遠隔自治体間連携で特別区長会は何を目指すのか
「特別区長会 全国連携シンポジウム~遠隔自治体間連携の可能性と展望~」に参加した。盛況で東京区政会館の20階の会議室がいっぱいになっていた。区長会の問題意識は、法人住民税国税化という、ほぼ23区をターゲットにしたような富裕論に対抗するために、東京と地方自治体が連携しようというもので、理念として否定するものではない。しかし、自治体間連携が何を目指しているのかあいまいだと思ったのは私だけだろうか。
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二部のパネルディスカッションで、自治体間連携の「意義」「目的」「必要性」「可能性」「めざす方向性」をテーマにしていたので、そもそも無くてこれからなのかもしれない。
しかし、少なくとも、二部のパネルディスカッションで、特別区長会会長から、
・(法人住民税一部国税化など、)いわれのないenby(妬み)により1兆3千億地方に配っている。
・東京の持っている消費力、50兆円の付加価値を地方と連携して、、面と面、win win の具体的な関係をやりたい。
参加した北海道や京都自治体からの、
「食糧やエネルギーを輸入に頼っていては大変で、自給率をあげなければならない。」
「23区は大きなマーケットであり、期待している」
といった23区の人口規模をふまえての消費地=マーケットとしての期待があることを踏まえれば、新しい経済圏の話に行くのではないかと思われる。
しかし、政府はTPPを締結しようとしていて、東京はすでに、国家戦略特区という規制緩和のしくみにより、TPPのための法整備が着々と進んでいる。
TPPや国家戦略特区は経済障壁を取り払う政策なので、海外から大量のヒトやモノが流入し、労働力、消費財やエネルギーの国産を政策的に貫くことが今以上に非常に厳しくなる。
地域間連携は、たとえば、山形県長井市の起きた場自給圏構想のように、グローバル資本に対する一つの草の根的対抗策の1つとして有効だと思うが、23区は、これをめざそうということなのだろうか。
TPPなど政府が進める政策に対する、自治体としての姿勢はどうなのだろうか。
一方で、国家戦略特区に手をあげ、規制緩和を進める大田区のような自治体があり、その自治体の首長も含めた23区長会が言う地域間連携とは何を目指しているのだろう。
規制緩和も大賛成、で、6次産業化で輸入した原材料の加工品を地域間連携で購入するだけなら、先日地方が言っていた自給とは程遠く、自由競争経済への行政の介入による売り上げ確保なりかねないため非常に気になる。
地方自治体の疲弊は、政府の一極集中政策の結果生じていることだが、政府は東京一極集中政策を続けている。
本来議論し検討すべきは、
●地方分権であれば、地域が自立できる1~3次までの産業構造の構築と雇用・税制・財政・都市計画などの政策整備。
●国主導、中央集権なら、国が自治体の自立に対し財源的に責任を持てる統治機構。
など、日本の統治機構をどうすべきか、だろう。
しかし、残念ながら、現状は、かたちだけ、地方分権で社会保障の責任は基礎自治体に押し付け、ヒトモノカネを東京に一極集中させ、地方にヒトモノカネは不足し、集まった都市部の財源は、国に吸い上げるため社会保障にまわらず、都市部も地方都市も中身は違うが疲弊している。
国も地方も「規制(法による政策)」の力を忘れ、未だに神の見えざる手を信じさせられている。
●人口減少で、地方は年金が消費を支えているが、その高齢者も減っていく。
●地方だけでなく日本をささえる労働力人口もへっていく。
●それを補うかたちで、政府は外国人労働者を受け入れを緩和してきているが、今後の人口推計や社会保障需要にこの外国人労働者がどうカウントされるかが曖昧になっている。
こういう現状において、地域間連携を端に政策の力で何をすべきか、自治体自ら取り組むことは、価値があると思う。
まずなすべきは、今後の政府の政策=規制緩和やTPPが進むことにより、自治体に何が起きていて、今後、どのような影響がおよぶのか、明らかにすることではないだろうか。
当日は、内閣府まち・ひと・しごと創生本部の次長もきていた。
疲弊した地方自治体のための施策を23区のために活用するのは簡単ではない。
産官学金言連携。産官学に加え、金融、労働界、言論=マスコミで連携するという。
ここに、私たち市民(国民)は、労働力でしかなく、発言するのはマスコミになっていることにも注目すべきである。