【水道事業を民営化しやすくする】改正水道法案の問題点 ~参議院で継続審査中~

衆議院を通過した改正水道法案が参議院で継続審議になっています。チラシを作ってアピールしたいという方のリクエストにお応えして、法律がかわるとどこが問題か簡単にお知らせします。


言われている水道問題の課題は、

水道インフラが老朽化していて、更新の時期を迎えていること。
また、節水が効果を発揮したことや、高齢化、人口減少で、水の需要が減っていること。

そのため、かかる費用が増えて、収入が減ることから、民営化すれば、解決できるようなイメージが蔓延しています。

しかし、官が行っても民営化しても課題は課題で、そのまま残ります。
しかも、民営化というのは、営利企業が、利益を稼ぐために水道事業に参入する、と言うことです。

老朽化した施設の更新の時期に民営化すると、公営なら低利の地方債を発行して更新できる、総額126憶円の水道インフラを、民間資金で更新することになるので、高い投資利益を民間投資家に支払わなければなりません。
民間だと、銀行に借りるか、機関投資家の資金を使うので、利息が高いのです。

当然、民間投資家は、126兆円の投資利益をねらって、水道事業の運営権を得ようとしています。

今の水道法で民営化すると、参入事業者には、いくつかのリスクがあります。

①災害のリスク

②自治体議会で反対されるリスク

③インフラ更新しようとしても、水道料金だけで更新しようとすると更新できない、利益を少ししか稼げないリスク

そのため、今回の水道法の改正では、

①(大きな、もしかしたらほとんどの)災害リスクを官に

②土地や施設の所有を官にのこしたまま、運営権を民営化できるようにしたうえ(コンセッション)、民間に施設整備補助金を給付できるようにする

③運営権を民営化する際に、PFIという手法を使うと自治体の首長が決めることができるようPFI法を既に改正している。仮に、自治体の首長がPFIをしないとしても、内閣総理大臣が、助言勧告することで、自治体の首長にPFIを半ば強制できる。

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今のままの水道法では、民営化されても、リスクが大きく、利益率も小さいことから手をあげる事業者はいないけれど、法改正することにより、リスクなくより大きな利益を稼げるうえ、自治体議会や首長が民営化に反対しても、国主導で民営化をすすめることができるようにする。

これが、国が行おうとしている水道法改正案の内容です。事業者にとっては改正ですが、水を使う住民にとっては、改悪ですね。

これまで、水道料金を上げないために、職員採用を抑えてきていて、多くの自治体の水道事業はこのまま事業継続することが難しくなっています。

これを民営化して職員人件費を抑えることで乗り切ろうというのが、民営化における一つの課題です。

だとして、それが、根本的な解決方法になるでしょうか。

そもそも、そうした問題が、議会と行政内部にとどめられ、地域住民と問題共有できてこなかったことにこそ問題があるのではないでしょうか。

人件費の抑制には限界があります。

人件費を下げるということは、水道事業現場における公務員という仕事が減り、あるいはなくなり、低賃金労働者を増やすことになります。

水道事業をどのように運営するかは、住民の命の水をどうするか、という重要な問題です。

水道事業は企業会計といって、かかった経費を水道料金で賄うしくみです。
本当に必要な経費なら、そして、低所得者対策などが講じられているなら、住民の理解を得るのをなぜ恐れるのでしょう。
あるいは、本当に値上げが厳しいなら、総括原価方式の企業会計に、水道料金抑制のための制度を講じることもできるはずです。

私は、
水道料金を値上げすることは、住民の理解を得る努力を怠り、議員や首長の地位を危うくするから、と問題を先送りしてきた議会や行政の体質にこそ問題があると思います。

そして、その同じ体質、あるいは、考え方で提案されているのが民営化です。

私たちの水を、私たちでどうするか、考える非常に重要な時期を迎えています。