■排出された灰は中央防波堤埋め立て処分場へ■
現在、これまでも下水汚泥が持ち込まれていた東京湾の埋め立て処分場(建設廃棄物や残土、港湾の浚渫土や不燃ごみ、ごみ焼却灰を埋め立てている)に持ち込まれています。
下水汚泥を焼却した灰については、原子力対策本部がその考え方を示しました。
居住地域から70m以内であれば、セシウム134と137の合計が10万Bq/Kgまで管理型埋め立て処分場に仮置きできる。
その根拠として、10万Bq/Kg以下の脱水汚泥などは居住地にせず、長期的に適切な措置の元埋め立てれば、周辺住民の年間被ばく量は10μSvを下回ると言う試算が得られているとしています。
また、
8000Bq/Kg以下で農地や宅地にある場合。
8000Bq/Kg以上10万Bq/Kg以下の場合。
については、個別に安全性を評価して、長期的な管理方法を検討したら、モニタリングや施設管理をすれば埋め立てても良い。
としていて、水やセメント、土など他の材料を混ぜて濃度が低くなれば、その数値をもって処分できるとしていますので、10万Bq/Kgと基準が高いうえ、更に高濃度であっても中央防波堤の埋め立て処分場に持ち込める状況になっています。
毎日の暮らしの中から排出される下水やごみの処理に伴い発生するこれらの処理を止めてしまうことは、都市の機能を停止させることに等しく、出来るならばこれまでの流れを滞らせることを避けたいわけですが、流れを重視すれば、安全性を見落とし兼ねません。
放射性廃棄物についての処理基準はありません。下水処理もごみ処理も放射性物質を焼却することを想定して作られていないのです。
今回の原子力対策本部もあくまで、考え方を示しただけで、安全管理については、地元自治体にませた形になっています。国が廃棄物の出口の受け入れを甘くし、地元自治体に安全管理を任せてしまっていることが、下水汚泥処理過程における放射能管理を甘いものにしてはいないでしょうか。
また、同様の問題は、清掃工場における焼却灰においても起きているわけですが、7月15日現在、清掃工場から排出される焼却灰のうち8000Bq/Kgを超えるもののについては、管理型処分場に持ち込むことになっているものの一時保管の準備が整うまでということで、清掃工場内に保管されています。
同じ放射能の検出されている焼却灰でありながら扱いが異なっているところに、対応の難しさが現れていると言えます。
■当該自治体への説明無く、結果として住民不在で進められる放射能濃度の高い下水汚泥や廃棄物の処分■
原子力安全対策本部の考え方は、放射能濃度の高い灰を埋め立てて良いという結論を導いてはいるものの、上記赤字で記したか所をみれば明らかなように、判断は自治体に委ねられていて、長期的な安全管理は自治体がしていく必要のあることがわかります。
廃棄物処理における法規制は存在していません。今回の原子力対策本部もその考え方を示したに過ぎません。
環境ジャーナリストの井部正之さんのレポートから、国土交通省が「実情、法規制はないですからね。あくまでも技術的な助言という扱いです。指導・助言をおこなわれたいと。命令でも義務でもない。法にのっとっているわけでもない。」 と言っています。
現在、東京都が管理している中央防波堤の埋め立て処分場は、将来大田区の帰属となる可能性の極めて高い場所であり、様々な都市計画上の判断の際には必ず意見を求められてきています。
ところが、住民生活に深くかかわり、管理上極めて重要な安全や健康についての問題が、当該自治体とその住民への説明も無く進められています。長期的安全管理について東京都はどのような判断のもと、焼却灰の埋め立てを行っているのでしょうか。
将来、「海の森」として都民から親しまれる場所になる予定のこの場所に放射能濃度の高い灰が持ち込まれ埋め立てられていることについて、少なくとも当該自治体である大田区民への説明が必要ではないでしょうか。
■安全性への疑問を払拭するために行うこと■
東京都は安全であると言っている下水汚泥処理に係る放射能の問題ですが、先ほども井部さんのレポートから、「通常の集じん設備があれば、よほど放射性セシウムが高濃度でない限り、そのままでよいことになる。仮に1kgあたり50万ベクレルを超えるような高濃度であっても、既存の集じん設備をきちんと維持管理すればよい、ということのようだ。いみじくも国交省が認めるように「考え方」に強制力はなく、現実的にはそれぞれの都道府県あるいは自治体の判断しだいである。」ということで、安全確保のためには、現在の焼却の過程における放射性物質の飛散防止をどうするのかという視点で自治体として取り組む必要があります。
そのためにも、例えば下水汚泥処理であれば、
①微生物処理された後の排水に含まれる放射能測定
②フィルターによる放射性物質回収データ
③煙突から排出される排ガスの放射能測定
等における安全性の確認と、放射性物質の拡散を防ぐための対策を明示する必要があります。
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*これまで、セメントの原料となっていた焼却後の灰が、放射能が検出された後は、受け入れ先が無くなっているそうです。
しかし、原子力災害本部の考え方には、セメントになる段階で2倍以上になることから基準の2倍までの放射能の濃度を許容すると言う記述もあり、今後、放射能濃度の高い焼却灰がセメントの原料として流通する可能性が否定できなくなっています。