入札の傍聴ができない大田区(その2)

以下、現状における入札や契約の課題についてその一部にふれます。

■区民の視点に立っていないわかりにくい公表方法

大田区は、HPにおいて、入札適正化法による透明性の確保に努め、一応、公表をしていますが、大田区のHPをご覧になるとわかると思いますが、非常にわかりにくい公表のしかたです。

入札・契約を希望する事業者が、情報を入手するには良いのかもしれませんが、区民が入札・契約状況を知る視点で見れば、非常に不親切です。

事業者の方へというバナーから入札情報のサイトに入るということが、入札適正化という視点に立ってないことを象徴しています。

http://www.city.ota.tokyo.jp/jigyousha/index.html

■専門用語がさらに内容をわかりにくくしています

しかも、使用されている用語から具体的な入札状況を知ることはほぼ不可能でしょう。

たとえば、先ほどの事業者のサイトから
事業者の方へ→契約情報→工事→工事入札結果

を見ると、制限付き一般競争入札と指名競争入札という言葉が出てきます。

制限付きとは、「事業者のランクを指定」したうえで、大田区の場合、「区内」に限定していますので、入札案件ごとに、どの事業者に応募資格があるかはすぐにわかります。

指名競争入札は、区から声のかかった業者間での入札です。

結果として、大田区の多くの入札や契約が、顔の見える関係の中で行われていることがわかります。電子入札にしても、入札室で入札を行っても、談合を完全に排除していることとイコールではないのです。

■自治体における入札や契約の際の「区内」限定の意義

私は、「区内」をすべて否定するつもりはありませんが、「区内」に限定するのは、区内産業の育成であり、区内経済、雇用への波及効果を評価することであるととらえています。

・区内産業育成の視点から

公共事業という「レベルの高い」事業を受注することで競争力をつけ、より大きな案件を受注できる力をつけていただくということです。

しかし、現在のしくみは、顔の見える関係での競争になり、囲い込みが保護になってしまう危険性が否定できません。

TPPなどという話も出てきていますが、その是非はともかく、将来的に海外の土木や建設工事を受注できるだけの力を持たなければ、止めることのできない「グローバル化」には対応できないでしょう。

・区内経済、雇用への波及効果

については、緊急経済対策の視点で報告しています。

http://blog.goo.ne.jp/nasrie/e/dfa0d8d2f50f82ea83936e0bfdd56732

また、随意契約についても、その理由が不明瞭で拡大解釈される恐れがあります。

■随意契約の理由の適正化

たとえば、随意契約という欄をみると高額な契約も随意契約で行われていることがわかります。

自治法で随意契約を認めているのは下記の様な時ですが、そのほとんどが2号と5号であることがわかります。

ところが、入札に適さないとしながら、随意契約の報告には、なぜ入札に適さないのかという理由は示されません。

専門的知識を要する契約において、特定事業者だけがその技術や製品を持っているため入札に適さないとしているのであれば、それを公表することが重要です。

WEB上に公表すれば、多くの目にさらされることになり、入札に適さない理由が、確かであるかどうかの確認にもなります。

※ 自治令第167条の2第1項

第2号:契約の性質又は目的が競争入札に適しないものをするとき

第5号:緊急の必要により競争入札に付することができないとき

第6号:競争入札に付することが不利と認められるとき

第7号:時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき

入札の傍聴不可という大田区の現状は、区民に入札や契約が適正であることの確保のためのしくみの構築が不十分であるということを示しているのではないでしょうか。