また、中小企業向けのガイドラインも作られていました。
CSRは、どちらかといえば、財政・人に余裕のある、規模の大きな企業が取り組みやすいといえます。資金や人に余裕のある大企業が、CSRに取り組むことにより、経済のグローバル化に伴って益々国際競争力をつけ、中小零細企業との格差がついてしまうことへの危惧がありました。
CSRへの取り組みは、仕入先や下請けにまで及ぶため、大企業がCSRに取り組むことで、仕入先や下請けである中小零細企業に影響が及びます。厳しい品質管理や、労働環境の整備などの基準をクリアできない中小零細企業が、企業が、持続可能な社会を構築する一員として社会的責任を守ることは必要ですが、大企業のCSRへの取り組みの影響を受け、切り捨てられてしまうことはあってはなりません。
そうした視点から、中小零細企業が、CSRにどのように取り組んでいけばよいのかは、課題のひとつでしたので、中小零細企業にとってのCSRということでの検討がなされ、既にガイドラインが作成されているということに驚きました。
指標については、中小零細企業が使いやすいガイドラインを心がけたといういことで、手間、コストのかからないものといった側面が大きいように感じました。そうした部分については、GRIが17人という少ない人数の組織であるため、GRI自身もリポートを作り、検証したそうです。
大企業がCSRに取り組むことによる中小零細企業への影響については、大企業が、自社のCSRの取り組みから、安易にそうした下請け企業を切り捨てるのではなく、存続といったことについても考えていかなくてはならないのではないかということでした。
例えば、企業の海外拠点が児童労働を行っていて、それが問題になれば、企業は海外拠点を閉めてしまいます。しかし、そうした対応は、その地域への雇用をなくしてしまうというデメリットを生じさせます。安定的な雇用の提供もまたひとつの社会的責任であるという指標に照らし合わせることで、こうした問題がクリアされていきます。
この、中小零細企業のCSRという問題は、次の視察先であるフラマン政府のCSRへの取り組みが、もう一つの答えのヒントを提供してくれました。
【今後に向けて】
報告書は、説明責任とリスク回避のために行うという体外的な面と、各部署内や部署間の問題の改善という経営的な観点から作成されています。様々なステークホルダー何を知りたいのか学びながら、今後も改善をしていくそうです。
また、現在、CSRマネジメント規格推進機関として、主にステークホルダーが参加して構成するISEA(社会倫理説明責任研究所)が開発・公表しているAA1000。ISO(国際標準化機構)のISO9000S(品質管理システム)、ISO14001(環境マネジメントシステム)、SAI(国際労働規格)のSA8000やその第三者認証制度を通じて、国際労働機関(ILO)条約や世界人権宣言、こどもの権利条約に基づき、児童労働や強制労働の禁止等、労働環境の改善を企業に求めているなど様々な規格があるが、GRIがイニシアティブをとり、各機関の協力体制を構築していかなければならないと考えているそうです。