「マイクロプラスチックによる影響」高田秀重教授講演を聞いて 海洋→魚・貝→鳥・人など
大田区消費者生活センターで行われた、東京農工大学農学部環境資源科学科 高田秀重教授の「マイクロプラスチックによる海洋への影響」を聞きました。私たちが使う海水から作る塩にも小さなプラスチックが含まれていて、取り除くことが出来ないのだという話は友人などから聞いていましたが、あらためて、深刻な問題であるということを知ることができました。
以下、簡単に報告します。
アンダーラインは、奈須りえの感想や考えです。
【作られ使われできる身の回りのマイクロプラスチック】
マイクロプラスチックとは、5mm以下のプラスチックのことをさします。マイクロは、小さなプラスチックという意味でつかわれています。
現在、石油は年間3億トン消費されています。その石油の8%がプラスチックになりますが、そのうち半分は容器包装として使われています。
作られたプラスチックが、環境中に破棄され、紫外線にあたると小さくなっていって、5mm以下のマイクロプラスチックになります。
プラスチックをたくさん使えば、プラスチックごみはたくさんでます。それらを環境中に廃棄すると、それが風に飛ばされ、川を流れて海に出ます。プラスチックごみは、軽いので浮いて遠くまで運ばれるのです。
【1回1着のフリースの洗濯で約2000本の細かな化学繊維が放出】
たとえば、1回1着のフリースの洗濯で約2000本の細かな化学繊維が放出されるそうです。
防ごうとしていますが、細かい繊維なので、洗濯ネットなどでは取りきるのは難しいそうです。
繊維が、貝に取り込まれていることを調査した研究もあります。
ほかにも、マイクロプラスチックとなる経路は、
🔲プラスチック製品の中間材料と言われる化学工場で作られているレンジペットが、様々な過程で環境に放出され、海へ
🔲洗顔料
🔲メラミンフォームスポンジ
🔲ほか
など様々です。
【廃棄されたプラスチックがマイクロプラスチックになって海から魚・貝・鳥・人へ】
作られ、使われ、廃棄される過程で、環境中に放出されたプラスチックが、様々な形で小さくなってマイクロプラスチックとして海に入ると、魚がそれを食べ、さらに大きな魚や鳥や人が、マイクロプラスチックを食べた魚を食べることになります。
ミッドウエー島のあほうどりが、ヒナに与えるために胃の中にためたモノを吐き出させると、プラスチックが検出されます。
体重5㎏の鳥の胃の中から6gのプラスチックがでてきたそうです。これを体重50kgの人間に換算すると、60g。
いかに鳥がたくさんのプラスチックを食べているかがわかります。
体長10~15㎝のイワシ64匹の、49匹からプラスチックが見つかり、1匹あたり2~3個のマイクロプラスチックが見つかった、という研究があるそうです。
検出されたマイクロプラスチックの9割はプラスチック破片で、マイクロビーズは1割。
プラスチックの海洋汚染の問題は、プラスチック製品をどうするか、と言う問題で、「マイクロビーズ対策だけでは解決しない」と高田先生は指摘しています。
【プラスチックに含まれている有害化学物質・環境ホルモンなど】
しかも、プラスチックからは、有害化学物質が検出されます。
プラスチックを粘り強くしたり、色を付けたりするために使う添加剤です。
20年前にボストンタフツ大学医学部の、Dr.Ana Sato 氏は、プラスチックプレーとからノニルフェノール(NP)が溶け出すことで、乳がん細胞が異常増殖するという実験を研究をしています。
ノニルフェノール(NP)は女性ホルモンのようにふるまうことから、環境ホルモンと呼ばれています。
2009年の輸入プラスチック製品(ファスナー付き食品用保存袋、使い捨て手袋、お弁当箱、プラスチックコップなど)からのNP溶出の分析結果をみると、日本製からはほとんど検出されませんが、中国製、タイ製などから構想度にNPが検出されています。
ペットボトルのふたも、柔らかくしたり、劣化を防ぐためにNPが使われていて、国産・輸入問わず検出されています。
そういえば、2000年ごろに、環境ホルモンが大きな社会問題になりました。国内の製品の対策はとられていたのですね。
その後、パタッとマスコミが取り上げなくなりましたが、グローバル化に伴い、増えてきた製品への対策が取られなかったと言うことです。
グローバル化には、こうした問題もあるのだと改めて気づかされます。
【油(脂)に溶けやすく脂肪にたまる有害化学物質】
また、ストックホルム条約で、規制されているPCBや農薬などは、油(脂)に溶けやすいという性質があり、脂肪にたまります。
プラスチック中の汚染物質濃度は、周辺の海水中の10万倍から100万倍。
【プラスチックが有害物質を運ぶ運び屋に】
海洋中のプラスチックが有害物質を運ぶ運び屋になっています。
魚などが有害物質を吸着したプラスチックを食べると、有害物質が体内に取り込まれ、プラスチック自体は排泄されます。
化学物質は、魚などを通して、人体に移行、蓄積する可能性があるのです。
【プラスチックの製造・販売・使用とともに増えてきた環境中のプラスチック】
桜田濠の底にたまっている泥を調査すると、1800年ごろの層からはプラスチックは検出されませんが、1950年代では、塩ビなど。2000年代になるポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ペット、塩ビ、アクリルなど多くのプラスチックが見つかります。
こうした傾向は、日本の桜田濠だけの問題ではなく、南アフリカ、マレーシア、ベトナム、タイなど水の底に堆積するプラスチックが表層に向かって増えていることが調査でわかっていて、世界的に汚染が進行していることが判明しています。
【20年後に10倍になると予測される環境中のプラスチック】
プラスチック使用量の増加に伴い、環境中に放出されているプラスチックの量は増えていて、20年後には10倍になると予測されています。
こうした状況から、国際的には、予防原則に基づく対応がとられているそうです。
【国際的に進む予防原則での対策】
予防原則というのは、今、野生生物や人間に目に見える影響が出ていなくても、とれる対策があれば対策をとるということ。マイクロプラスチックのリスクについて不確かなことはあるけれど、対策を進めようということです。
何も手を打たなければ海洋プラスチックの汚染は深刻化します。
海洋のマイクロップラスチックは除去できないからです。
海外では、
2014年8月 アメリカでレジ袋禁止法案成立
2014年11月 EUがレジ袋削減案策定を義務付け
2025年までにレジ袋の消費を1人1年40枚まで削減がEUの目標
(日本では年間300億枚以上のレジ袋が使われていて、現在一人あたりでは約300枚)
2016年 イギリスでレジ袋課税
現在世界約20か国以上で使用禁止、生産禁止、有料化、課税などのレジ袋規制が行われています。
2014年3月アメリカサンフランシスコ市ではペットボトルでの飲料水の販売を禁止しました。
2016年9月フランスで「プラスチック使い捨て容器や食器を禁止する法律」が成立し2020年から施行です。
【循環型のゴミを出さない暮らし】
石油がベースのプラスチックは、循環型ではありません。
プラスチックが焼却されると待機中に二酸化炭素が放出されますが、植物が吸収しきれずに、待機中に残留し、温暖化が進むからです。
植物が地下で石油になるには、数百万年から数千万年という時間がかかりますから、短期間で石油を採掘して使用し、焼却すれば、循環は途切れてしまうのです。
紙や木など、バイオマスベースの素材が土の中でゆっくりと分解する循環型の素材です。
プラスチックの汚染低減のため、高田先生は、以下のような提案をしています
3Rすべきですが、優先順位があります。
Reduce>Reuse>Recycle
削減>再使用>リサイクル>(プラゴミ発電)
プラスチック、特に、使い捨ての物の使用を避けること。
ご自身のスタイルとして、高田先生が、容器の問題を考え、お弁当を買うのではなく、家で食べる、外食すると言った方法を選ぶと話していたのが印象的でした。