(A4 版 208 ページ)が刊行されていて、その踏襲になっている。グランドデザインには、推移や動向が示され、イメージ図なども入れて解説風に作られており、また、素案公表後に、パブリックコメントなどの意見照会も経たものとされていることから、「グランドデザイン」をどのように「都市計画」に落とし込むかということのように見受けられる。

第1 基本的な考え方 について

目標として、ESG や SDGs に配慮するとしているが、全体的に、とてもそのような
内容になっていない。
都市づくりの戦略として 8 項目も上げているが、③災害リスク低減と環境問題を大き
な方向性としてうたうことが望ましく、沢山の言葉だけを並べても、具体的にどのよ
うな計画となるかが見えない。

第2 東京が目指すべき将来像 について

少子高齢化、人口減少社会との認識を示しているのだから、「経済成長をリードする」というような文言は不適切で、今般のコロナ禍を迎えた反省に立ち、1 極集中による高密度化の弊害を除くことを基本に置くべき。新たな宅地化の抑制やみどり豊かな環境形成は、中心から離れた地域のみならず、市街地全体での方向性を示すものであるべき。みどりの充実については、「量的な底上げ」という表現よりは、「量的な拡充」として、具体的な数値目標を挙げることが必要。全体として、「住まいの視点」が弱い。
 
区部にあっては、環 7 を境界として中枢広域拠点域と新都市生活創造域に分けてい
るが、ビジネス中心と住まい中心のようでいて、現実は、このような区域分けの意
味が都市計画的にも不明瞭である。

 中央広域拠点の誘導方向として、緑化推進、水辺空間の創出は望ましいが、建ぺい
率の緩和などは、時代に逆行するものである。スクラップアンドビルドよりはスト
ック活用の方向を強くうたうべきでそのための政策を強化すべきである。何よりも、
防災機能のためにも緑地空間の増大が望まれる。
 
国際ビジネス交流ゾーンにおいて「公益性」の言葉が使われているが、ビジネスの
ための都市機能を公益性と称するのは問題である。

 新都市生活創造域の将来像において、農地、屋敷林、樹木地などが保全とあるが、
現状は、大幅に縮小していることを踏まえた表現になっていない。農空間や公園の
確保には強力な支援が必要である。

第3 区域区分の方針 について

 全域が市街化区域であるとしていることを言っているのみ。

第4 主要な都市計画方針 について

土地利用に関する方針において、①住宅地では、人口減少を踏まえた質の重視が求め
られる。高度利用や高層住宅地の誘導などは、時代に逆行する。⑤流通業務地におい
ても、住まいとの調和を計画に盛り込むべきである。

良好な居住実現の方針においても、「建て替え」ありきでなく、ストック活用を優先
すべきであり、特に公営住宅にあっては、セイフティネットの視点から住まいの質の
向上をねらうとすべきである。狭小宅地は進んでおり、人口流入抑制も考慮に入れた
住環境整備が必要。

都市施設整備における交通基盤の整備において、羽田空港のこれ以上の容量拡大は、
都民への犠牲を伴うので望ましくない。また、自転車交通は、歩行者との分離がなさ
れておらず、道路構造の見直しが不可欠である。

同じく下水道及び河川の方針において時間 75 ミリ降雨を設定しているが、その根拠
とともに、浸水域を考慮した都市計画の見直しなども必要。

災害に係る方針としては、緑化や水辺空間を都市計画における災害低減の基本におい
た設定が望まれる。地震や水害の想定被害シミュレーションをもとに、都市計画に反
映すべき。
都市景観に係る方針においては、すべての建築申請に先立って住民も含む景観審議を
制度として導入すべき。

整備目標で示される一人当たりの公園緑地面積については、いままでの推移と地区ご
との状況が示されないと、具体的な都市計画に反映できない。

特色ある地域の将来像 について

 こまかく地域名を挙げて将来像が書かれているが、違いがわからないと共に、それ
ぞれの地域のどの部分をどのようにするかが示されないと、適当な言葉だけを取り
込んで自由な計画が可能になってしまう。
 緑化率の目標や、高さ制限、建ぺい率の強化など、人口減少に見合った環境の質の
向上を将来像として示す必要がある。

まとめと感想
 
これで、都市計画の原案が示されているとは考えられない。水と緑についても触れてはいるが、同時に、にぎわい、ビジネス、交流、などの言葉も登場して、結果として民間の開発の便に供するという内容になっている。しかも、地域区分も含めて、2 年前に都民の了解を得た「グランドデザイン」を元に作っているとなると、都民の声を反映するものにはなりにくいことが想像される。今の時点を考えると、コロナ禍を経験しての根本的な見直しが必要という議論もありうるかもしれない。