川崎市に、給食の廃食用油を石けんにして、できた石けんをその学校が使用しているリサイクルのルートがあります。

 川崎市川崎区塩浜にある「NPO川崎市民石けんプラント」に行き事業の現場をみてきました。

古くなった食用油はどのようにして処理しますか?

 まさか、排水溝に流してしまう方はいらっしゃらないと思いますが、固めたりしみこませたりして捨ててしまう方も多いのではないかと思います。我が家ではできる限り使い切るようにしていますが、そうもいかない業務で揚げ物などを行う場合の処理はどうなっているのでしょう。

 川崎市に、学校給食から出る廃食用油を回収して石けんを作っているNPOがあると聞き、先日見学に行きました。

 川崎市川崎区塩浜の住工兼在地域にある「NPO川崎市民石けんプラント」では、主に小学校から集めた廃食用油を洗濯用粉石けんや食器用の液体石けん、固形石けんなどを作っています。

 琵琶湖の水質汚染が問題になった20年ほど前に市民がきれいな水のために働きかけを行ったところ、市長が川崎市議会において廃食用油を使った石けん工場の設立に協力することを約束し、それがきっかけとなって、6000人の市民が出資し石けん工場を設立しました。
 石けんを使い、水を守ろうという意志は持っていたものの、石けん作りのノウハウは何もありませんでしたが、石けん工場を退職された方からの指導の下、どうせ作るなら高品質の石けんをという高い志をもって今日まで事業運営しています。

 高品質の石けん作りに欠かせないのは、廃食用油特有の不純物と臭いを取り除く作業ですが、このプラントでは、こうした精製作業にも非常に力を入れています。
 
 1㍑の油から約その2倍の2㍑の石けんが出来上がりますので、売り先の確保も石けんプラントの大切な仕事です。
 油を回収した小学校が、出来上がった石けんを購入していることは、売却先確保だけではなく、子どもたちへの環境教育としても貴重な場になっています。

 こうした事業の運営できる背景には、川崎市の理解と協力も大きいのですが、一方で、石けんプラントも給食現場の方に「石けん」を受け入れてもらうため、現場に行き、石けんの使い方を指導したり、給食主事を対象に勉強会をおこなったりしているそうです。

 原油価格の高騰が農作物の高騰を招いていますが、廃食用油回収の現場でも、廃食用油は燃料にする原料としてひっぱりだこで産業廃棄物取り扱い事業者の間での競争も激しくなっているようです。
 現在は、産業廃棄物事業者があまり来ない地域の小学校から油を回収していますが、今後は、燃料再生事業にも乗り出すなど、事業の拡大、多角化も視野に入れているそうです。

 また、この工場は、障がい者の作業所として現在21名の方たちが働いています。
 昨年からようやく精神障害も3障がいのひとつとして認定されましたが、就労の場の確保はまだまだこれからです。就労につないでいくためにも、経験や技能を獲得できる、こうした作業所の存在は、非常に重要です。

 河川の汚染が深刻になり、合成洗剤も以前のようにリン酸を使用したものは無くなり、無リンが当たり前になってきています。
 また、下水の浄化技術も向上し、界面活性剤も浄化できるようになっているようです。

 そのため、石けんの使用を促す趣旨の条例を設置している自治体に対して合成洗剤メーカーが、合成洗剤の安全性をアピールしている動きもあるようです。

 
PRTR法Pollutant Release and Transfer Register:化学物質排出移動量届出制度)という法律があります。

 有害性のある多種多様な化学物質が、どのような発生源から、どれくらい環境中に排出されたか、あるいは廃棄物に含まれて事業所の外に運び出されたかというデータを把握し、集計し、公表する仕組みです。
 
 石けんは、このPRTR法の対象になっている物質を一切使用していません。
 石けんは、有害物質を使用していないため、安全性を確認する必要が無いので動物実験も行っていません。

 一方、合成洗剤に使用されている界面活性剤は、PRTR法に指定されている物質を使用しています。 

 先日、大田区の生活センターにおいて、「経皮毒がまるごとわかる本」の著者 竹内久米司さんを講師に「経皮毒」(皮膚から体内に吸収され人体に影響を及ぼす物質)についての学習会が行われました。私たちの皮膚から吸収され、体内に蓄積する有害物質があるという話です。

 また、有害物質が下水流されてしまうと、東京の1/2の地域の下水管は合流式(雨水と汚水が一緒に流れる)のため、大雨になると汚水が道路にあふれ出ないように雨水とと一緒になった汚水を河川に流していますので、それらの有害物質が河川に流れ込んでしまいます。

 下水に流しても下水処理場で浄化されると考え安心しているかもしれませんが、現在の下水処理のシステムでは、必ずしも全ての下水が浄化されているわけではないのです。

 しかも、現在の下水処理が、PRTR法で定められている有害性の有る化学物質を全て浄化できる仕組みにはなっていません。
 
 川から海に流れ出れば、それを魚が口にしてその魚を人が口にすることもあります。或いは、その魚を鳥が食べれば、結果として汚染物質が陸上に運ばれることになり、汚染は地球上に広がっていきます。

 廃食用油から石けんを作る工場に行って、様々なことを考えさせられた一日でした。