たちが、こんなに一所懸命、毎日の暮らしに向き合っているのに、忙しく働いているのに、なぜ、精神的にも経済的にも暮らしは豊かにならないのでしょうか。奈須りえは、政治にその大きな責任があると考えています。平成28年度予算、奈須りえは、このように評価しました。
大田区議会 会派別の賛否一覧表(クリックすると大きくなります)


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フェアな民主主義奈須りえです。

第一号議案 平成28年度大田区一般会計予算

第二号議案平成28年度大田区国民健康保険事業特別会計予算

第三号議案平成28年度大田区後期高齢者医療特別会計予算

第四号議案平成28年度大田区介護保険特別会計予算につききまして、反対の立場から討論いたします。

失われた10年という言葉があります。時期は微妙に前後していますが、おおよそ、バブル崩壊以降2002年までの約10年間の景気低迷期をさしてこのように言うようです。

ところが最近になって、失われた20年というようになりました。 2008年のサブプライムローンに端を発したリーマンショックなどで景気は大きく落ち込みましたから、区民の感覚からみれば失われた20年にさほどの違和感はないのかもしれません。

しかし、一方で、2002年2月から2009年3月までの86ヵ月間は、低率ではありましたがGDPは増え続け、輸出が好調で雇用が増え、戦後最長のいざなみ景気と呼ばれる好況期と位置付けられています。この2000年代半ばに金融機関や企業の不良債権問題やバランスシート問題も解決しています。

独立行政法人経済産業研究所の深尾京司 (ファカルティフェロー)  は、「失われた20年の構造」のなかで、失われた20年の中でも、大企業は、人件費を抑制する目的で人員を子会社に移すことが盛んに行われたことなどにより、5年で全要素生産性を向上させるなど、失われた20年ではなく、失われた5年であったと評価しています。

この間の経済規模の拡大は、女性や外国人という主に低コストの労働力の増加に支えられるとともに、正規雇用が低賃金化、非正規化することでコストを減らし、様々な規制緩和により特に大企業を中心に利益を拡大してきたということです。

一方に、失われた20年という言葉があり、同時期にいざなみ景気という戦後最長の好況期が存在する。

一口に「経済」と言っても、そこには、働き支えるものの経済と、そこから利益をあげる経営者・投資家の経済という二つの違う意味があることを意識し政策立案、予算承認に関わらなければならない時代になっているということです。

これは、なんとなくではなく、会計基準の改正含め政策により変更された結果、所得の分配のありかたがかわったことによりおきている問題です。貧困も格差の問題もここから生じています。

平成28年度予算の評価においても、こうした社会・経済状況の変化をふまえたうえで、基礎的自治体の政治、行政がいま何をすべきかという視点で判断すべきです。

地方自治体の長の最も大きな権限の一つは予算編成権です。

平成28年度予算、2,573億6,425万7千円は、前年の平成27年度予算に比べ2.9%増、地方分権が大きく動く直前に編成した平成15年度予算1,861億363万1千円に比べ712億6062万6千円と約38.3%も増えています。

区長の権限は、この増えた予算の金額から見れば、大幅に増大したと言えるでしょう。

同時に、大田区議会の予算承認権は、より重大な責務を担うようになっていると言えます。

この増えた予算は、国、東京都、債務など様々な形ではありますが、大田区民の負担で支えられています。

約4割増えた大田区の予算は、区民の4割増しの負担で支えられているということです。

分配の構図がかわり、個人所得は縮小していますが、住民税や消費税など個人に課税される税率は上がっていて、区民にとっての負担感は非常に大きくなっています。

同時に、特に大企業やグローバル企業などは、法人減税や規制緩和などにより負担が軽減されています。

今回の定例会、予算特別委員会を通じ、私は、地方分権とはなんだったのか、という視点で一般質問、款別質疑させていただきました。

住民の生活課題を解決するために行われたはずの地方分権でしたが、実際に進められた地方分権は、政界・財界が望み、小泉改革において、典型的に現れたように、「官から民へ」、そして「国から地方へ」という、行政改革の一手段として位置づけられたものでしかありませんでした。

結果として、大田区の子育て、介護、障がい、教育など、社会保障の責任は大きくなりましたが、こうした社会保障サービスを中心に民営化や民間委託が進み、公共サービスには非正規雇用や低賃金労働が広がっています。

それでは、所得の分配の構図がかわり、しかも、そこからの個人課税の負担を大きくして集めた大田区の歳入は、どう使うべきでしょうか。国会決議までして地方分権が目指した区民の生活課題を解決できる生活重視の区政をどう実現すればよいでしょうか。

本年度の大田区の予算編成のスローガンと言ったら良いのでしょうか

「暮らしてよし、訪れてよし、地域力あふれる国際都市おおた」の実現をめざし積極予算を編成

や、
4つの【重点課題】

○ 少子高齢化の進行等、人口構成の変化への対応

○ 防災力・防犯力を強化し、安全・安心なまちづくり

○ 東京オリンピック・パラリンピック開催を契機とする「国際都市おおた」の実現、次世代に「夢と遺産(レガシー)」を残す取り組み

○ 「国家戦略特別区域」の仕組みを最大限活用した取り組み

をみても総花的で、大田区がどのような区政を目指しているのか伝わってきません。

「積極予算を編成」と言いますが、支える分配の構図からみた区民のおかれている所得の縮小と負担の増大によって支えられている歳入の増加であるという認識はあるのでしょうか。

所得と課税など、分配の構図に問題があるなら、社会保障基盤を安定させることこそが地方分権で社会保障の責任主体となった大田区の責務であり、最優先課題です。

ところが、さらに税を使って不公平を助長しているのが今の、そして、本年度の大田区の予算編成です。

○ 少子高齢化の進行等、人口構成の変化への対応と言いますが、基礎的自治体が行うべきは、誰もが安く安心して通わせることのできる保育環境を整えることです。

ところが、民営化や民間委託が進んだにもかかわらず、保育サービス供給量は今年も圧倒的に足りず、認可保育所と認可外保育所の保育料の不公平を改善する方策もとられていません。

しかも、大田区は現在、保育料検討委員会を開催していますが、議論の視点は、認可保育所の保育サービスを受ける保護者間の公平性や保育サービスを利用している家庭と利用していない家庭における「公平性」や「受益と負担の関係性」に矮小化されてしまい、自治事務となった保育における大田区の責任の在り方、サービス供給量の不足の原因の所在などは放置されています。

一方で、保育が自治事務になったことで自由に使える一般財源は増えましたが、それら一般財源は、大田区が責任の主体である社会保障以外の分野への投入が目立ちます。

 

予算全般に言えることですが、社会保障分野においても建物改修改築や都市基盤整備、物品購入の予算が目立ち、肝心のサービス供給量充足の視点での予算投入は不十分です。

労働の分配から、賃金に占める割合からみても相当に厳しい負担を区民に強いながら、自助共助と行政が区民に強いるのは虫が良すぎる話ではないでしょうか。自助、共助は区民が自主的に取り組むべきことで、税金投入の優先順位をかえ、社会保障に十分に税金投入しない政府と自治体が区民にいう言葉ではありません。

障がいの現場では、単価が安いことが大きな要因と思われますが、ホームヘルプサービスを受けたくても、ヘルパーを確保できず困っている方の話をよく聞くようになりました。民営化のしくみを使って形をかえた支給抑制とみることもできます。

税と民営化による認証保育料や指定管理者制度下の利用料金など私費部分も含めれば、日本の税や利用料負担は先進国の中でも相当に大きくなっています。

ここが整わないなかで、予算は、

○ 防災力・防犯力を強化し、安全・安心なまちづくり

○ 東京オリンピック・パラリンピック開催を契機とする「国際都市おおた」の実現、次世代に「夢と遺産(レガシー)」を残す取り組み

に投入されていきます。

いまの所得の分配の構図の中、社会保障サービス供給を区民に我慢していただいてまで、羽田跡地や蒲蒲線や開発などは取り組むべき課題でしょうか。

一方、大田区は公共施設の老朽化という問題もかかえています。

ここにきて大田区は、公共施設整備計画があるにもかかわらず、整備の手法にまで踏み込んだ「公共施設白書」を作り、そのうえ、コンサルが書いたのでしょうか。児童館の売却とまである「大田区公共施設適正配置方針案」を配布しました。

平成23年3月に策定した「大田区都市計画マスタープラン」があるのに「仮称大田都市づくりビジョン」を策定しようとしています。理由は、大震災の発生やオリンピックやパラリンピックの開催が決定し、空港跡地や空港臨海部のまちづくりが進展するなど、区の内外を取り巻く情勢が大きく変化したからだそうです。

これらは、格差と貧困が拡大する現状において行うべきかという「優先順位」の点に加え、予算編成を左右するという意味で問題です。

計画に盛り込むことは、実質予算承認とおなじような意味合いを持つからです。

私は、こうした、各種計画が予算のお墨付きとなり、いわば、予算の事前承認のような形になっていることを問題視しています。

しかも、これらの計画は、誰の声で作られているのでしょうか。

大田区の職員はもはや計画策定の中心を担っているわけではなく、シンクタンクに丸投げしているのが、実態ではないでしょうか。

シンクタンクの多くは金融系列企業です。投資のための経済政策を進める政府の方針を大田区において、投資をお仕事とするシンクタンクが計画に落とし込む。これが、日本の財政赤字1100兆円の問題を先送りしている要因になってはいないでしょうか。いまや、利払いだけで年10兆円にもなっています。毎年発行する国債約40兆円の1/4は利息のために発行しているのです。

そのうえ、規制緩和の意思決定を大きく民間企業にゆだねている

○ 「国家戦略特別区域」の仕組みを最大限活用した取り組み

を進めるのが本年度予算です。

地方分権と言いながら、予算規模は大きくなりましたが、増えた一般財源は、一過性のイベントと国や東京都の補助金頼みの事業により多く投入され、予算編成の大きな流れは、計画策定によりシンクタンクなどにゆだねられ、国家戦略特区で規制緩和の発意や意思決定を民間企業にゆだねているのが今の大田区ではないでしょうか。

いま、区民生活重視のための地方分権とは全く逆に、中央集権で、実質の決定権は企業へと移行しています。

大田区は、この国の流れにのるのではなく、区民の生活を重視した自治体の責務に立ち返るべきです。

人・物の関所となっている国際空港のある大田区は地理的・機能的要素もあり、多くの課題を抱えていますが、希望も失っていません。特に、今回、民泊条例で、大田区が講じた一人当たり面積基準や、消防との協議、ごみ対策など、区民と宿泊者を守るためのガイドラインの策定という自主的な取り組みをおこなったことは良い仕事だったと思います。

企業の真似をするなら、企業が行えばよいのであり、行政の存在価値はなくなります。

労働分配の問題も、格差の是正も、解決するのは簡単なことではありません。

しかし、放置すれば状況はさらに悪化します。

いま大田区がなすべきは、雇用の流動化にさらに拍車をかけ、ワーキングプア創出に加担する安易な民営化や民間委託をみなおすとともに、あるべき公の役割を明確にし、基礎的自治体の責務である社会保障の充足や、秩序ある経済活動を推進させること、大田区の町工場や中小企業、個人事業主など、一人一人の暮らしを守ることに真摯に取り組むことであると考えます。

平成28年度各会計予算は、それにはほど遠く、反対いたします。