コロナを名目に病床削減、自宅療養という入院拒否を常態化させようとする動きについて考えました

病床ひっ迫、自宅療養基準や、野戦病院といった言葉が聞こえるようになっています。

コロナが原因で病床ひっ迫のように聞こえますが、たとえば、

平成28年(2016年)8月3日開催の、

第一回 在宅医療及び医療・介護連携に関するワーキンググループ(平成28年8月3日)資料1

では、こんな図で、病床数削減計画について書かれています。

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000132223.pdf

これをみると、日本の政治が、2013年には、病床数削減を目指していて、その結果
2013年 病床 135万床
2014年 病床 123万床 

2025年 病床 152万床必要なところ、少なくとも△30万床減らし
115~119万床を目指していたことがわかります。

2025年は、人数の多い団塊の世代が、医療や介護の必要な75歳以上の後期高齢者に
なるので2025問題という社会問題化している年です。

152万床というのは、そのまま高齢化すれば、必要な病床数ですが、
それを115~119万床と30万床くらいは減らそうとしていたわけです。

いま、コロナで病床がひっ迫しているから、血中酸素濃度で入院を決めようと
する動きもあります。

そうなると、コロナでなくても、血中酸素濃度の一定以上の方は「軽症」とみなされ
入院させてもらえなくなるかもしれないのです。

国は、コロナが軽症化してきたから、自宅療養で良い、という言い方まで
していますが、一方で、受け入れの可否は、コロナではなく、血中酸素濃度で
決めようとしているので、多くの、コロナかどうかわからない方たちが、
入院の門前払いを受けるかもしれません。

問題は、財源不足かどうか理由を言わずに、コロナで重症者が増えているから
入院できないのかも知れない、と国民に事実とは違う印象を与えていることだと思います。

大田区議会では、大田区にこの自宅療養についての意見を出すので、意見を求められ
以下の文書を提出しました。

私は、自宅療養は、日本の医療のフリーアクセスの原則を壊し、医療の質の低下を
招くことから認めるべきではないと考えています。

仮に、財源や医療資源の関係から、自宅療養をせざるを得ないとしても、
病床数、今後の必要病床数、コロナで増加し必要な病床数、などを示し、
議論すべきと意見しました。

しかし、意見は通らず、通常、議員がコロナについて質問、要望するコロナ対策本部
への質問もしてはダメだと議長から言われてしまいました。

極めて重要なことが、事実を明らかにせず、歪められた形で、変えられてしまうと
するなら問題だと思います。

以下、大田区議会コロナ対策本部へ提出した意見を掲載します。


2021年8月23日

              コロナ自宅療養者に対する対応について

                           フェアな民主主義 奈須りえ

 

新型コロナ陽性者数が増えていることに伴い、自宅療養者が増えています。

厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部は、入院は重症患者や重症化リスクの高い人に重点化する一方、それ以外は自宅療養を基本とし、健康観察を強化するなどとした方針をまとめ、都道府県に通知しました。

この通知は、重症患者などを除いて自宅療養が基本となり、これまで、入院できていた症状の方でも、入院できなくなる方が増えることになることを意味します。

東京都では、38度以上の発熱や血液中の酸素飽和度が96%未満といった症状や所見があるケースは入院としていますが、血液中の酸素飽和度の目安を下げてより厳しくする案なども視野に、都の専門家から意見も踏まえて具体的に決めていくことそうです。

このことについて、意見を申し述べます。

 

国は、こうした入院基準の見直しの背景に、

・関西圏をはじめ全国の多くの地域で(1)新規感染者数が増加傾向となっていて、これまでに経験したことのない感染拡大となっていること

・全国的に(2)デルタ株への置き換わりが急速に進むにつれ、更に感染の拡大が進むことが懸念されていること

・重症化リスクの最も高い(3)65歳以上の感染者数の割合は大きく低下していること

・東京都では、30代以下の(4)若い世代の感染が7割に達し、20代の感染も連日千人を超えていること

・結果、(5)高齢者の重症者数は低い水準で推移していること

・全国の死亡者数の数は、5 月は一時、1 日で 100 人を上まわっていたが、8 月 1 日は 5 人となっている*など、これまでと顕著な違いがでてきていること(*(6)死亡者数の数が激減している)

を通知文の中で示しています。

 

これらを受け、国は、自治体において、以下のような患者療養の考え方をとることも可能だという考え方を示しています。

○ 入院治療は、重症患者や、中等症以下の患者の中で特に重症化リスクの高い者に重点化することも可能であること。その際、宿泊・自宅療養の患者等の症状悪化に備え、空床を確保すること。

入院させる必要がある患者以外は、自宅療養を基本とし、家庭内感染の恐れや自宅療養ができない事情等がある場合に宿泊療養を活用すること。

健康管理体制を強化した宿泊療養施設を増強すること。

○ 地域の医師会等との連携や外部委託を含め、自宅療養者への健康観察を更に強化し、症状悪化の際は速やかに入院できる体制を確保すること。その際、HER-SYS(*)を改善し導入した、スマートフォンでの健康管理・IVR(自動音声応答システム)を活用した自動電話等の機能も活用しつつ健康管理を推進すること。*PCR・ゲノム解析

 

 これらのことから、感染者数は増えても、死亡者数が減っており、感染症において一般に言われている、弱毒化が進んでいることが見て取れるという専門家のの指摘も聞いています。

 

 ここで、心配なのが、国が入院基準を見直し、「入院治療は、重症患者や、中等症以下の患者の中で特に重症化リスクの高い者に重点化することも可能」と言っていることです。国は、さらに、宿泊・自宅療養の患者等の症状悪化に備え、空床を確保することまで示しています。

 

 このことは、一見合理的な基準に見えてしまいますが、コロナの感染者が増えている一方で死亡者が減っていることは、当然、重症者も減っており、ここにきて、あらためて、入院治療を「重症患者や、中等症以下の患者の中で特に重症化リスクの高い者に重点化」していることはなぜなのかという疑問がわきます。

 

東京都のモニタリング会議の報告に、※重症者用の確保病床数(都は 1,207 床)に占める重症者数の割合は、7 月 20 日時点で 51.7%となっており、国の指標におけるステージⅣとなっている(確保病床の使用率 50%以上でステージⅣ)とありましたが、国が示す死亡者数の高かった5月に近い、5月5日の東京都のモニタリング会議の報告では、入院病床に占める重症者割合は37.9%で必ずしも確保病床数に占める重症者割合と死亡者数との関係が、コロナ死亡者数が100倍だったにも関らず、一致していませんでした。

 

こうした中で、心配なのが、東京都が入院基準に酸素飽和度を示していると報道されていることです。

実際、東京都のホームページで東京都が酸素飽和度という言葉を使用しているのは、感染拡大のリスクに備え、病床が逼迫した際に入院治療が必要にもかかわらず入院待機となった患者を一時的に受け入れる施設「TOKYO入院待機ステーション」の整備についてのページでした。

コロナの重症かどうかや入院すべきかどうかの判断に酸素飽和度が重要な指標になっているように感じます。

そうなると、救急搬送される方や入院の受け入れの可否などの場面で、酸素飽和度が使われることはないでしょうか。

 

本来、感染症患者は隔離が基本ですが、この間、感染症病床を減らしてきたことが、受け入れの困難を招き、感染した方の自宅療養というあり得ない事態を招いていると指摘する専門家がいます。

今回、さらに心配なのが、入院すべきコロナ感染者が、医療資源の不足により病院外で治療を受けなければならないのみならず、コロナが疑われるが、他の深刻な疾患がある方も、場合によっては酸素飽和度などによっても、自宅療養を余儀なくされる可能性があるということです。

 

そこで、気になるのが、2025問題と病床数削減の問題です。

団塊の世代が、後期高齢者に入ろうとしており、高齢化により医療・介護を必要とする方たちが増え始めています。

一方、国は、病床数の削減をしてきており、更なる病床数削減をしようとしています。

 

高齢化が進み、医療介護を必要とする方たちが激増する時期に、弱毒化しつつあるコロナを理由に入院基準を定めることは、弱毒化しているもののコロナ罹患者の自宅待機のみならず、多くの医療を必要とする方の門前払いになることは無いでしょうか。

 

そうならないために、コロナの入院基準を定めることや、運用は充分な検証が必要であることから、区民も巻き込んだ、公の場での議論を求めます。そうした議論無くしての入院基準の厳格化による入院受け入れの制限は行うべきでは無いと考えます。

 

そのうえで、別紙の質問におこたえ下さい。

  1~4の数値に係る質問については、概ね2000年から2060年までについて示してください。数値は、おおむね5年ごとでお願いします。

別紙

 

  • この間の大田区、(データが無ければ大田区の医療圏=区南部医療圏)における病床数の変化と今後の推移(今後の推移については国の病床削減計画数を反映したもの)
  • この間、そして今後の大田区の後期高齢者数の変化と推移
  • 救急搬送者数の推移
  • 大田区の医療圏における病床数・コロナ病床数、および、2020年~今年直近までの月別・疾患別一般入院患者数・コロナ入院患者数・コロナ自宅待機者数・コロナ陽性者数
  • 今回のコロナの入院基準が示されることで、コロナ以外の病症者も入院しにくくなる、門前払いされるなどの影響を懸念しますが、影響はありますか。(他の疾患が原因だとしても、コロナで陽性になると、コロナ患者として扱われる可能性があるからです。)

無いとするなら、どのような運用をすることでコロナ以外の病症者の入院を基準により排除せず受け入れるのですか。

  • 国は病床数を減らそうとしていますが、病床数削減による入院受け入れの弊害をコロナに転嫁することになりませんか。
  • 自宅療養者への医師の往診の医療点数はどうなりますか。経営的に悪化するのではないかと指摘する医師もいます。医師の診療において点数据え置きのまま往診割合が増えた場合、医師の診療所等の経営への影響はどうなりますか。また、大田区保健所として往診を依頼する場合、移動などの時間に対する補償を区として検討していますか。
  • 本来、感染症患者は、都立荏原病院など感染症病棟での隔離による治療を基本としてきましたが、コロナにより例外を設けることで、他の感染症疾患への影響はありませんか。

コロナだけ特別に自宅待機、隔離が許される根拠はどこにありますか。

  • 東京都は、感染拡大のリスクに備え、病床が逼迫した際に入院治療が必要にもかかわらず入院待機となった患者を一時的に受け入れる施設として、酸素投与や投薬治療が可能な医療機能を強化した宿泊療養施設「TOKYO入院待機ステーション」を東京都医師会、医療機関の協力を得て整備することとし、葛飾区内の医療法人社団直和会 平成立石病院内に設置されました。

この宿泊療養施設と病院との違いはどこにありますか。機能や法的位置づけ、保険点数の考え方などについてご説明ください。

また、今回の入院基準の設置と自宅療養、あるいは、こうした宿泊療養施設の設置は、国の病床数削減と合わせて考えると、医療費削減や医療へのアクセスの低下につながりませんか。