大田区はアスベスト救済法による認定者が都内で最も多い自治体です。宮寺石綿のあった大森南だけでなく、認定者は区内全域に広がっています。大田区はミヤデラ石綿をきっかけにフォローアップ検診を行っているため、新規受診者が極端に少なく、検診が区内全域に広がらないのも課題です。アスベスト救済法を根拠に行われているアスベスト検診を大田区で始めるよう、提案しました。

大森南旧宮寺石綿周辺に環境ばく露が判明して10年

今から10年前2007年の11月、東京労災病院から大田区に、環境被害が疑われる胸膜プラーク5名、中皮腫1名、石綿胸水及びその疑いの方2名が、昭和63年まで操業していた大森南の旧宮寺石綿の周辺にでているという情報提供がありました。
アスベストは、耐火性・防音性などの特徴を持ち、安価であることから広く建材として使用されてきました。1ミクロン以下の極めて小さな繊維で吸い込むと中皮腫や肺がんになる恐れがあります。長い期間・高濃度のアスベストを吸いこめば健康被害のリスクが高まるのは確かですが、どれだけの量を吸ったらいつ発症するかといった点については明らかになっておらず、吸い込んでもすぐに発症しないため、因果関係を証明するのも簡単ではありません。
報告された2007年といえば、その2年前の2005年に、兵庫県尼崎市のアスベスト工場クボタ周辺の環境被害が明らかになって間もない時期でもあり、多くの区民がこの報告を不安な気持ちで聴いたと思います。労働災害だったアスベストが環境被害の問題でもあることが広く知られるようになった時期だったのです。
環境ばく露の関心の高かった時期に大森南・東で行われたアスベスト調査
 
こうした社会的背景や、区民の不安にこたえる形で、2008年2月から3月にかけて、大田区は、周辺の大気中のアスベスト濃度の調査とともに近隣住民の問診と胸部エックス線の健康調査を行い「大田区におけるアスベスト健康調査報告書」としてまとめています。
受診者916名のうち、大森東四、五丁目、大森南一から五丁目に住んでいて昭和63年以前にも居住歴のある住民862人が調査対象となりました。
 
調査結果は:受診者が多くリスクが特に高い結果ではないが、石綿ばく露の可能性があり今後も注視必要
調査報告書は、
・京浜工業地帯の一角をなしていたことを考えると原因企業は特定出来ないものの、一般環境を経由した石綿暴露の可能性は否定できない
としたうえで、
アスベスト被害者を出している尼崎市27.5%、鳥栖市5.4%、泉南市地域23.9%のアスベストを吸った痕跡である胸膜プラークありの数字と比較し、大田区の胸膜プラーク有りが1.5%だったという数字から、
・他の地域に比べアスベスト関連疾患リスクが高いとは言えない
と言っています。
しかし、
1.      受診者が多く、居住年数に差があることや、
2.      CT検査を全員に実施していない
ことから、他の地域とは単純に比較できないうえ、この地域に胸膜プラーク所見有りの方が9人いたことは重要な事実であると人数に注目し、今後も注視していかなければならない、
と考察しています。しかし、区外転出者が少なからずいるため、区単独で対応することは困難だとも指摘しています。
 平成21年から現在まで大田区が、「フォローアップ検診」を行ってきたのも、当時の検診に基づく報告書の結果を重要視してきたからです。
 そこでうかがいます。
【質問①】
大田区は、このアスベストフォローアップ検診についてどのように評価し課題をどのようにとらえていますか。

【大田区答弁①】
区民の健康不安にこたえてきたが新規受診者が少ない
その後のアスベストフォローアップ検診から見えていること
東京労災病院の呼吸器内科部長でアスベスト疾患センター長を兼務されている戸島洋一(ひろかず)先生は、2013年までのフォローアップ検診結果から、「労働者健康福祉機構」に「大田区石綿向上にかかる近隣ばく露と職業性ばく露の関与についての調査研究」で、
工場から約500mに居住する環境ばく露での発祥の可能性がある「良性石綿胸水」の方がいたことから、十分な調査が必要。
また、環境再生保全機構の2006年から2010年までのばく露状況調査報告書の中で、中飛腫として認定を受けたもののうち、
・近隣ばく露・環境ばく露が疑われる中飛腫発症者が、
環境被害の発生しているアスベスト工場のある
尼崎市で155人
三菱マテリアルの大阪府泉南地域で15人
ニチアスの横浜市鶴見区で10名
ニチアス、大和工業所(やまとこうぎょうしょ)などの奈良県王寺町(おうじちょう)・斑鳩町で10名
エーアンドエーマテリアルなどの北九州市門司区で10名
に対し、大田区の旧石綿工場周辺で9名で、中飛腫の潜伏期間の長さを考慮すると今後も注意が必要であると考察しています。
そのうえで、石綿工場周辺住民は、石綿関連疾患を発症する恐れがあるので、今後も検診等で経過をみていく必要があると 結論付けています。
都内で一番多い大田区、日本で三番目に多い東京都
  一方、環境再生保全機構の「石綿健康被害救済制度における平成18~27年度被認定者に関するばく露状況調査報告書」2017年3月をみると、アスベスト救済法の認定を受けた方、および当該指定疾病が原因で死亡した方の都道府県別の累計最長居住歴者は、兵庫県が最も多く、次いで大阪府ですが、3番目が東京都です。

【質問②】
そこでうかがいます、東京都の中で、大田区が最長居住歴の方がどれくらいの人数いるのか、また、東京都内のなかで、どれくらいなのか把握していますか。
【答弁②】
22人で都内で一番多い
大田区は、東京都の中で人口が一番多い、世田谷区よりも、二番目の練馬区よりもアスベストの環境被害の疑われる中皮腫などの認定数が格段に多いのです。
私は、環境省が行っている石綿救済法の付帯決議に基づく「石綿ばく露者の健康管理に係る施行調査」をすべきと考えていますが、この施行調査を行っている自治体は東京都に一つもありません。
 
広まらないアスベスト検診、不安な被害者の増加、区内全域に広がる被害者
大田区のフォローアップ検診実施状況をみると、受診者は、最初の調査の翌年2009年に91人、2010年に52人と少なくなっていますが、それでも、近年はだいたい30人が受診しており、フォローアップ検診が区民の健康不安にこたえる大切な役割を果たしていることがわかります。
 一方、検診結果で気になるのが、胸膜プラークの所見があった受診者が、2013年の15人を底に2016年には18人に増えていることや、にもかかわらず新たな受診者が0の年もあるなど、検診が広がっていないことです。
 アスベストの製造・使用は現在、全面的に禁止されていますが、過去に作られ使われてきた特に建材のアスベストが、改修や解体で飛散するリスクが高まっていて、環境被害者は、操業する工場周辺だけでなく、区内全域に広がっていく可能性があります。
 「石綿健康被害救済制度における平成18―25年度被認定者に関するばく露状況調査報告」の大田区に最長居住歴のあるものを町名別に分類した資料をみると、確かに、大森南、東、西、中あたりにかけて認定された方たちが多く住んでいたことがわかるのですが、意外と多かったのが中央です。大田区の調査対象となったアスベスト工場旧宮寺石綿のあった大森南が10名、大森東全体で5名ですが、中央全域で7名です。アスベストによる中皮腫や肺がんなどの方が、区内全域に広がっている可能性があるということです。
 試行調査は今後の被害者の早期発見、被害実態の全体像の把握などに役立てられます。調査は平成27年度~31年度の5年間ということになっていますが、「対象自治体」での(仮称)石綿検診の実施を見据えたものです。都内でも最長居住歴の認定者が最も多い大田区が、試行調査に移行することにより、区民負担は1000年から無料になり、低線量CTによる検査と建物のアスベスト被害等を含む新規受検者の拡大をはかることは、アスベストによる健康被害や健康不安をもつ区民のために重要で大きな意義を持ちます。
2008年の大田区の調査報告書が「区外転出者が少なからずいるため、区単独で対応することは困難だ」と指摘していた通り、こうした国の施行調査に移行することは、さらに他の「対象地域」の調査結果との比較対照や分析を共有し、石綿関連疾患の早期発見・早期治療に向けた行政の対策を進めるためにも必要不可欠なものです。
 
都内で最もアスベスト救済法による認定者の多い大田区こそアスベスト調査を!
【質問③】
試行調査の根拠法であるアスベスト救済法を成立させた当時の環境大臣小池百合子氏が現在東京都知事になっていることを考えれば、この施行調査は、東京都として当然手を挙げるべき調査です。そこでうかがいます。宮寺の周辺住民を対象に始まったアスベスト検診ですが、環境省の石綿ばく露者の健康管理に係る施行調査を実施するなど、都内で最も環境被害の疑われる中皮腫の認定数が多い大田区としてアスベスト検診・調査を広げていくためにどのように取り組んでいきますか。

【答弁③】
区報やHPを使いアスベスト被害や検診について広く周知する
(国の施行調査をするとは答弁しませんでした)
 
増えるアスベスト使用建物の解体・改修と止まない違法工事によるアスベスト拡散
アスベストの使用は禁止になりましたが、過去に使用されたアスベストはまだ私たちの身の回りに存在しています。1970~90年代は年間約30万tのアスベストが輸入され、年間20万トン程度のアスベストが建築物に使用され、現在、これらが解体により排出されています。
平成28年に大田区に届け出られた解体件数は1249件。うちアスベスト含有建材が使用されていると届けられたのは、1/3にも満たない372件でした。
飛散防止策をとらずにアスベスト建材が解体され、建設リサイクル法により、リサイクル砂利として出回れば、アスベストは大気中を拡散し続けることになります。
近年は、東日本大震災、阪神淡路大震災など建物の倒壊で飛散したアスベストの被害も問題になってきています。
大田区でも、
梅田小学校の体育館用地にアスベスト建材が放置されていた、
下丸子の都営住宅天井に飛散性アスベストが使われていながら、飛散防止策がとられなかった、
池上のトーヨーボール解体の際に、十分なアスベスト調査が行われなかった、
大田区総合体育館建設現場の砂利にアスベスト建材が混入していた、など、ずさんな解体工事をあげればきりがありません。
 
区民の目に見えないリスクだから、気づいた大田区保険行政が取り組むべき
施行調査をすることは、認定者が都内で最も多い自治体としてまさに大田区保健行政が取り組むべき課題と言えます。
 アスベストは産出国で有害性が明らかになっていたにも関わらず、それを国民に知らせず、使い続けた国の責任を指摘する声もあります。目に見えないリスクだからこそ、気づいた行政には、被害を拡大させない責任があります。
 ここまでがアスベストの質問です。
以下、羽田空港飛行ルート変更の質問です。ご参照まで
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 そうした意味では、羽田空港の飛行ルート変更に伴う都心上空低空飛行の安全確保において、羽田空港立地自治体大田区が果たすべき役割もまた大きいものがあります。
 9月7日、8日成田空港に着陸した全日空の同じ航空機の同じ脱出用シューターを収納する胴体パネルが落下していたことがわかりました。
原因は、脱出用シューターを膨らませる高圧ガスが漏れていたからで、過去に、ガス漏れによるパネルの脱落は起きたことが無いそうです。
羽田空港の飛行ルート変更について国は安全策を重要視していて、特に、部品や氷などの落下物の問題については、点検する、ヒーターをつけるなどと言ってきました。
予測しうるリスクは対処することで、一定割合改善ができますがそれでも不安は払しょくされず、新飛行ルート廃止の声はやみません。しかし、今回のような予想しえない事象は、国も航空会社も対処することができません。
国の安全策は、こうしたこれまで起きたことの無い、予測しえない事象の安全確保はしていないことが明らかになったわけです。
現在、離着陸に東京湾を最大限に活用する「海から入って海へでる」、「モノレールより陸側は飛行しない」「密集市街地は、一定程度の高度を確保して飛ぶ」といった安全策がとられているのも、こうした予測しえない万が一に備えたリスク回避と言えますがこれを手放そうとしています。
そこでうかがいます。
・【質問④】
航空会社の整備方法など、安全確保策が明らかになるまで、飛行ルート変更は国に留保させるべきではないでしょうか。このまま大田区長は新飛行ルート案を認めますか。
【答弁④】
国が決めること 
大田区は、過去にリスク隠し?事実ならリスクは区民に知らせるべき
岩波書店の世界10月号の記事に、2005年のD滑走路の環境アセス準備書に大田区が「内陸部飛行ルートについて予測をし評価を行うべき」「深夜早朝の飛行について早期に説明すべき」と書かれていたが、当時区はその内容を区民に知られることを嫌い、非公開扱いにしていたという記述があります。仮にこれが事実なら大田区はリスクを区民から遠ざけるのではなく、広く公開し真摯に取り組むべきです。
そこでうかがいます。
【質問⑤】
今回の事故を踏まえ区民の命や安全を守るため、国の新飛行ルート案について、単に国に安全策を要請するだけでなく大田区長として何をしますか。
【答弁⑤】
国に求める