選択的夫婦別姓に欠ける致命的な環境整備「一人でこどもを育てる、生きる、に十分な賃金等水準問題」

国会で、選択的夫婦別姓について、議論が行われるようなので、あらためて調べてみました。賛成・反対、双方の意見に欠けていると感じたのが、賃金水準を引き上げる議論です。

過去の、国会の議事録を調べると、選択的夫婦別姓問題が、
家族単位だった、賃金、社会保険、年金、税制度を、
個人単位にしようとする議論の一つ、だというのがわかります。

家族単位の賃金、社会保険、年金、税制度は、(夫婦とこども二人のモデルが時代に合わない、と言われますが、)
夫一人の賃金で、妻とこどもが暮らしていける、世帯をモデルにした制度ということです。
これを、個人単位にしようとする中で、選択的夫婦別姓も、論じられているのですから、

夫が一人で働いても、妻が一人で働いても、
◆一人で、こどもを育てていけるだけの賃金
◆一人で、年を取って安心して暮らせる年金
◆一人で、税や年金や社会保険料を払っても、生活していける手取り
を政府が保証して、初めて、安心して選択的夫婦別姓にできるのではないでしょうか。

選択的夫婦別姓問題を報じるニュース等は、
別姓を導入していないのは、日本だけ、と言いますが、

海外は、既に、賃金、社会保険、税制などが、個人単位になっていて、
一人で暮らすに十分な賃金などが整っているのではないでしょうか。

例えば、
日本の派遣労働の拡大は、海外に比べ、急速で、対象範囲が大きく
貧困化の深刻な要因になっています。

ところが、EUでは
福田康夫 一橋大学名誉教授によれば、

(1)同一労働同一賃金が原則
(2)非正規は「一時的」

で、
わが国の非正規雇用自由化に対し、
・EUは「濫用の防止」措置の導入を各国に義務付け

(1)更新の正当な理由、
(2)最長総継続期間、
(3)更新回数、
のいずれかの規制措置の導入を各国に義務付けることで、労働規制の緩和に一定の歯止めをかけているそうです。

・親の家に同居して家賃負担が無いから、
・夫の賃金があるから、

なんとか暮らしていける程度のいまの賃金水準のまま、選択的夫婦別姓を導入し、個人単位の社会保険、年金、税制の独り歩きが進めば、

・こどもを育てるに十分な、
・一人で安心して年老いることができる、
・一人で税や年金や社会保険料を払っても、生活していける

賃金水準・社会保障水準には、とうてい足りませんから

結婚しない、こどもを持たない人が、ますます増えるのでは無いでしょうか。

一人で生きるに不十分な賃金と社会保障水準のまま、選択的夫婦別姓を導入することは、結婚や、こどもを持つ選択を、さらに狭めることになるのです。

よりふさわしい根拠がありましたので、そちらも例示させていただきます。

平成12年9月26日
当時の森喜朗内閣の時に、「男女共同参画審議会」に諮問した答申

平成11年8月9日付け総共第267号をもって諮問された
「男女共同参画社会基本法を踏まえた男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の基本的な方向」に関し、男女共同参画社会基本法に基づく男女共同参画基本計画を策定していく際の基本的な考え方への調査審議の結果

以下答申より抜粋

【具体的な取組】

  1. 我が国の社会制度・慣行には、男女が置かれている立場の違いなどを反映し、あるいは、世帯に着目して個人を把握する考え方をとるため、結果的に男女に中立的に機能していないものが少なくない。このため、男女共同参画の視点に立って、これらが中立的に働くような方向で見直しを行う必要がある。例えば、夫婦同氏制など家族に関する法制配偶者に係る税制国民年金制度における被用者の被扶養配偶者(第3号被保険者)遺族年金の在り方夫婦間での年金権の分割健康保険制度における被扶養配偶者(介護保険制度の第2号被保険者を含む)の扱い税制や社会保障制度の所得限度額を目安として決められることがある企業の配偶者手当等、個人のライフスタイルの選択に大きなかかわりを持つものについて、個人の選択に対する中立性の観点から総合的に検討を行い、世帯単位の考え方を持つものについては個人単位に改めるなど、必要に応じて制度の見直しを行うべきである。また、これらの制度は相互に関連しており、総合的な視点からの検討も必要である。それに資するため、諸外国における社会制度について総合的な視点から調査研究を行う必要がある。

    さらに、女性従業員のみへの制服の着用など、様々な慣行の中でも、性別による偏りにつながるおそれのあるものは、国民一人一人が積極的に見直していくことが望まれる。

下記官報ご参照 第151回国会 参議院 本会議 第34号 平成13年6月22日 | PDF表示 | 国会会議録検索システム

平成13年6月参議院 国民生活・経済に関する調査報告より