地方議員年金廃止がもたらす地方自治体財政への影響

議員年金の問題は、生活者ネットワークが「議員特権」のひとつとして長年にわたり取り組んできた問題のひとつです。

市町村合併に伴う議員数減少からの年金収入の減少とそれに伴う退職議員増による受給者の増加が、基金を急激に減らしてきました。保険料アップや支給額減額など様々な検討が行われましたが、最終的には今年6月の廃止が決定しています。

廃止に伴い受給資格を持たない議員は一時金を受け取り、既に受給資格のある議員は、一時金か年金を受け取るか選ぶことができます。
しかし、議員年金基金は、ほぼ底をついていますので、一時金も給付される年金も税金が投入されることになります。

特に今年度は一時金の支払いがあるため税金負担額は非常に多額になります。

今日は、廃止となる地方議員年金についてです。

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2010年10月23日に議員年金廃止の動向について報告しました。「地方議員年金廃止について全国市議会議長会が総務省に出そうとしている意見(案)とは」  

最終的に決まった廃止の条件は次の通りです。

■廃止時に現職
【受給資格有り(12年以上)】
・掛金総額および特別掛け金総額の80%の一時金か年金給付かを選択できる

【受給資格無し(12年未満)】
・掛金総額および特別掛け金総額の80%の一時金

■廃止時に退職している
・これまでと同じ条件で年金を受け取れる
遺族年金も変わらず受け取れる

この結果、平成23年度に地方自治体が負担する一時金、支払い年金の総額は1347億円。
廃止が6月のため、廃止後に補正予算を計上する予定の自治体もありますが、例えば、23区合計で58億円の負担になります。 大田区ではまだ公表されていませんが、江戸川区で2億3000万円世田谷区で4億にのぼります。
最終的には交付金でまかなわれ、自治体負担は軽くなるという見方も有りますが、税金で負担することに変わりはありません。

これまで、他の年金制度と大きく異なり12年支払えば受給資格を得たり、税投入額が多いなど、国民年金や厚生年金に比べ、条件がよく、お手盛りであると 批判されてきた議員年金です。それが、廃止にあたっても、制度が破綻していると言ってよい状況でありながら、受給額を減らすことなく、しかも一時金の支払 い割合は、現行の一時金払い戻し割合56%に比べても格段に増えているなど問題の多い廃止条件になっています。

議員年金廃止につきましては、全国市議会議長会と総務省との間のやり取りに終始したといってよく、私も意見書は出したものの、議長でない議員の意見が表明できる場はありませんでした。

私は、議員だから年金は少なくてよいといっているわけでは有りません。議員である無しに関わらず、年金制度もしっかりと整えていかなければならないと考 えます。議員であるから特権的に優遇される年金制度を作るのではなく、広く国民の年金はどうあるべきかという視点で、議員の年金についても考えてくるべき でしたし、また、廃止に当たってもその視点で行うべきでした。

民間の年金破綻、あるいはJALの年金支給額への批判を見れば、今回の議員年金廃止の顛末がいかに民間感覚とかけ離れているのかがわかります。