「都市計画マスタープラン」にかかげたからといって緑地が保全されるはずもなく、緑地を税金で買い支える事にも限界があります。
本気で緑地の保全に取り組むためには、社会的な合意形成とともに強制力のある規制が必要になってきます。
大田区の緑の保全への取り組みの評価はどうでしょうか。
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緑の保全の問題についてみてみましょう。現在、「都市マス」改定にあわせ、「みどりの基本計画」も策定中です。
■大田区の緑被率の推移■
大田区の10年前の緑被率は20.3%。緑被率には樹木地に加え草地が入るため、多摩川河川敷や羽田空港などが算入できる大田区は比較的高いパーセンテージになりますが、いわゆる緑豊かな地域であるという実感は無いでしょう。
この10年で緑被率は約1%減少しているそうです。減少面積にして60万㎡(59.46㎢×1%=0.6㎢)東京ドームの約13個分弱の緑が失われたことなります。
この間、公園として大田区が整備した面積が約1.5万㎡ですが、減少した緑地面積に比べわずか2.5%に過ぎず、公園整備することの必要性は十分認識するものの、公園整備により減少する緑地を補うことはできないことがおわかりいただけると思います。財源にも限りがあり、緑地保全を土地購入でまかなっていくような余裕は到底あるとは言えません。
■保護樹林・保護樹木■
また、区は、保護樹林、保護樹木といった指定を行っています。
平成10年3月以来、保護樹林は56か所から71か所に増え、保護樹木は527本から973本に増えているものの、伐採についての強制力はなく、この間指定されながら伐採されている樹林や樹木も少なくありません。貴重な緑を保全していただいている区民の皆さんへの負担軽減策として一定程度の動機づけにはなるものの、開発に対抗しうる緑の保全の決定打とは言い難い制度です。
■緑を保全できなかった佐伯山■
緑の保全のまちづくり政策としての失敗例と言えば、佐伯山が良い事例であると言えるでしょう。
貴重な自然林の残る佐伯山にマンション建設計画が明らかになりましたが、大田区は、保全のための都市計画上の網かけを何も講じてこなかったため、開発業者が樹木をすべて伐採してしまいました。
その後、大田区の斜面地条例により違法建築が認められ建築確認が取り消しになり、事業者は当初のマンション計画面積を確保できなくなったことから、開発を断念しました。この条例は、斜面地に集合住宅を建設する際に3mごとに平均地盤面をとることで平坦地より見かけ上の高さが高くなることを防止するための条例です。
結果、大田区が更地になった土地をマンション開発業者の依頼により緑の保全と称して購入していますが、自然林のまま保全することができなかったことが悔やまれます。