大田区の産業政策「工場アパート条例改正」で考えること
大田区は、町工場がなくなり住宅に変わっていくうちに、町工場が地域の迷惑施設のようになり、操業が難しくなった工業者に工場を提供するために工場アパートを作り、運営しています。
この工場アパートの改正条例議案が出ましたが、
・工場アパートは、市場価格より安い家賃で入れるにも関わらず、希望したすべての事業者が入れるわけでは無い。
にもかかわらず、入居期間が近づくたびに、期間延長を繰り返してきたこと。
・その、一部の工業者に場所を安く提供するだけでは、町工場の減少の歯止めにはならないこと。
・町工場の減少は、グローバル化に伴う産業構造の変化によるところが大きいにも関わらず、大田区は、グローバル化を推し進める政策、タイへの工業者の進出を行っている。
・本質的な産業支援策、経済政策とは言えない工場アパート政策であるにも関わらず、区民の土地と税金で作った雇用アパートを民間事業者に運営させ、民間事業者の利益のために区民の財産を使おうとしている。
などの理由から、用例改正に反対しました。
以下、全文です。
大田区が、中小企業支援策として工場アパートを設置してから、今日までの間に、入居できる期間や保証人の在り方、企業規模や入所できる事業者の本社の所在地など、様々な規定が改正されてきました。
そして、今回、また、この改正により入所の期間や一次利用などの規定を変えようとしています。
また、これらの工場アパートを民営化しようとしています。
当初大田区は、創業時の経営基盤がぜい弱な中小企業に対し、迷惑施設とも位置付けられている工場を安い賃料で提供することで一定期間支援して、自社工場を取得する、あるいは、借りるなどできるよう力をつけていただこうとして工場アパートを作ったと理解しています。
大田区は、議案上程時の質疑にこたえ、この仕組みを作り、工場アパートを退出し区内で操業する企業が多数いて、この制度で区内企業は力をつけることができたと評価しています。
しかし、総体でみれば、この間の大田区の町工場の数は減っていて、必ずしも大田区の産業が振興してきているとは言えない状況です。
大田区はその時々の支援を行ってきたと答弁していますが、国がグローバル化で、国内産業を海外移転させることにも大田区は追随し、区内産業の空洞化、海外移転のお手伝いまでしてしまいました。
結果、区内の雇用は悪化し、廃業した町工場の分、区内循環経済は縮小しています。
2019年12月4日、国会で日米の自由貿易協定FTAが承認されましたが、さらに、この自由貿易協定により、日本の産業構造は、また、変わっていくでしょう。
本来、区内産業を守ることで、雇用を守り、そこから消費を守り、区内経済を守るのが大田区の仕事だと思います。この国のグローバル政策を無批判に受け入れることなく、明確な方針をもって産業施策を進めるべきです。
しかも、大田区は、入所の期間の延長を繰り返し、いったん入られた方たちと、入れていない方たちとの不公平が続いています。
今回、20年の期間をさらに延長し、いったん入れた事業者にとっては良いですが、待っても待っても入れない事業者をつくることになります。
今回、条例改正してもこの不公平がなくなる確証は得られず反対です。
そのうえ、大田区は、民営化するから受け皿が増えて公平だと言っていますが、すべての工場を大田区の土地などで運営する工場アパートに入れるつもりでしょうか。そもそもの産業施策の全体像も見えません。
工場アパート事業を公の土地で行い、一部の投資家が利益をあげるのも問題で反対といたします。