リニア大深度地下工事着工はあり得ない【14の疑問 その3:調査掘進?工事着工の既成事実化ではないですか?
JR東海は、直近の説明会から「調査掘進」という言葉を使い始めていますが、そもそもシールドトンネル工事は、「初期掘進」してから本掘進することになっています。(トンネル標準示方書)
工事に詳しい方に伺ったら、シールドマシンで掘った土を立坑から出すために必要な工事で、必ず行う工事だそうです。
調査掘進と言いますが、工事着工の規制事実化では無いでしょうか。
仮に初期掘進の名称を変えただけなら、あまりに住民をバカにしていますし、違うなら、そこも説明すべきです。
今回の説明会で、JR東海は新たに「調査掘進」という言葉を使った300m程度の掘削を行い、その後説明会を開催してから本掘進へ進むと言い始めました。
「調査掘進」とは、いかにも、調査して確認し、問題があれば工事はしない、と受け取れる名称ですが、そもそも、JR東海は、振動と地盤や地中埋設物との関係について問題視していないので、調査の基準がわかりません。
シールドマシンから、どの地盤等で、どの程度の距離からの、どの程度の振動が加わると、地表や家屋、建築物、上下水道、ガス、地下ケーブル、鉄道ほか地中埋設物に影響があるのか、調査するなら、掘り始めで行うには、条件が制約されすぎています。
シールドトンネル工事は、初期掘進と本掘進に分けていて、掘った土を排出する設備をトンネル内に設置するまでの区間を初期掘進、それ以降を本掘進と呼んでいます。(トンネル標準示方書)
以下、トンネル標準示方書からの抜粋です。
「一般に初期掘進とは、シールドが立坑を発進してから、シールドの運転に必要な後続設備がトンネル構内に入るまでをいう。初期掘進中は、所定の計画線上を正確に進み、また周辺の路面や近接構造物への影響を最小限に抑えるため、シールド掘進時のデータや地盤沈下等の計測結果等を収集し、シールドの運動特性の把握およびカッターチャンバー内の土圧、泥酔土圧等の管理値や、裏込め注入圧、注入量の設定値等が適切であるかを確認する必要がある。また、作業員の機械の取り扱いに関して十分に習熟させることも必要である。」
これを読むと、シールドの運転に必要な後続設備を入れるために必要な区間で、シールド工事に必要なデータ収集して確認することが求められていることがわかります。
適切であるかを確認する必要がある、と書かれていますから、必ず行わなければならない工程なのではないでしょうか。
それを、初期掘進の区間を利用して、さらなる安全対策のために何か行うと言った書き方ではなく、調査掘進としているのは、別のことを意味するのでしょうか。
今回の説明会における「調査掘進」と「初期掘進」にどのような違いがあるのか、明らかにすべきだと思います。
外環道の事故の発生にかかわららず、シールドトンネル工事において、行うべき必要な作業であれば、あえて、今回、新たに、住民説明会で取り上げたのはなぜなのでしょう。
逆に、不誠実に感じてしまうのは、私だけでしょうか。
トンネル標準示方書の初期掘進の説明の末尾に、作業員の機械の取り扱いを十分に習熟させる必要について書かれていて、気になりました。
作業員の機械の取り扱いに関して十分に習熟させることも必要
まるで、この初期掘進が、機械のの取り扱いの練習区間のように取れるからです。
いま、日本全体が、人件費を減らし、利益重視の構造に変わってきています。
安全は、技術ではなく、人が支えるものだと思います。
立派な「シールドマシン」という機械があっても、取り扱う作業員が未熟なら、工事の安全は守れないと思います。
実は、この熟練した作業員がいるかどうか、も大きいのではないかと思います。