大田区から見た都政の課題

都議会議員選挙が終わり新しい議会構成での都政がスタートしました。

大田区は定数が8から7に1議席減りました。都議会の定数は127ですから、選挙後の都議会では、大田区民の代弁者の声が8╱127から7╱127に減ることになります。

大田区の声が都政に届きにくくなったと言えるかもしれません。

そういう視点からみると、1票の格差の問題も、人口比「だけ」で論じて良いのか疑問が残ります。
東京一極集中とその結果地方の人口減少を招く施策を講じたのは、政治なのに、その弊害で疲弊する地方の声を届きにくくすることになるからです。農林水産業の軽視と海外依存、製造業の空洞化、規制緩和で都市部の高度化・過密化による人口集中を可能にしたのも政治です。

それでは、一極集中で人口の増えた都市部が必ずしも恩恵ばかりを受けているかと言えば、そうではありませんが、ここはなかなか気づきにくいところでもあります。

都市部の財政構造の問題は、マスコミも政治もしっかり取り上げ発信できていないと思うからです。
経済の一極集中は、富(投資利益)と財源(税収)の集中も招きますが、働いてそれらの富を生み出した住民に、賃金や社会保障で「適正に」還元されているかと言えば、そうはなっていないと思います。

逆に格差の拡大は促進し、その格差を社会保障で是正することも不十分です。

今、私が都政の課題だと思っていることについてお話ししたいと思います。

 


日ごろ取り組んでいる課題の多くに、東京都が関わっています。

6月下旬に朝日新聞から取材を受けて記事になったリニア中央新幹線も、東京都が環境アセスメントの主体でしたし、羽田新ルートも、沖合移転の時から考えれば、東京都がその姿勢を180度転換させてしまったと言えます。

森友学園・加計学園問題は、文書改ざんで自殺者まで出しましたが、国家戦略特区という枠組みで動いていました。
東京都も特区で、大田区は真っ先に特区に手をあげています。
国家戦略特区は、既存の法令の例外を認めようという「超法規的」法律です。
無理をしなければ通らないことがある、という事だと思います。

しかも、国家戦略特区は、昨年法改正してスーパーシティという仕組みを作りました。

スーパーシティというネーミングは、自治体(シティ)の枠を超える(スーパー)ということで、特区の和製英語のようなものですが、行政情報に個人情報、企業情報などを合わせた連携基盤を作って、企業に使わせようという仕組みです。

これを具体的に進めるための準備が、いま、東京都で始まっています。

情報は、固定情報だけでなく、日々刻々と動く、お金の流れや物流、人の移動、医療、教育、福祉など、あらゆる情報を想定しています。

東京都では、実証実験として、まちかどに設置するスマートポールと呼ばれる装置を設置し始めています。

このスマートポールは、双方向コミュニケーション機能と言われているように、情報発信だけでなく情報を吸い上げることも可能です。

下記の記事では充電出来たり、遠隔地にいるユーザーと映像・音声を用いたやりとり=Web会議ができるなど、利便性が強調されていますが、カメラと音声で私たちの情報を吸い上げることが可能なので、監視カメラ機能に音声も加わったもの、とみることができます。

新宿中央公園にこつぜんと姿を現した「スマートポール」の正体 | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

こうした仕組みが進めば、投資家は投資利益を最大化するための効率的なビジネスモデルを使って、いまよりさらに簡単に確実に利益をあげることができるようになりますが、誰もが、このビジネスチャンスを得られるわけではありません。

この仕組みが進めば、医療、福祉、教育、資産、所得、、、あらゆる情報を基盤データが蓄積するようになります。
マイナンバーで紐づけされた個人データが、入学、就職、保険、医療受診などに影響することはないでしょうか。

そもそも国家戦略特区法は、外国投資を呼び込むために作られた法律で、認められる事業も「外部からの投資を受けることが特に必要なもの」とされています。

外国投資家だけが儲かり、私たちが外国資本家の利益ために働くようになるということです。

水道民営化も水道事業は東京都の仕事ですから、今後4年の間には議論が始まると思います。

命の水が外国資本の手に渡った時、水道料金や水質は大丈夫と言えるでしょうか。

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住民の声が身近な自治体に届きやすいように、と地方分権が進められてきましたが、区民の声が大田区に届かないばかりか、大田区の声も東京都には届かず、東京都主導に変わっています。
そして、その東京都の持つ強大な権力は、都民が生きるためではなく、外国投資家の利益の為に使われるように変わってきています。

日本の経済の中心、経済のけん引役東京都に集まる財源を、都民が生きるために使うのか、外国投資家の利益の為に使わせるのか、
都政は本当に大切だと思います。

ところが都政の私たちの暮らしに直結する本質的な情報は、なかなか聞こえてきません。

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ちなみに、、、

*今回の定数は、大田区が1減でかわりに練馬区が1増でした。
ちなみに、都議会議員の定数が127になったのが、1981年の選挙から。
その頃(1980年)の東京都の人口が1,161万人です。
最近でこそ減っていますが、都の人口のピーク2015年には、1981年の約15%も増えています。各区間の調整より、都議会の定数事態の議論があってもよかったように思います。
そもそも、地価の上下やテレワークなど、経済政策で人口が移動する時代になりましたから、定数の要請も、経済的視点からかもしれません。

日本は、暮らすにあたって、最も大切な要素である都市のキャパシティが議論されません。ですから、マンション建設が進めば、人口がその地域に増えますし、テレワークという政策を推奨し、大企業がテレワークを進めると、都心から周辺部に人口が移転します。
経済が人口の移動をもたらすことを許していて都市計画が機能していないのに、人口と一票の数合わせにも疑問があります。

政策の失敗(意図)で人口が減って地域の都市機能が崩壊しても、その地域の国会議員が「一票の格差」で減って、代弁者が減ってしまう、あるいは居なくなってしまうからです。都議会議員の定数変更も、住民を巻き込んでの議論があって良かったと思います。