2022年度国民健康保険料にみるコロナの感染防止策が与える影響

ちょっと古いのですが、アップしてなかったのであらためて。

コロナの診療控えで2020年は医療費が大幅に減りました。

ところが、2021年度は、診療控えで重症化した方たちがいたのか、原因ははっきりしませんが、診療費は大幅な増になりました。

この増が2022年度の国民健康保険料負担を大きくしています。

ところが、診療費全体でみると、それでも、コロナ前の増え方に比べると、減っています。   

「コロナで落ち込んだ医療費減は、過去に無いものであることから、どうなるかわからないというのが正直なところ、そうは言っても完全にコロナが無かった場合の水準まで戻るというのは少し考えにくいのではないか」

という、厚労省の課長の分析からの影響をもっと深刻に受け止めるべきだと思います。

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23区の国民健康保険について、

2020年度はコロナの感染拡大が始まった最初の年であり、多くの方たちが未知のウイルスだから病院で感染しないようにと診療控えが起きました。

これによって23区の診療費がかつてないほどの大きな額で減り、特別区全体で502億円の減になりました。

ところが、翌年2021年度は、手術など控えていた分が上乗せされたり、診療控えで重症化した方たちがいたのか、ここの原因ははっきりとは分かりませんが、激減した2020年に比べ、診療費が604億円の大幅な増になりました。

23区として増えた604億円のうちのコロナウイルスのための106億円は、
保険料に影響しないよう担保したものの、

保険料算定時点では、急激な負担の増加に対し、
負担を平準化する仕組みがないため、

2022年度の保険料が大幅に上がっています。

令和3年(2021年)に急激な保険料負担の増に対応し、
基金をつくって投入できるよう改正しましたが、
2022年度の保険料算定に使えないそうです。

コロナの受診控えや、その後の受診増による負担増は
やむを得ない部分があります。

しかし、急激な診療費総額の増減に伴う保険料への影響は、

激減した2020年度の診療費が、ある程度明らかになった時点で
想定できた部分もあり、

制度改正を2022年度保険料算定に
間に合わせるべきだったと思います。

コロナに伴う受診料は過去にない大きな減と増であり、
また、区独自の財政投入も考えるべきだったと思います。

一方で、新たな制度として作った激変緩和に投入する基金への積立ては、
あくまで保険会計の中でのことであり、

そもそもの国民健康保険の被保険者数が少なくなってきていて、
働く日数などが少ない方たちが多いなど、置かれている状況を考えれば、
制度の安定的な持続のためにも公費の投入を前提とした制度改正が必要だと思います。

しかも、2020年度より激増したというものの
2021年度の増加分は、
コロナのない年度との比較では、通常の伸び率よりも低く、
医療費・患者数はコロナ流行前の水準にすら戻っていないと
社会保障審議会医療保険部会で報告されています。

厚労省の課長は、コロナの医療費が激減したことが分かった直後に
以下のように発言しています。

「コロナで落ち込んだ医療費減は、過去に無いものであることから、どうなるかわからないというのが正直なところ、そうは言っても完全にコロナが無かった場合の水準まで戻るというのは少し考えにくいのではないか」

無駄な医療費は削減されるべきですが、医療はどうあるべきかがすっぽり抜け落ち、「接触を避ける」視点だけで医療の在り方が変えられてきています。

日本が世界に誇る医療のフリーアクセスや、国民皆保険制度の前提が議論無く、コロナで一気に大きく変わろうとしているのも問題です。

タブレット診療や医薬品の処方などは進みますが、表情を診て、聴診器を当て、患部に触れ反応をみるから見えることがあると思います