上原 公子元国立市長の講演に学ぶ まちは市民が作るということ

国立市の大学通りの並木を超える高さのマンション建設をめぐるまちなみを守るための運動は、最高裁まで争われました。
最高裁の判決で、住民側は敗れたものの、「景観利益」が法律上保護に値することが認められ、その後の景観法制定につながっていきました。
一連の運動から市長になられた上原公子さんを講師に、まちづくりについてうかがいいました。
_______________________________________

大田区においても、近年、平成23年4月~まちづくり条例、平成25年4月~景観条例、同景観団体、同10月景観計画など、まちづくりに関る制度整備が行われてきています。

しかし、制度は整備されるものの、マンション建設等に関る紛争があとを絶たず、整備された制度によって、必ずしも大田区民が抱える問題に対応できる状況にはなっていません。

地方分権、住民自治の流れの中、地域住民の合意形成のもと「地区計画」というしくみを使うことで、まちなみの整備ができるようになりましたが、結果として 現在最も地区計画の制度を活用できているのは、大規模な資金力を背景にした開発プロジェクトや行政主導の再開発事業になっています。

そうしたなか、国立市の住民が、どのようにして地域の住環境や景観を守ってきたのかをうかがうことで、いま、私たちに何が必要なのかを改めて気付かせてくれました。

国立市のまちが、環境や景観を大切にするという計画の中で誕生したこと。
それを大切にする住民が更にその価値を育て(桜並木・音楽堂・・・)、高め、経済(お金)の理屈による開発等(米軍の売春宿の計画・横断歩道橋の設置・駅 舎の保存・・・)がおきるたび、そこと闘い守ってきたからこそ、あの美しいまちなみがあるということが、上原さんのお話しをうかがっていてよくわかりまし た。

規制や制度は、それができた時には、私たちが守るべきものでもありますが、一方で、社会の変化に伴い変化するものでもあります。

その変化を強調するのが、「規制緩和」という流れです。
「構造改革」「規制緩和」という声は、日増しに高まり、今や、「特区」を定めて、その区域だけの規制を作ろうという時代になっている一方で、地域住民がこ れまで穏やかに暮らしてきたまちなみや生活を守りたいというささやかな願いにこたえるための「規制」はなかなかできません。

高さの規制をかけてほしいと願っている住民がいる一方で、そうした声にこたえるというわけでもなく、高さ制限を行政主導でかけるという動きになる。住民の 声を聞き、地域ごとのまちの特徴をつかみ、守り育てるべきまちのあり方についての合意形成が必要ですが、行われない、あるいは、形式的に行われるだけで す。
まちづくり条例策定の時も、景観条例策定の時も、行政は、どういった問題意識のもと条例提案をしたのか聞きましたが、答えることができませんでした。

まちづくりに関る制度設計の発意がいったいどこから出てくるのかということに、私たちはもっと敏感にならなければならないのではないでしょうか。
まちを守るのは、一人ひとりの住民の声からの合意形成であり、行政に任せていても住民の望むまちはできないのではないでしょうか。