なぜ、政治家は「誤解をまねく言葉」を使い、国民は「勘違い」してしまうのか 

首相が変わったら、日本が変わると期待していた方がいて、どこでそう感じたのですか、とうかがいました。

所信表明の「成長と分配の好循環」という言葉や、新自由主義の弊害についてふれたから、のようでした。

そういえば、こんな記事がありましたね。
実際、小泉改革以降の新自由主義政策を転換すると言っていたのです。

岸田文雄氏「小泉改革以降の新自由主義政策を転換する」 総裁選へ経済対策:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)

ところが、実際、所信表明を読んでみると、「勘違い」してしまう表現も多く、うまい表現で肝心のことを見えにくくしているなと思いました。

首相が岸田首相に代わり、あたかも自民党政権が新自由主義から脱却するかのように感じている方もいらっしゃいますが、岸田首相は、現行法を変えるとは一言も言っていません。
新自由主義に「批判的な表現」をしているものの、そのまま引き継ぐのですから、現状は何一つ変わりません。

新自由主義へと大きくかじを取った2000年前後からの構造改革で、日本は、変わってしまっています。しかも、その構造改革も仕上げの段階です。
このままの社会保障制度や国民主権、基本的人権を保障した憲法を残せば、矛盾は内包できないほどに大きくなるでしょう。
そこを是正するための、分配です。

私は、良しとしませんが、たとえば、民営化事業者間の分配で、小規模事業者が淘汰され、大規模事業者が残るのも、分配の一つの形だと思いますし、労働者の中間所得層を減らすことで、低所得者層の賃金を底上げするのも分配の一つの形です。

「勤労者皆保険」と名付けていますが、社会保障制度を簡素化させて、ベーシックインカムにすれば、社会保障に投入していた財源を、国民で分配することになります。

憲法改正の議論が出てきています。

あとは、基本的人権を制約しようということでしょうか。

末尾の

「早く行きたければ1人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め。」

この言葉が妙に心にひっかかりました。末尾に触れている憲法改正への議論のすぐあとに、この言葉があったからかも知れません。
一人の百歩より、百人の一歩は耳にしたことがありますが、私たちの行先も明確に示さず、みんなで進め、はあまり民主的ではないと思いました。  

所信表明をここまで詳細に読み込んだことは初めてですが、それだけ、日本の方向性を示す、重要な言葉だと思います。気になる部分を赤太字で示し、コメントを黒太字で書きました。一緒に考えていきたいと思います。

 

________________________

岸田首相 所信表明

◆はじめに

 第205回国会の開会にあたり、新型コロナウイルスによりお亡くなりになられた方々、そして、ご家族のみなさま方に心よりお悔やみを申し上げるとともに、厳しい闘病生活を送っておられる方々に心よりお見舞いを申し上げます。また、わが国の医療、保健、介護の現場を支えてくださっている方々、感染対策にご協力いただいている事業者の方々、そして、国民のみなさんに、深く感謝申し上げます。新型コロナとの闘いは続いています。

 こうした中、このたび、私は、第100代内閣総理大臣を拝命いたしました。私は、この国難を、国民のみなさんとともに乗り越え、新しい時代を切り拓き、心豊かな日本を次の世代に引き継ぐために、全身全霊を捧げる覚悟です。

 私が、書きためてきたノートには、国民の切実な声があふれています。1人暮らしで、もしコロナになったらと思うと不安で仕方がない。テレワークでお客が激減し、経営するクリーニング屋の事業継続が厳しい。里帰りができず、1人で出産。誰とも会うことができず、孤独で、不安。今、求められているのは、こうした切実な声を踏まえて、政策を断行していくことです。

(*それでも国はテレワークを止めると言っていません。後段で生業を守るといった言葉もありますが、生業の個人事業の多くが改善するための政策は見当たりません

 

 まず、喫緊かつ最優先の課題である新型コロナ対応に万全を期します。国民に納得感を持ってもらえる丁寧な説明を行うこと、常に最悪の事態を想定して対応することを基本とします。また、新型コロナで大きな影響を受ける方々を支援するため、速やかに経済対策を策定します。その上で、私が目指すのは、新しい資本主義の実現です。わが国の未来を切り拓くための新しい経済社会のビジョンを示していきます。

 国民のみなさんとともに、これらの難しい課題に挑戦していくためには、国民の声を真摯に受け止め、かたちにする、信頼と共感を得られる政治が必要です。そのために、国民のみなさんとの丁寧な対話を大切にしていきます。私をはじめ、全閣僚が、様々な方と車座対話を積み重ね、その上で、国民のニーズに合った行政を進めているか、徹底的に点検するよう指示していきます。

(*国民とひと口に行っても、投資家ー労働者、大企業ー中小企業ー個人事業主、外国資本ー国内資本、富裕層ー中間所得層ー低所得者層など様々です。岸田首相は「成長と分配の好循環」を言っていますが、人口減少局面で、成長を目指せば、どこからか富が移転しなければ成り立ちません。しかも、今の政治の現場でのニーズは必ずしも基本的人権である社会保障や所得、雇用、ばかりではありません。優先順位の低いニーズにばかり答えれば、基本的な教育・医療・福祉などの社会保障財源が不足します)

 

 そうして得た信頼と共感の上に、私は、多様性が尊重される社会を目指します。若者も、高齢者も、障害のある方も、ない方も、男性も、女性も、全ての人が生きがいを感じられる社会です。経済的環境や世代、生まれた環境によって生じる格差やそれがもたらす分断。これが危機によって大きくなっているとの指摘があります。同時に、われわれは、家族や仲間との絆の大切さに改めて気付きました。東日本大震災の時に発揮された日本社会の絆の強さ。世界から賞賛されました。危機に直面した今こそ、この絆の力を発揮するときです。全ての人が生きがいを感じられる、新しい社会を創っていこうではありませんか。日本の絆の力を呼び起こす。それが私の使命です。

◆新型コロナ対応

 まず、新型コロナ対応です。足下では、感染者数は落ち着きを見せ、緊急事態宣言は全面的に解除されました。菅前総理の大号令の下、他国に類を見ない速度でワクチン接種が進み、この闘いに勝つための大きな一歩が踏み出せました。前総理のご尽力に、心より敬意を表します。

新型コロナウイルスのワクチン接種

 しかし、楽観視はできません。危機対応の要諦は、常に最悪の事態を想定することです。感染が落ち着いている今こそ、様々な事態を想定し、徹底的に安心確保に取り組みます。与えられた権限を最大限活用し、病床と医療人材の確保、在宅療養者に対する対策、徹底します。希望するすべての方への2回のワクチン接種を進め、さらに、3回目のワクチン接種も行えるよう、しっかりと準備をしていきます。経口治療薬の、年内実用化を目指します。あわせて、電子的なワクチン接種証明の積極的な活用、予約不要の無料検査の拡大に取り組みます。

 これらの安心確保の取り組みの全体像を、早急に国民にお示しするよう関係大臣に指示しました。国民のみなさんが先を見通せるよう、丁寧に説明してまいります。同時に、これまでの対応を徹底的に分析し、何が危機管理のボトルネックだったかを検証します。そして、司令塔機能の強化、人流抑制医療資源確保のための法改正、国産ワクチンや治療薬の開発など、危機管理を抜本的に強化いたします。

(*国は、医療病床数を減らすと決めましたが、病床数を減らしながら医療資源を確保すると、いうことは、矛盾しています。何を減らし、何を増やすのか、明確な言葉がありません。人流抑制を続ければ、有利な企業や業態は限られるでしょう)

 

 国民の協力を得られるよう経済支援を行うことも大切です。大きな影響を受ける事業者に対し、地域、業種を限定しないで、事業規模に応じた給付金を支給します。新型コロナの影響により苦しんでおられる、非正規、子育て世帯などお困りの方々を守るための給付金などの支援も実行していきます

(*給付金は、事業規模ではなく、体力に応じ給付すべきです。海外では、大企業には融資、中小には給付金と明確に支援策を分けている国もあります。)

 

◆新しい資本主義の実現

 次に、私の経済政策について申し上げます。マクロ経済運営については、最大の目標であるデフレからの脱却、成し遂げます。そして、大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略の推進、努めます。危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い、万全を期します。経済あっての財政であり、順番を間違えてはなりません。経済をしっかりと立て直します。そして、財政健全化に向けて取り組みます。

 その上で、私が目指すのは、新しい資本主義の実現です。新自由主義的な政策については、富めるものと、富まざるものとの深刻な分断を生んだ、といった弊害が指摘をされています。世界では、健全な民主主義の中核である中間層を守り、気候変動などの地球規模の危機に備え、企業と政府が大胆な投資をしていく。そうした、新しい時代の資本主義経済を模索する動きが始まっています。今こそ、わが国も、新しい資本主義を起動し、実現していこうではありませんか。

(*経済あっての財政であり順番を待ちがえてはならない、企業と政府が大胆な投資、と言っていますから、税金は、経済利益のための投資にまず使われるということです。そうなると、これまでの、社会保障制度は成立しなくなると思います。くしくも「勤労者皆保険」の実現といっていますが、これは、ベーシックインカムのことではないかと思います。)

 

 「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」。これがコンセプトです。成長を目指すことは、極めて重要であり、その実現に向けて全力で取り組みます。しかし、「分配なくして次の成長なし」。このことも、私は、強く訴えています。成長の果実を、しっかりと分配することで、初めて、次の成長が実現します。大切なのは、「成長と分配の好循環」です。「成長か、分配か」という、不毛な議論から脱却し、「成長も、分配も」実現するために、あらゆる政策を総動員いたします。

(*「成長も、分配も」と言っていますが、人口減少局面で、成長を目指せば、どこからか富が移転しなければ成り立ちません。成長か分配かが不毛と言いますが、確かに、高額所得者との格差を是正すると言っているわけではありませんから、富裕層をさらに成長させ、中間所得者層から下の所得層間での分配、というのはあり得ることかもしれません。それを排除する言葉はどこにもありませんから

 

新型コロナで、わが国の経済社会は、大きく傷つきました。一方で、これまで進んで来なかったデジタル化が急速に進むなど、社会が変わっていく確かな予感が生まれています。今こそ、科学技術の恩恵を取り込み、コロナとの共生を前提とした、新しい社会を創り上げていくときです。

 この変革は、地方から起こります。地方は、高齢化、過疎化などの社会課題に直面し、新たな技術を活用するニーズがあります。例えば、自動走行による介護先への送迎サービスや、配達の自動化、リモート技術を活用した働き方、農業や観光産業でのデジタル技術の活用です。ピンチをチャンスに変え、われわれが子どものころ夢見た、わくわくするような未来社会を創ろうではありませんか。

 そのために、「新しい資本主義実現会議」を創設し、ビジョンの具体化を進めます。新しい資本主義を実現していく車の両輪、これは、成長戦略と分配戦略です。

天皇陛下を迎えて開かれた第205通常国会の開会式

 まず、成長戦略の第1の柱は、科学技術立国の実現です。学部や修士・博士課程の再編、拡充など科学技術分野の人材育成を促進します。世界最高水準の研究大学を形成するため、10兆円規模の大学ファンドを年度内に設置します。デジタル、グリーン、人工知能、量子、バイオ、宇宙など先端科学技術の研究開発に大胆な投資を行います。民間企業が行う未来への投資を全力で応援する税制、実現していきます。また、イノベーションの担い手であるスタートアップの徹底支援を通じて、新たなビジネス、産業の創出を進めます。そして、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、温暖化対策を成長につなげる、クリーンエネルギー戦略、策定し、強力に推進いたします。

 第2の柱は、地方を活性化し、世界とつながる「デジタル田園都市国家構想」です。地方からデジタルの実装を進め、新たな変革の波を起こし、地方と都市の差を縮めていきます。そのために、5Gや半導体、データセンターなど、デジタルインフラの整備を進めます。誰一人取り残さず、全ての方がデジタル化のメリットを享受できるように取り組みます。

(*誰一人取り残さず、全ての方がデジタル化のメリットを享受できるのは、利便性であり、情報システムとつながることはできても、利益を上げる事業者になることはできません。デジタル化による情報基盤を活用して利益を上げるためには、国家戦略特別区域諮問会議の認定が必要です。経済の自由競争は、認定制度に代わって、参入障壁があるのです。

 第3の柱は、経済安全保障です。新たに設けた担当大臣の下、戦略物資の確保や技術流出の防止に向けた取り組みを進め、自律的な経済構造を実現します。強靭なサプライチェーンを構築しわが国の経済安全保障を推進するための法案、策定します。

(*経済安全保障一括法策定を目指しているようです。経済の問題かと思ったら

安全保障という言葉があって、外交問題のようにも思えます。所管は公安調査庁のようです。)

 

 第4の柱は、人生100年時代の不安解消です。将来への不安が、消費の抑制を生み、経済成長の阻害要因となっています。兼業、副業、あるいは、学びなおし、フリーランスといった多様で柔軟な働き方が拡大をしています。大切なのは、どんな働き方をしても、セーフティーネットが確保されることです。働き方に中立的な社会保障や税制を整備し、「勤労者皆保険」の実現に向けて取り組みます。人生100年時代を見据えて、子供から子育て世代、年寄りまで、全ての方が安心できる、全世代型社会保障の構築、進めます。

 

(*セイフティーネットが確保されること。「勤労者皆保険」=ベーシックインカムのことではないでしょうか。今の社会保障費より財源が投入される保証はなく、むしろ社会保障費削減策として講じられると思います。)

 

 

 次に、分配戦略です。

 第1の柱は、働く人への分配機能の強化です。企業が、長期的な視点に立って、株主だけではなく、従業員も、取引先も恩恵が受けられる「三方良し」の経営を行うことが重要です。非財務情報開示の充実、四半期開示の見直しなど、そのための環境整備、進めてまいります。政府として、下請け取引に対する監督体制を強化し、大企業と中小企業の共存共栄を目指します。また、労働分配率向上に向けて賃上げを行う企業へ税制支援を抜本強化します。

 

(*コロナでこれから数年でどうなるかといえば、中小企業や個人事業主のの合併、譲渡、廃業で中間所得層は、大幅に縮小するでしょう。大企業と中小企業の共存共栄、労働分配率向上に向け賃上げを行う企業への税制支援の抜本強化は、それに耐えられない中小企業の淘汰と裏返しで、中小企業は大資本への統廃合を余儀なくされるか、廃業を選らばざるを得なくなるのではないかと思います。)

 第2の柱は、中間層の拡大、そして少子化対策です。中間層の拡大に向け、成長の恩恵を受けられていない方々に対して、国による分配機能を強化します。大学卒業後の所得に応じて「出世払い」を行う仕組みを含め、教育費や住居費への支援を強化し、子育て世代を支えていきます。保育の受け皿整備、幼保小連携の強化、学童保育の制度の拡充や利用環境の整備など、子育て支援、促進します。こども目線での行政のあり方を検討し、実現していきます。

(*中間層は、コロナの感染防止策の失敗で、今後数年で大幅に縮小するでしょう。表立っての問題が起きないのは、多くの中間所得層は、国の事業承継策によって救済される可能性があるからです。結果、最終的には大資本に淘汰されたり、譲渡や相続の優遇により、今の一定の中間所得層は守られるの可能性があります。しかし、今後の日本社会を思うと、分厚かった中間所得層が、それ以降に継承される保証はありません。)

(*「出世払い」は、貸与型奨学金にほかなりません。貸したら、それを将来の所得から返してもらう。所得に応じて、というのがこれまでの借りた額に応じてというのと少し違うのかもしれません。)

 第3の柱は、看護、介護、保育などの現場で働いている方々の収入を増やしていくことです。新型コロナ、そして、少子高齢化への対応の最前線にいる皆さんの収入を増やしていきます。そのために、公的価格評価検討委員会を設置し、公的価格のあり方を抜本的に見直します。

(*看護、介護、保育の現場の方々の収入を増やすことは大切ですが、公務員として増やすのではなく、民営化したまま増やすので、小規模事業者は、今後の少子化による定員確保が困難になり始めている中、小規模事業者は、より定員減での影響を受けやすく、そこに賃金の規制がかかると、大規模事業者に淘汰される可能性があります。結果、大手株式会社などへの寡占化が進むと思います。結果、社会福祉法人、小規模事業者などは厳しい経営を迫られるのではないでしょうか。ちなみに、韓国は、最低賃金引き上げの順番を誤ったことで、フランチャイズオーナーを苦しめる結果になったそうです。
その後、総裁選での政策を説明する記事を読んだところ、▽医療、介護、保育などの現場で働く人の所得を増やすための「公定価格」の抜本的見直しとありました。公定価格とは、税金で民間事業者に支払う単価のこと。ここで引き上げても全額必ずしも働く人の所得に使われるわけではありません。結果、一部、場合によっては大半が株主利益に回っていることもあり、これまでも、問題になってきました。働く人の所得を増やすには、株主経由は非効率だということです。

 第4の柱は、公的分配を担う、財政の単年度主義の弊害是正です。科学技術の振興、経済安全保障、重要インフラの整備など国家課題に計画的に取り組みます。

(*単年度会計には意味があります。税を負担する世代と、その恩恵を受ける世代との世代間の公平です。いまでも、財政規律が失われ、国債等の多額な発行により、長期間保有できるインフラだけでなく、ワクチンや経済困窮者への支援にも使われるようになっています。コロナの一時的な問題だけでなく、経常的に将来のための借金をよしとすると、将来の子供や孫の世代は、親の収入のために税金を払い、見たことも無いインフラのために税金を払う構図に拍車がかかるということです。資金調達には必ず金利負担が生じ、税金の一部が富裕層に流れます。単年度主義の弊害是正は、財政規律の歯止めをなくし、格差拡大の拡大サイクルが継続することを意味します。)

 

 これらに加え、地方活性化に向けた基盤づくりにも積極的に投資します。東日本大震災からの復興なくして日本の再生なし。この強い思いの下で、被災者支援、産業・生業の再建、福島の復興・再生に全力で取り組みます。

(*そもそも生業:なりわいを失わせてきたのが、この間の自民党の政治でした。構造改革の反省なく生業の再建といわれても、安心できません。)

 農林水産業の高付加価値化と輸出力強化を進めるとともに、家族農業や中山間地農業の持つ多面的な機能を維持していきます。新型コロナによる米価の大幅な下落、これは、深刻な課題です。当面の需給の安定に向けた支援など、十分な対策を行います。老朽化対策を含め、防災・減災、国土強靱化の強化とともに、高速道路、新幹線など、交通、物流インフラの整備、推進いたします。

 いのち輝く未来社会のデザイン。これが2025年大阪・関西万博のテーマです。地域から、IoTや人工知能などのデジタル技術を活用した未来の日本の姿を示します。観光立国復活に向けた観光業支援、文化立国に向けた地域の文化、芸術への支援強化にも取り組みます。

国民を守り抜く、外交・安全保障

 私の内閣の3つ目の重要政策は、「国民を守り抜く、外交、安全保障」です。私は、外交、安全保障の要諦は、「信頼」だと確信をしています。先人たちの努力により、世界から得た「信頼」を基礎に、3つの強い「覚悟」をもって毅然とした外交を進めてまいります。

 第1に、自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を守り抜く覚悟です。米国をはじめ、豪州、インド、ASEAN、欧州などの同盟国・同志国と連携し、日米豪印も活用しながら、「自由で開かれたインド太平洋」を力強く推進いたします。深刻化する国際社会の人権問題にも、省庁横断的に取り組みます。

 第2に、わが国の平和と安定を守り抜く覚悟です。わが国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増す中、わが国の領土、領海、領空、そして、国民の生命と財産を断固として守り抜きます。そのために、国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画の改定に取り組みます。この中で、海上保安能力や更なる効果的措置を含むミサイル防衛能力など防衛力の強化、経済安全保障など新しい時代の課題に、果敢に取り組んでいきます。

 こうしたわが国の外交・安全保障政策の基軸は、日米同盟です。私が先頭に立って、インド太平洋地域、そして、世界の平和と繁栄の礎である日米同盟を更なる高みへと引き上げていきます。日米同盟の抑止力を維持しつつ、丁寧な説明、対話による信頼を地元のみなさんと築きながら、沖縄の基地負担の軽減に取り組んでまいります。普天間飛行場の1日も早い全面返還を目指し、辺野古沖への移設工事を進めます。

 北朝鮮による核、ミサイル開発は断じて容認できません。日朝平壌宣言に基づき、拉致、核、ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、不幸な過去を清算して、日朝国交正常化の実現を目指します。拉致問題は最重要課題です。全ての拉致被害者の1日も早い帰国を実現すべく、全力で取り組みます。私自身、条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意です。

 第3に、地球規模の課題に向き合い、人類に貢献し、国際社会を主導する覚悟です。核軍縮・不拡散、気候変動などの課題解決に向け、わが国の存在感を高めていきます。被爆地広島出身の総理大臣として、私が目指すのは、「核兵器のない世界」です。私が立ち上げた賢人会議も活用し、核兵器国と非核兵器国の橋渡しに努め、唯一の戦争被爆国としての責務を果たしてまいります。これまで世界の偉大なリーダーたちが幾度となく挑戦してきた核廃絶という名の松明を、私も、この手にしっかりと引き継ぎ、「核兵器のない世界」に向け、全力を尽くしてまいります。

 世界で保護主義が強まる中、わが国は自由貿易の旗手を務めます。デジタル時代の信頼性ある自由なデータ流通、「DFFT」を実現するため、国際的なルールづくりに積極的な役割を果たしていきます。

(*DX:デジタルトランスフォーメーションによる情報の一元化を言っているのだと思いますが、情報通信システムを誰がコントロールするのか、が重要です。かつて、CMで「作る人、食べる人」が問題になりましたが、自由なデータ流通で利益を上げるのが誰なのか、が重要だと思います。10月1日の記事参照:https://blog.goo.ne.jp/nasrie/e/5a1076cd6e8422f295fafd746334bc19

 中国とは、安定的な関係、築いていくことが、両国、そして、地域及び国際社会のために重要です。普遍的価値を共有する国々とも連携しながら、中国に対して主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めると同時に、対話を続け、共通の諸課題について協力してまいります。

 ロシアとは、領土問題の解決なくして、平和条約の締結はありません。首脳間の信頼関係を構築しながら、平和条約の締結を含む日露関係全体の発展を目指します。

 韓国は重要な隣国です。健全な関係に戻すためにも、わが国の一貫した立場に基づき、韓国側に適切な対応を強く求めていきます。

首相官邸

新しい経済対策

 「新型コロナ対応」、「新しい資本主義」、「外交・安全保障」。これら3つの政策を着実に実行することで、国民のみなさんとともに、新しい時代を切り拓いていきます。本日朝の閣議で、新型コロナ対応に万全を期すとともに、新しい資本主義を起動させるため、新たな経済対策を策定するよう指示いたしました。総合的かつ大胆な経済対策を速やかにとりまとめます。

(*新たな経済対策として、経済安全保障一括法策定を目指しているようです。経済の問題かと思ったら

安全保障という言葉があって、外交問題のようにも思えます。所管は公安調査庁のようです。)

おわりに

 憲法改正についてです。憲法改正の手続きを定めた国民投票法が改正されました。今後、憲法審査会において、各政党が考え方を示した上で、与野党の枠を超え、建設的な議論を行い、国民的な議論を積極的に深めていただくことを期待いたします。

 そして、最後になりますが、このようなことわざがあります。「早く行きたければ1人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め。」

 新型コロナという目に見えない敵に対し、われわれは、国民全員の団結力によって一歩一歩前進してきました。改めて、この日本という国が、先祖代々、営々と受け継いできた、人と人のつながりが生み出す、やさしさ、ぬくもりがもたらす社会の底力を強く感じます。正に、「この国のかたち」の原点です。

 この「国のかたち」を次の世代に引き継いでいくためにも、私たちは、経済的格差、地域的格差などがもたらす分断を乗り越え、コロナとの闘いの先に、新しい時代を切り拓いていかなければなりません。そのために、みんなで前に進んでいくためのワンチームを創りあげます。

 「早く行きたければ1人で進め。遠くまで行きたければ、みんなで進め。」1人であれば、目的地に早く着くことができるかもしれません。しかし、仲間とならばもっと遠く、はるかに遠くまで行くことができます。私は、日本人の底力を信じています。

 新型コロナの中にあってもなお、デジタル、グリーン、人工知能、量子、バイオ、宇宙、新しい時代の種が芽吹き始めています。この萌芽を大きな木に育て、経済を成長させ、その果実を国民全員で享受していく、明るい未来を築こうではありませんか。明けない夜はありません。国民のみなさんとともに手を取り合い、明日への一歩を踏み出します。

 同僚議員各位、そして、何よりも国民のみなさんのご協力を心からお願い申し上げ、所信表明とさせていただきます。ご清聴ありがとうございました。