大田区の投資家利益を優先する政策が、格差を拡大させる要因となっている問題について
「大田区の投資家利益を優先する政策が、格差を拡大させる要因となっている問題について」議会質問しました。答弁・動画はおって公開します。
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基礎自治体は、行政は、いったい何をするところなのか、と大田区に問い直したくなる場面が増えています。大田区が社会保障の責任主体としての役割を忘れ、区民生活をどうやって支えようか考えていないように見えるからです。
松原区長が就任する前後から、一気に公共施設の指定管理者制度や利用料金制が導入され、福祉の分野を営利企業が担う民営化が進み、特区による規制緩和や、地方分権による裁量権の拡大の影響が大きくなります。
松原区長が就任後、土地の売買が増え、体育館や大森北一丁目開発などの事業計画が大幅に変更され、規模の大きな建設工事が目立つようになります。
大田体育館は、設計変更して大田総合体育館になり、するスポーツから観るスポーツで、収容人数が、3000人から4000人に増え地下1階地上二階が、地下2階地上二階の建物にかわりました。いま、大田総合体育館は、興業のための施設の色合いが強くなっています。
大森北一丁目の土地は、行政目的でなければできない土地交換までして手に入れましたが、行政財産から普通財産に変えて50年の定期借地権でSPCに貸し出し、駅前のどこにでもあるようなラズ大森という雑居ビルになりました。図書館は以前に比べ非常に狭くなっています。
伊豆高原学園は15年間のPFI。羽田の跡地は50年の定期借地でSPCに貸し出します。
認可保育園は株式会社が増え、保育士の低賃金が問題になりますが、民営化の効果の検証は一向に行われません。
地方分権で首長の裁量権は広がりましたが、大田区は、民間企業に公共市場を開放してお金儲けの手助けをするのがその仕事ではなく、住民福祉を支える社会保障の責任主体です。
大田区のような都市部は、アベノミクスや大田区の投資家のための経済政策で潤う富裕層がいる一方、規制緩和で非正規雇用や派遣・請負労働などの不安定・低所得者層が増えており、大田区が社会保障で区民生活を支えるセーフティーネットを張り巡らさなければ生活が困窮する区民がいます。
東京の豊かな経済は、区民のみなさんが、働き消費することで支えています。
豊かな経済から生み出される財源は、地縁や血縁の薄い都市部に暮らす区民の子育てや介護や障がいや住宅や医療などの社会保障や教育などに優先的に使われるべきなのです。国から湯風団体と言われながら、大田区は、認可保育園も特別養護老人ホームもたりず、住宅に困窮する人も、国民健康保険に入っていない無保険者もいます。平成26年度末のおよその試算ですが、大田区に75,044人いる75歳以上の高齢者のうち無保険者はおよそ、2,839人3.8%でした。
第二回定例会で、私奈須りえが「大田区が、足りない認可保育園、特別養護老人ホーム、障害サービスなどより、跡地や蒲蒲線、イベントなどを優先するのはなぜですか。」と質問したところ、
大田区は
にぎわいの創出、区民の利便性向上、大田区のみならず我が国の経済成長に寄与するまちづくりを目指して取り組んでいくと答弁しています。
そこでうかがいます。
社会保障は、富の再分配機能を持ちますが、放置されれば区民生活が困窮し格差が拡大することになります。社会保障の責任主体の大田区は、それを承知で、羽田空港跡地に165億円投入しながら、市場価格の9割引きで投資グループに50年も貸し出し社会保障に使わないのですか。
大田区から、安い地代で土地を借り受けて経済活動する投資グループ「羽田みらい開発」は、高い利益を上げることができるでしょう。
有利なお金儲けができる投資家と区民との格差を、大田区が作ったということです。
それでは、取り崩した165億円の羽田空港対策基金はどうやって積み立てたのでしょう。60憶円積み立てたのが松原区長が就任した2007年、80憶円積み立てたのが翌年の2008年。これらは地方分権で保育が自治事務になったことにより、その権限に見合う財源確保のために、2007年に住民税の定率化があり、また同じ年に、都区財政調整制度における特別区交付金割合が52%から55%に引き上げられたので、大田区の歳入は大幅に増えた年です。
大田区は、保育のための増税増収分を羽田空港対策積立基金に積み立ててしまったのです。
待機児童数は、2007年から144人、2008年242人、2009年314人、2010年402人と毎年増え続けました。待機児402人だった2010年の認可保育園のの定員8670人の運営系経費が奇しくも165億円です。どれがけ大きな金額が積み立てられたかわかると思います。この基金は社会保障のために取り崩されることなく確保され、跡地購入のために使われました。
大田区は、この社会保障のための増収分がありながら、民間保育園で待機児を解消すれば、補助金をうけられる国の誘導策にのって、一般財源を縮減し、保育園の民営化を進めてきました。保育園を営利目的で運営したことの弊害もいま次々と明らかになっています。
こうした投資家を有利なかたちで区民生活に影響を及ぼすのは羽田空港の跡地購入問題だけではありません。
リニア中央新幹線が、大田区上池台1、2丁目、東雪谷1丁目、石川町2丁目、田園調布2丁目、3丁目、4丁目の地下を走る計画です。
このリニア中央新幹線も、当時国が言ったように、投資家からみると、土地代不要、安い工事費の非常に有利な投資案件ですが、沿線住民は、地下トンネル掘削工事や鉄道の走行が及ぼす影響を心配しています。
そもそも、環境アセスメントが不十分で具体的な方策が示されていないうえ、知られていない活断層も存在するため、掘削することで地震を誘発するのではないかと指摘する専門家もいます。
国立国会図書館 調査及び立法考査局が、リニアの大深度地下使用の認可直後の今年10月20日に刊行したレファレンス「リニア新幹線の整備促進の課題―トンネル工事が抱える開業遅延リスク―」には、過去に御徒町のトンネル工事でも春日通りが陥没するなど、地下トンネル工事がそれほど簡単なものではなく、リニア新幹線のルート決定時の調査が十分だったかどうかは一概に結論づけられない。と指摘しています。
私も公聴会で、JR東海は、株主利益という私益を追及する株式会社なので、大深度地下使用が認められる「公共の利益のための事業」にならないのではないかと発言しています。
リニアのための3兆円の財政投融資が行われていますが、JR東海の設備投資残高は、5000億円に届きません。公共の利益と言いながら、財政投融資3兆円をリニア中央新幹線建設とは関係の無い、利殖に使い、株主に多大な利益を与えている可能性もあるのです。公共の利益のための事業と言うなら、私益をどれくらいまで許すのかなど、国は基準を示すべきです。
多くの区民が大田区や大田区議会に働きかけたこともあり、大田区が、大深度地下の認可にかかわる協議会で、次のように発言しています。
「区民の中央新幹線の路線上の基礎自治体として、区民の安全・安心で快適な生活を保障することが第一であるため、説明会や公聴会等で区民が懸念している①環境への配慮、②沿線住民および地権者に対して適切な対応を求めさせていただきます。」
ところが、協議会での大田区の意見に対して、JR東海はそれまでと同じ説明を繰り返し、その後も住民の要望する説明会も開催せず、説明もしていません。
そこでうかがいます。
大田区が指摘している説明会や公聴会等で区民が懸念している①環境への配慮、②沿線住民および地権者に対しての適切な対応が行われていないまま、国土交通大臣が、大深度地下使用の認可をおろしていることについて大田区は良しとしていますか。大田区は、国交大臣に認可の不当を申し入れるべきではないですか。それとも、協議会での発言は区民へのパフォーマンスで区民への適切な対応は本気で求めていなかったのですか。
羽田の飛行ルート変更案も経済利益から始まった事業です。
住民を蚊帳の外に、国交省の関係研究機関である運輸政策研究機構が2010年に検討結果を取りまとめ、ほぼその内容を元に都心低空飛行をはじめようとしていますが、内陸飛行してでも増便で便利にしてほしいという声は聞いたことがありません。
現在の羽田空港の飛行ルートは、一朝一夕でできたものではなく、戦前戦後を通じた長い歴史の中で、区民と区議会と大田区とが作り上げてきたものです。航空機事故があり、敗戦に伴うGHQによる空港とその周辺の接収、48時間強制退去、その後の騒音・大気汚染、空港移転。
ここから「海から着陸して、海へ離陸する」モノレールの内陸側は飛ばない。といった原則を大田区民が勝ち取ってきたのです。オリンピックや再国際化や横田空域返還、経済発展、などの言葉により、私たち大田区民が求めてきた本質を忘れかけさせた部分もありますが、羽田空港からの区民生活の安全と騒音含めた環境は、侵されるべきではなく、私たち大田区民が守るべき最低限の権利です。
羽田空港の供用を変えるには、大田区との協議が必要であるという国交省と大田区の文書が残っています。歴史的経緯からみても大田区長の発言が区民生活はもとより、首都圏、日本国民に与える影響は非常に大きいのです。
区長は、この羽田空港飛行ルート変更による都心低空飛行問題でも、区民の生命や住環境より、企業の利益ほかを優先するのでしょうか。
そこでうかがいます。
新飛行ルート案における大田区長の責任が非常に大きいことは文書によって明らかです。ところが、大田区長はその責任から逃げるかのように、その立場を明らかにしません。しかし、仮に新飛行ルート案が決まったとなれば、大田区長が協議に合意したということですし、今のまま態度を表明しなければ、松原区長が反対しなかったから都心低空飛行が始まったことになります。
隣の品川区長は反対を表明したそうです。
松原忠義大田区長は、新飛行ルート案による都心低空飛行について、賛成ですか、反対ですか。その立場を明らかにしてください。態度を表明しなければ、賛成側に立っていると区民からはとられるでしょう。
区長の判断が、区民のみならず、都民、国民への将来にわたり大きく影響するという責任、役割を自覚したうえでお答えください。
水道はじめ、世界は、民営化ではなく再公営化に舵をきっています。
民営化が、企業利益という無駄なコストを税金や利用料金で負担しなければならないことや、企業は利益を大きくするために、人件費はじめコストを下げて、サービスの質を低下させてきたことが明らかになってきたからです。
ところが、大田区は、今でも公の財産や仕組みにより、一部の投資家や企業が利益をえられる事例を増やしているのに、「公民連携基本指針」を作ってさらに民営化を進めようとしています。
指針案には「公的機関か民間企業かを問わず社会課題の解決に向け、それぞれの強みを生かし連携することは国際社会の潮流であると言える」と断言していますが、世界は、再公営化です。何を根拠に言っているのでしょうか。
指針案の通り「具体化したら面白いようなことまで「前向き」な姿勢で取り組んだり」「国際的な目標の実現まで大田区に課せば」企業は次々新規参入分野を見つけビジネスチャンスを広げることができるでしょう。
そうなれば、私たち区民はさらに税負担を強いられたり、私たち区民の財産が特定の企業の金儲けに提供されたりすることになります。指針案通りになれば、
・民営化した分野の企業の情報は不透明で区民や議会からはさらに見えなくなりますが、
・区の情報は公平性・透明性を求められ、企業は自由に行政情報を入手してビジネス参入のために使うでしょう
・ところが、いったん、企業が手に入れた情報やノウハウが企業のものになってしまう場面がふえています。
・しかも、企業が担った事業は、企業がリスクを負わずに利益を確実に上げられるようにしようとしています。ちょうど、いま、参議院で審議されている水道法の改正案のようです。
そのうえ、PFI法の改正やセブンアンドアイホールディングスとの包括契約のように、国も大田区も、議会制民主主義の意思決定における地方議会の役割を縮小させ、首長と企業との協議で、予算の承認以外できるように変えてきています。
しかし、経済活動においては、リスクを負うものが利益を得るというのが原則です。
土地や施設を使っていながら、賃料・地代を払わず・あるいは、破格な値段で借りて商売できる区民がどれだけいるでしょう。認可保育園、駐車場、羽田空港跡地、ラズ大森の大森北一丁目開発、体育館、伊豆高原学園、プールなど、それがいま民営化ふえています。
こうして有利なお金儲けができる株主や投資家と私たちとの格差が拡大しています。みんなのことで誰か特定の人がお金儲けすることを私たちの社会は良しとしてきませんでした。だから、誰もが生きる上で欠かせない水道や子育てや介護や教育や医療などのサービスは、株式会社など営利セクターではなく、公や非営利セクターで行ってきたのです。
そこでうかがいます。
大田区は民営化の効果と課題について検証するといいながら検証もしていません。むしろ、コストは下がらず、現場の人件費はさがり、区民の代表である議会が意思決定に関与できなくなる官民連携を大田区はさらに進めるのですか。