ストップリニア訴訟の中で、昨年末、懸樋哲夫さんが、電磁ストップリニア訴訟の中で、意見陳述なさいました。

「リニア市民ネット」ブログには掲載されていましたが、5月31日にお亡くなりになりましたので、あらためて故人をしのぶ意味も込めて、掲載いたします。

https://stoplinear.hatenablog.com/entry/2019/12/24/225901

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意   見   陳   述
2019(令和元)年12月20日
東京地方裁判所民事第3部B②係 御中
              原告   懸 樋 哲 夫    印
原告の懸樋 哲夫と申します。
 準備書面29を要約して説明させていただきます。
 JR東海は磁界に関する情報を隠し、測定値を明らかにせず、安全性の説明をしないままリニアを走らせようとしています。また磁界に関する国際ガイドラインを定められているICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)の適用についてその元にあるWHO(世界保健機構)の勧告を意図的に都合の良いように解釈し、リニアの磁界のリスクをないことにしていることです。

 磁界のリスクについては、国際がん研究機関・IARCが、低い強度(0.3-0.4μT 以上)の商用周波の磁界への毎日の慢性的ばく露が小児白血病のリスク上昇と関連していることを、疫学研究は一貫して見出している。国際がん研究機関(IARC)は、そのような磁界を「発がん性があるかもしれない」(2B)と分類しています。

 この事実はJR東海の説明資料にも表れていますが、その後の解説で「磁界と小児白血病の因果関係は確立されておらず・・・・・>(環10-3-14)とし、この事実を消そうとしています。

 IARC(国際がん研究機関)がその可能性を指摘している磁界の発がん性の可能性のレベルは0.4マイクロテスラという低い数値です。これはIARCが2001年6月に報道発表しています。

 そしてリニア実験線の測定値は数値は静磁界で0.43mT(430μT)とあるのみです。ここで周波数が明らかにされていないことが問題になります。

 これを仮に50ヘルツの変動磁界でも同じ強さだとすればICNIRPの基準は200μTなので、甘いICNIRPの基準さえ倍以上超えてしまっている、と見えます。
 これが事実であるかどうか、JR東海の説明では周波数が隠されているので不明なのです。
 これらの事実から、JR東海はリニア新幹線走行の安全性についてその論拠を示さず、説明をしていない、ということになります。
 
 次にWHOも勧めている予防原則についてです。
 1 予防原則について
環13-4は世界保健機構(WHO)の報告で、慢性曝露について小児白血病に関する因果関係は限定的で、その他の健康影響は証明されていないと結論付ける。継続的研究が必要であり、適切な曝露低減対策を取るべきで、恣意的に低い曝露制限値を採用する政策は是認されない。という引用がされています。

 しかしこの引用は部分的であり、WHOの勧告を表わすことについて実に不正確なものであり、ここだけを引用して、以下の記述を書かないことは勧告の趣旨を逆に解釈するものです。WHOは同じ勧告の中で以下のように記述しています。

・ 電力の健康、社会、経済的利益が侵されないという条件の下で、曝露を減らすための極めて低コストの予防的措置を講じることは合理的であり、正当化される。

・ 施策立案者、地域計画担当者、製造業者は、新たな施設の建設、また家電製品を含む新しい設備機器の設計に際しては、低コストでの予防的措置を講じるべきである。

 この記載が、「結論」であり、WHOが「予防原則」の適用を勧めているものです。

 この<新たな施設の建設、また家電製品を含む新しい設備機器>とはリニア新幹線の技術と建設にあてはまるものです。

 『レイト・レッスンズ 14の事例から学ぶ予防原則』は、2001年に、アスベスト、放射線、オゾン層、などの事例から「予防原則」の必要性を明らかにしたレポートで、いずれの事例も早期に警告はあったものが、「証拠はない」として無視し使用を継続したために被害を広げた、という共通点があり、「十分な証拠はそろっていない」などの主張よりも「疑いがあれば避ける」という『予防原則』が提唱されたものでした。水俣病、福島原発事故についても、教訓を学ばなかった事例として挙げられています。

 この考え方は、1992年のブラジル環境サミットの第15原則で「環境を保護するため、予防的方策は、各国により、その能力に応じて広く適用されなければならない。深刻な、あるいは不可逆的な被害のおそれがある場合には、完全な科学的確実性の欠如が、環境悪化を防止するための費用対効果の大きい対策を延期する理由として使われてはならない。」と宣言されたことに由来します。すなわち、環境に取り返しのつかない被害が生じるおそれがある場合には、完全に科学的に被害発生の確実性が証明されなくとも、指摘されているリニアの磁界リスクがあることについて高い予防的方策をしなければならないということなのです。

 このWHOの勧告を受けて日本では経済産業省が基準値を作りました。環境省は「予防原則は尊重する」と言っています。
 

 国土交通省はこの「予防原則」を率先して実行し、JR東海を指導するべき立場にあることを裁判所は確認くださいますようお願いします。