大田区職員給料はどうあるべきか 職員給料引き上げ議案について

今回、大田区は、大田区職員と議員はじめ区長、特別職などの給与、報酬について同じように引き上げてしまいました。

私奈須りえは、公務員や議員はじめ区長、特別職などの給与、報酬は、これまで以上に区民の理解と合意形成が必要な時代に入っていると考えています。
なぜなら、公務員や議員・長についての在り方や考え方が、以前とは大きく変わってきているからです。
しかも、公務員として大田区行政を担う職員と特別職などとして区政に関わる区長、議員などは同じ視点で論じることはできません。

にもかかわらず、今回、職員も区長、議員も特別区人事委員会勧告をもとに引き上げてしいまいました。昨年も連動して引き上げていますが、区長、議員、特別職の給料報酬はいつから連動するようになったのでしょうか。

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この間、高給で、サービスも悪い官から、よいサービスを安いコストで提供する民へといったイメージで民営化や民間委託が進められてきましたが、これらが大田区政、大田区財政にいったい何をもたらしたのか、それに伴い大田区民生活にどのような影響がおきているのかについて検証しなければならない時期にきていると考えています。

そうした視点から見れば、大田区職員給与をコストとしかとらえず、安ければ経費削減になり良いといった、経済の視点だけでとらえることは問題があると考えます。
同様に、大田区職員の給与を引き上げることには賛成ですが、そのもととなる特別区人事委員会勧告の特別区内の民間従業員の給与水準と均衡させることを基本とした報告・勧告には違和感を覚えます。
どのような根拠でひきあげるとしたかということは、今回の大田区職員の給与に限らぬ、大田区の民間従業員など賃金をどうとらえるべきかという意味で非常に重要です。
今回、特別区・国とも、民間があがったから公務員も上げるという勧告です。
しかし、民間全体の平均給与は必ずしも上がっておらず、抽出したモデルにおいて上がっているだけのことです。
特別区も特別区内の企業規模50人以上かつ事業所規模50人の母集団事業所から抽出した結果です。非正規雇用が半数近くを占める現状において正規雇用職員と比較し、中小零細企業中心の町工場が製造業をささえるものづくりのまち大田区が、その全体から見ればわずかな企業規模事業所規模50人以上の中から抽出したその正規雇用の職員給与と比較し、格差があるからそれを是正しましたという職員給料を区民にご理解いただくには無理があります。
しかも、特別区人事委員会の調査には、ベースアップした事業所の割合が増えたと記されていましたが、そもそもベースアップの慣行がない事業所が6割を超えていることにも注目する必要があります。定期昇給の仕組みの無い事業所も少なくありません。

いまや、非正規雇用が半数を占め、平均所得の低下だけでなく雇用そのものが流動化、不安定化しています。大企業のホワイトカラーなどとの差、二極化も進んでいます。

一部の比較的恵まれた層との賃金比較をして公務員の処遇を決めるやりかたは、非正規雇用や、ますます厳しくなっていく中小零細企業に働く区民に目をつぶることですから、区民からのいわゆる公務員批判はさらに激しく大きくなり、民営化や民間委託をさらに進めることになるでしょう。
それでは、いつまでたっても、現在おきている民営化民間委託はじめ経済利益最優先の新自由主義の本質的な問題を区民にご理解いただくことはできません。
しかし、それでは、労働者全体の平均給与と比較し、それに合わせて公務員給与を決めるべきでしょうか。
グローバル化やTPPなどさらなる規制緩和が進んでいる現状の大きな流れは、雇用をさらに流動化させ一人当たり賃金をさらに減らす方向でうごいています。このまま民間給与と連動させれば、公務員給与はさらに下がっていくことになるでしょう。
そういった問題意識から、区長にどのような問題意識でこの議案を提出したのか議案質疑しましたが、答弁は、民間平均給与と比較した人事委員会勧告を最大限尊重する、でした。
いま、特別区人事委員会がおこなっていることは、この民間の雇用の流動化に公務員をあわせようとしているということです。
大田区は、自由競争経済理論の中に公をおき人件費をコストとしか考えないことを良しとしていいのでしょうか。
だからと言って、いまや少数になっている一部の正規雇用の給与実態との比較から、大田区職員の給与をきめてよいことにもなりません。
区長には、大田区の行政のトップとして、 公平無私、全体の奉仕者たる大田区の職員は、この程度の暮らしを支えるに必要なこの程度の給与が必要である。また、これは、大田区ではたらく人の重要な基準となるべき水準である。それらを実現するために大田区が何をすべきか、という視点で区政に取り組んでいただきたいと要望し、賛成といたします。