【動画】誰のための蒲蒲線?大田区民に蒲蒲線(新空港線)が必要ない理由 地方分権が隠れ蓑:減った公共事業が自治体へ

大田区議会 令和4年決算特別委員会(審査第4日) 款別質疑 都市整備費 奈須利江委員(フェア民)

 

 

 

 

この質問のために準備した原稿です。

 

フェアな民主主義 奈須りえです

新空港線(蒲蒲線)は、無ければ暮らしや仕事が成り立たないほどに、鉄道整備を求めている人の姿が見えません。

新空港線を整備する根拠となる「都市鉄道等利便増進法」の提案理由を調べたら「利用者の利便増進のため」と書かれていました。
ここでいう利便性とは速達性=速く着くということです。

今の便利で十分だ、これ以上速く着かなくて構わないと思っている人は、蒲蒲線は要らないと思うでしょう。

川越から羽田空港まで7分短縮、池袋から8分短縮、自由が丘から20分短縮、
多摩川から14分短縮
今より、速く着くようになると書かれています。

便利は悪くないけれど、14分の時間短縮のために区民の税金を317億円+出資金。国税・都税合わせれば、906億円も使うの、という問題だと思います。

しかも、多摩川から羽田空港まで14分速く着くようになっても、
蒲蒲線は、地下化しますから、

東急蒲田で降りる、JRに乗り換える区民はじめ乗降客は不便になります

9月27日のまちづくり環境委員会に報告された「仮称新空港線沿線まちづくり構想(案)」は、
・「多摩川線のどの駅にも停車しないことがないように
・「現行の多摩川線の運航計画から大幅な変更がないよう運行本数などの運航計画にも配慮し」

と書かれています。速達性を評価して認可されても、新空港線が多摩川線の駅に停まる確証の無いことや、ダイヤが変わって本数が減る可能性があることを大田区もわかっているということです。

そこでうかがいます。

①        新空港線は、多摩川線の駅に停車しなくても、多摩川線のダイヤが変わり本数が減っても、たとえ、これまで日常的に使ってきた多摩川線沿線などの区民が不便になっても、川越、池袋、自由が丘、多摩川から羽田空港までが早く着くようになれば、速達性が確保されたということで、鉄道等利便増進法での事業認可はされるのですか。事業における区民の利便性向上は、法的に(都市鉄道等利便増進法のしくみで)担保されていますか。

 

法案提出時の概要に速達性向上事業は、(既存の都市鉄道施設の間を連絡する新線の建設等を行うことにより、目的地到達までの時間短縮を図る事業)と書かれています。

これまで、多摩川以外の多摩川線沿線の駅が羽田空港まで早く着くことは一度も示されたことがありませんし、川越や池袋からくる人にとって、多摩川線沿線に停まると、逆に時間がかかりますから、多くの区民の利便性を考えた仕組みでは無いと思います。

京急連立立体の時のように知らなかったでは済まされません。

大田区民は不便になるのに、事業認可されてしまう蒲蒲線、新空港線は誰のためなのでしょう。

しかも、気になるのが、軌道の問題です。

東急・京急の線路幅の違いは、技術的に乗り越えるのが難しい問題ですが、今回、2期に分けて整備することにしたため、フリーゲージトレインの実現性が棚上げされたかたちです。

解決できなければ、相互直通運転は確保されず、速達性も後退し、新空港線の目的そのものが成り立ちませんが、このまま認可し工事が始まれば、見切り発信になる可能性もあります。

そこでうかがいます。

②.当初の提案では、新空港線(蒲蒲線)が同じホームの反対側に乗り入れ、乗り換える方法でした。軌道の幅の問題が技術上解決できなくても、東急・京急蒲田駅ほか同一ホームで乗り換える方法を採用すれば、速達性は確保されたことになり事業認可は有効ですか。

 

運輸政策研究所の鉄道整備等基礎調査「既存の都市鉄道ネットワークの改良による速達性向上施策に関する調査」には、

速達性向上施策の評価項目6つに

1.所要時間だけでなく、

2.迂回距離
3.需要規模:社会的必要性、
4.影響範囲:整備効果の広域性、
5.既存ストックの有効活用とともに
6.乗り換え抵抗という項目があります。

直通にならなくてもホームの反対側に乗り換えることが出来るようになれば、乗り換え抵抗が低くなって、速達性が確保されたと評価する可能性があるということです。

この調査は、大田区の「蒲田都市づくり推進会議」の副座長をつとめた屋井鉄雄 東京工業大学大学院教授が行ったものです。

そうなると、乗り換えや接続に時間が必要になり、多摩川から蒲田まで14分短縮と言っていますが、10分を切ることがあるかもしれません

多摩川線の駅に停車せず
多摩川線のダイヤが変わり本数が減っ

多摩川線沿線区民が不便になっても

新空港線が
直通ではなくホームの反対側に乗り換える方式でも、事業認可される可能性が高いのが新空港線という現実を説明したら、理解が深まり、新空港線蒲蒲線反対の声が大きくなるのではないでしょうか。

 

しかも気になるのが事業採算性です。

そこでうかがいます。

③新空港線は都市鉄道等利便増進法を使って行われる事業です。この法律を使っているのは、なぜですか。この法律を使って整備することの特徴と誰にとってどういうメリットがあるのか、区民、大田区、蒲蒲線の鉄道営業主体に分けてお答えください。

◉採算性が取れなかった蒲蒲線

過去の大田区議会の議論の中でも蒲蒲線は、地下鉄補助的な制度の考え方では採算性が取れないという共通認識でしたが、これが解消できたのが、2005年施行の都市鉄道等利便増進法の受益活用型上下分離方式という考え方です。大田区は、「蒲蒲線の整備を一つのモデルケースとしてできた法律」だと大田区議会の交通問題調査特別委員会で説明しています。

◉蒲蒲線をモデルに作った「都市鉄道等利便増進法」の事業メリット

国土交通省の当時の鉄道局都市鉄道課の濱勝俊課長は2007年春発行の運輸政策研究の「都市鉄道等利便増進法の活用による新たな都市鉄道政策の展開」と題したレポートで、


◉施設建設費用負担リスクは公的セクター

「受益活用型上下分離方式」は、従来にはない画期的なもの
施設整備の資本費負担まで営業事業者が抱え込まなくても良いというメリットがある。と言っています。

また、大田区は、平成16年交通問題調査特別委員会で法案の公設型の上下分離方式を「いわゆるインフラの部分は公的なセクターが建設費などの整備リスクを負っていく」と説明しています。

 

建設費などの整備リスクは、上下分離の下に位置づけられる大田区の第三セクターが負い、上に位置づけられる営業事業者は、たとえば蒲蒲線で増えた売り上げから、かかった利益を含めた経費をさし引いて残った分を使用料として支払えばよいので、リスクは、無い、あるいは、極めて低いのがこの受益型上下分離方式だと、国も大田区も説明しているのだと思います。

◉高い補助率・固定資産税非課税

単に地下鉄補助52%が補助率が66%に増え、国の補助率が都市鉄道関係では最も手厚いだけでなく、
トンネルに関わる固定資産税が非課税になるうえ、
「受益活用型上下分離方式」という新たな公共鉄道事業スキームの誕生により、採算のとれなかった事業者は参入可能になりますから、
運営事業者のメリットが大きいのです。

◉区民のメリットは多摩川から14分速く着く、でも317億円+資本金負担

一方、区民のメリットは、14分速く着くこと、しかも317億円も払います。これをメリットといるでしょうか。

これまでの議論の中でも、大田区負担をどうするかは、賛否を問わず大きな論点になっていると思います。区の答弁でも、財調算定する、都市計画交付金を使うなど、大田区の負担はできるだけ縮減させたいと答弁しています。

しかし、大田区が、縮減と言い、削減という言葉は決して使わないように、整備費は、増えこそすれ、減らす議論にはなりません。区は、都に財調算定を求めると言いますが、調整3税の配分割合は55.1%で固定されていますから、財調算定されても総額が増えるわけではありません。相対的に他区より交付額が増えるのか、大田区の交付額に蒲蒲線分が算定され、色のつかない一般財源が特定財源化されるのかわかりませんが、いずれにしても住民福祉に使える財源が減る可能性があるということです。

 

◉鉄道事業は大田区の仕事か

 

そもそも鉄道事業は、大田区の仕事ではありません。私は、蒲蒲線には反対ですが、大田区が新空港線をどうしても必要だと思うなら、その事業の性質からも、都区の関係からも、財調算定ではなく、東京都の大都市事務で行うべき事業だと思います。

東京都から部長をお招きしているわけですし。

◉新空港線を名目に始まるまちづくり構想という土木建設工事

財源の問題と言えば、もう一つ気になるのが、新空港線のまちづくり構想(案)です。新空港線の経路ではない池上線や京急線、東京モノレールまで「沿線のまちづくり構想」の対象になっています。

 

実際、都区合意のあとの区議会の最初の区長あいさつで、区長は、新空港線について「区のさらなる発展、活性化のためには、この新空港線整備を絶好の機会と捉え、それぞれの地域特性を活かした沿線のまちづくりを連動して進めることも重要であります。新空港線の整備を契機とし、区全体がより一層魅力的なまちになるよう、蒲田など沿線のまちづくりに精力的に取り組んでまいります。」と発言しています。区長が何より一番やりたかったのが、新空港線の整備をきっけかとした蒲田など沿線のまちづくりだったという本音が出たのが、この挨拶だったと思います。

そうした意味では、さほど速くなるわけでもなく、直通になるとも限らない、新空港線整備の目的は、鉄道を通すことではなく、1360億円かけて鉄道を整備することと、このまちづくりなのかもしれません。

そこでうかがいます。

④.空港線は総区間3.1㎞の約1/2の1期の線路の工事費が1360億円だということや国・都・区の負担割合はわかっていますが、2期工事分も、駅舎も、第三セクターが負担すべき大規模な維持管理費も、明らかになっていません。そのうえ、新空港線のまちづくり構想(案)の財源として、いくらくらいを想定しているかも明らかにしていません。

基金に積み立てた88億円では到底足りない財源は、どう確保しますか。区民生活への影響を考えていますか?

蒲蒲線(新空港線)は鉄道整備に加え、まちづくりでさらに莫大な税負担を強いられることになります。

今年の決算で、大田区の特別区民税収が減りました。10年ぶりだそうですが、この間のコロナや構造改革、ふるさと納税などの影響を考えれば、すぐに改善するとは考えにくい状況です。

監査報告では、納税義務者数が減ったため税収が減ったと報告していますが、4月1日付でも7月1日付で比較すると、昨年と今年の納税義務者数は429,330人から430,351人と1,021人増えていました。3月31日現在で比較した数字だと減っているそうですが、7月1日時点でみれば、納税義務者数が増えて、減収なので、大変なことが起きていると感じました。ふるさと納税が前年に比べ大きく増えたこともありますが、コロナで減った所得が元に戻っていないことや、燃料費や物価の上昇、食もエネルギーも生活必需品はほぼ輸入依存する構造に変わり、円安の影響も受けやすく、区民生活は次第に厳しくなっていると思います。こういう時代だからこそ、大田区は、区民から集めた税金を使い、蒲蒲線では無く、お金では買えない安心を社会保障のしくみとして区民に提供すべきだと思います。

 

そこでうかがいます。

 

⑤.新空港線積立基金には88億4千万円が積み立てられています。この基金は、どうやってためたものですか。この基金は、新空港線整備とまちづくりの費用に使うべきものでしょうか。

 

◉社会保障の増税などで貯めた税金が、蒲蒲線や蒲蒲線のまちづくりと称した土木建設事業に

 2000年を超えたあたりから、大田区の基金が増えてきています。2000年ころは150億円程度でしたが、令和3年度決算で、1200億円を超えています。どうして基金をこんなに積み立てられたか、と言えば、この間に、社会保障のためということで、増税などが繰り返され税収が増えたことが大きな要因だと私は考えています。中でも、保育は大田区の責任になりましたが、民営化すれば、国が補助したので、大田区は民営化を進め、保育に使うための増収分を確保することができました。

住民税の定率化による増税、財調交付金割合が、52%から55%。消費税増税。地方分権ではありませんが、定率減税の廃止でも税収増になりました。ほかにも、配偶者控除等見直し、老齢者非課税措置廃止、扶養控除廃止、住民税均等割500円アップ。

社会保障のための増税等で、区民は負担が増えましたが、特別区は生活保護や保育は国や都の財源割合が大きく、介護も国保も国や特別区の枠組みで動いていて、区独自のセーフティネットを構築しにくい仕組みで、実際に国から地方に移譲された税源はその額ほどに社会保障寺院使われなかったわけです。
こうして増えた歳入の一部をため、しかも、羽田空港跡地に165億円など一般会計に繰り入れて使ってもいま1200億円あるわけです。

◉収入が多くても手取りが少ない東京都にくらす大田区民のために税金ですべきことは?

昨年1月の国交省の東京一極集中に関する懇談会」のとりまとめに東京都の可処分所得は全世帯平均では全国3位だが、上位40%~60%では12位というデータがあります。物価が高いのに所得はそれ程多くない。基礎支出=「食料費」+「(特掲)家賃+持ち家の帰属家賃」+「光熱水道費」。は全国で一番高いので手取りから基礎支出を引いた残りは

下から6番目でした。

蒲蒲線を作れば、税負担が伴うだけでなく、そこからさらに、運賃を負担することになり、マクロ的に見ればさらに手取りが減る構図です。

この間、納税義務者数が増える以上に税収が増え、一人あたりの負担が大きくなってきました。手取りがへってきていることに、もっと区は注目すべきです。そうした区民生活の変化がわかっていれば、税金の使い方もおのずと見えてくるのではないでしょうか。

負担感が大きくなっている区民の税金を、どうしても必要なわけではない新空港線とそのまちづくりと称した土木・建設工事のために使うべきではありません。

◉鉄道や空港整備は、基礎自治体の仕事か
 ~地方分権が国の公共事業の隠れ蓑:減った公共事業は大田区等へ~

 

かつての鉄道法は、事業や事業の供給輸送力が輸送需要に対し適切で均衡がとれていることを求めましたが、改正し、都市鉄道利便増進法という法律を作ることで、需要が無くても早く着く、便利になるといったことで整備を許すようになってしまっています。

しかし、できるからと言って蒲蒲線の整備をすれば、運営事業者やまちづくりを行う事業者は、ほぼリスクなく利益をあげることができますが、区民はできた鉄道施設整備費を今後半永久的に税で負い続けなければなりません。

この鉄道だけでなく、上下水道、公園。公の施設、シェアサイクルなど様々な施設や指定管理者制度としても広がってきています。

この私たちの公の財産を営利目的に使う上下分離方式に警鐘を鳴らし質問を終わります。