基礎的自治体の役割と民間委託等の影響〜大田区総合体育館を指定管理者制度、利用料金制採用にした結果〜

平成20年3月31日をもって建て替えのため閉館となった「大田区総合体育館」は、来年6月にオープンを控えています。
老朽化した施設が新しくなるため、多くの区民が、その利用を心待ちにしています。
ところが、教育委員会は、先日、小中学校のPTA会長副会長を集め、利用が厳しくなる(これまでのような利用ができなくなる)ことを告げたと言います。

新しくなり、設備も充実した大田区総合体育館ですが、利用の制約を受けなければならない理由はどこにあるのでしょうか。

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そこで、教育委員会に、利用がどのように変わるかを聞いたところ、優先順位がかわるという説明を受けました。

新しい体育館使用許可の優先順位は、

①トップレベルの見る(大田区の表記のまま)スポーツ
②区主催事業
③区民利用

大田区総合体育館は、これまでの体育館の目的である「するスポーツ」に加え、「見る見るスポーツ」というコンセプトが加わったことにより、トップレベルの試合を誘致することになると言います。

こうしたトップレベルの試合は、9月から2月に集中しており、その期間、区民が利用できにくくなることがあるというのです。
特に、週末の利用が厳しくなると言います。

こうした背景には、大田区が当初3000席程度の規模だった体育館の計画を平成20年に4000席程度の増やしたことに大きく関係しています。

その際の、席を増やした理由として大田区はトップリーグの試合を誘致することをあげています。

観客席を3000席から4000席に増やすことにより、建設コストは3億から5億かかると当時大田区は説明しています。

私は、体育館の規模が大きくなるということについては、計画変更が平成20年当時開発観光対策特別委員会に報告された際に、「基礎的自治体が行う体育館の役割」という視点から考えれば、トップリーグの試合を誘致することが区民利用を制限する恐れがあるのではないかと考え、委員会において質問しています。

当時の私の

私の
「区民利用が制限されてしまうのではないか」
という質問に対し、  

大田区は
「決して区民利用が制限されるものではない」

と答弁しています。

しかし、今回のPTA会長・副会長に対して大田区が、「使用が厳しい」と伝えたことは、この答弁を覆すことにはならないでしょうか。

区民利用を妨げない形で試合を誘致することと、試合を誘致したのち、あいている枠を区民利用に開放することとは、その基本的な使用に関する考え方が100%異なります。

一方で、こうした利用の制限がおきている背景には、大田区総合体育館の事業手法が大きく影響していると考えています。

大田区は、大田区総合体育館において、指定管理者制度の利用料金制を採用しています。

利用料金制は、公共施設の使用料を指定管理者の収入とすることができるしくみです。指定管理者の努力により利用料が増えれば、それはそのまま指定管理者の収入になり、利益につながることから、事業者のインセンティブになるとともに、施設活用に効果があると言われています。

大田区総合体育館を指定管理者制度の利用料金制にすることは、平成22年の第一回定例会において、議決されていますが、その際に、大田区は、大田区総合体育館における収益事業の利用料は、区民利用の10倍程度と説明しています。

こうした利用料金設定は、同じ利用であれば、区民利用より、収益事業を選択することになるため、私は、委員会において、区民利用が阻害されないかを確認したのです。

平成22年第一回定例会における大田区総合体育館の指定管理者制度と利用料金制採用の条例議決時には、それを確保するために、下記を申し添えたうえでの条件付き賛成をしています。

体育館条例の利用料金は、入場料徴収の場合とそれ以外とに分けて設定していますが、入場料徴収の場合の方が10倍以上高く、指定管理者が収入を上げようとすれば区民利用を阻害することにもなりかねません。区民利用を阻害しないためにも、入場料徴収する利用者を一定程度制限する必要があります。同様に、指定管理者の自主事業についても、利用料や参加料の制限を設けると同時に、自主事業枠の適正な設定が必要です。

残念ながら、現段階での大田区の区民への説明は、議決時に議会に示したものとは程遠く、現在、大田区に対して、利用枠における収益事業の割合について、旧体育館の実績と、新体育館の想定の数値を出すよう求め、答弁内容が守られているのかどうか確認をしているところです