【指定管理者制度を採用している大田区の図書館】図書購入リクエスト対応の課題
図書館に「国立景観訴訟=自治が裁かれる」という本の購入を依頼したところ「現在は、購入しない」という返事を受けたそうです。
理由は
・「大田区で、国立景観 についての 図書が2,3 冊あるが、利用者の数が少ない」
・「調べたら、都内の全区の図書館も まだ、購入していない。国立の図書館でさえもまだ購入していない」・・・
事実確認をするため、調査したところ次のような問題が見えてきました。
◆図書購入リクエストしたところ買ってもらえなかった「国立景観訴訟~自治が裁かれる~」◆
次のようなご相談を受けました。
図書館に(「国立景観訴訟~自治が裁かれる~」)購入を依頼したところ、「購入の諾否」について、「現在は 購入しない」 の返事をもらいました。
その理由 として、
「大田区で、国立景観 についての 図書が2,3 冊あるが、利用者の数が少ない」
「調べたら、都内の全区の図書館も まだ、購入していない。国立の図書館でさえもまだ購入していない。」
「多分 出版間もないので、早いのかもしれない」
「大田区で 少し 時間をおいて、購入希望者が 2,3人 でも あったら、その時点で購入の諾否をきめます。」
ということでした。
◆大田区立図書館の選書基準◆
そこで、大田区では、図書購入の要望を受けたら、どのような手続きで購入の可否を決定するのか確認したところ、
大田区では、指定管理者制度を採用し、大田図書館以外の図書館は指定管理者が図書館の管理運営を行っているため、各館にあがった要望は、すべて、大田図書館に送付され、大田図書館内の職員4名とそれにくわえた係長等数名が週1回会議を開き決定しているという説明でした。
購入可否の基準は、大田区が平成16年3月24日に定めた「大田区立図書館選書基準」に基づき行われているということでした。
大田区は、今回の購入依頼に対して、
・指定管理者が、依頼者に対して直接連絡した
・新刊本なので数か月購入を待ってもらうと連絡をした
と説明しています。
大田区は、中央館である大田図書館以外のすべての図書館が指定管理者制度を導入しています。
大田区の当初の説明では、選書機能は中央館である大田図書館が担っているということでしたが、その後、「地域館=指定管理者が管理運営する図書館で疑問となった著書については選書の可否を判断するよう情報報告するよう指示する」と
いう説明になっています。
◆指定管理者議決の際に指摘していた選書の課題◆
前回の図書館の指定管理者指定に際し、選書の課題について発言しています「2009年12月16日報告:大田区立図書館の指定管理者制度導入に関わる問題/社会教育施設としての課題と選定の問題点」の指摘が現実のものとなったのが、今回の事例ではないでしょうか。(下記、下線部参照)
2009年12月16日報告より一部抜粋:
■大田区の図書館は、登録者数と貸出冊数が評価の基準■
大田区は、図書館指定管理者の募集要項において、サービスを登録者と貸出冊数の増加とモニタリングの結果により総合的に評価し選定の際の加点項目とするとしています。
しかし、現在の大田区のモニタリングは、アンケートも施設に回収をまかせているため、指定管理者に好ましくないアンケート結果を削除している可能性も否定できず、客観性を確保した評価に値するツールとしては不十分です。
また、図書館の良し悪しは、登録者数や貸出冊数の伸びだけではかれるものではありませんが、あえて、他の評価事項は掲載していないなかで「登録者数」と「貸出冊数」を評価項目としてあげているため、人気のある流行小説など貸出冊数をかせげる本を置き図書館の評価を高めようとするなど選書に影響する可能性があります。
選書のしくみをみても、第一次選書は指定管理者である各館からあげられてくるため、最終的な決定は直営である大田図書館が行うものの、貸出冊数がかせげるか否かを選書の基準にすることも可能です。
大田区は、図書館指定管理者の募集要項において、サービスを登録者と貸出冊数の増加とモニタリングの結果により総合的に評価し選定の際の加点項目とするとしています。
しかし、現在の大田区のモニタリングは、アンケートも施設に回収をまかせているため、指定管理者に好ましくないアンケート結果を削除している可能性も否定できず、客観性を確保した評価に値するツールとしては不十分です。
また、図書館の良し悪しは、登録者数や貸出冊数の伸びだけではかれるものではありませんが、あえて、他の評価事項は掲載していないなかで「登録者数」と「貸出冊数」を評価項目としてあげているため、人気のある流行小説など貸出冊数をかせげる本を置き図書館の評価を高めようとするなど選書に影響する可能性があります。
選書のしくみをみても、第一次選書は指定管理者である各館からあげられてくるため、最終的な決定は直営である大田図書館が行うものの、貸出冊数がかせげるか否かを選書の基準にすることも可能です。
◆大田区立図書館の選書の課題◆
~特に指定管理者制度導入による~
今回は、たまたま、ご連絡をいただいたため、不適切な選書の実態が明らかにないましたが、現状のしくみでは、各館の選書の適否のチェック、判断のしくみはありません。
こうした事例が仮に大田区内の他の図書館でも行われているとしたら大きな問題です。
大田区は、「9月11日の大田区立図書館館長会で報告し、選書に関して、再度基準を精査し、対応するように指示する」とし、「地域間で疑問となった著書などについては、大田図書館にて選書の可否を判断するように、情報報告するよう指示する」としています。
少なくとも、地域館にリクエストの上がった図書とそのリクエストに対し、どこ(どこの図書館:指定管理者・大田図書館)が、どのような理由で、購入したか、しなかったか、その後の対応(他区、他地域から取りよせた等)について記録する必要があると考えます。
それでは、こうした選書は次の選考にどう影響するでしょうか。
一度のミスが指定に直結するとは言えませんが、少なくとも選書の問題は非常に重要なことで、場合によっては思想・言論・文化・教養の統制・強要になりかねません。
ところが、大田区の指定管理者の評価の一つのツールである「モニタリング」をみても、評価の項目には含まれていません。
このあたりも改善の必要があるでしょう。