大田区は、掘削開始後、想定を上回る量のアスベスト汚染土壌を処理しなければならないことが判明し、それにより、多額の工事費用がかかることを理由に中断したと説明しています。
今回の工事は、着手し間もなく、飛散防止策を講じずに工事中断、工事再開後ひと月余で中止なっています。
このような事例は、私が議員になってから初めてのことです。
工事のどこに問題があったのでしょうか。
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■これまでの指摘を無視した結果、工事を中止■
大田区は、10mごとに行った土壌調査をもとに工事の施行計画をたてましたが、10mメッシュ(一部5m)では、その間の土の中の様子はわからないと指摘してきています。 (2009年8月8日活動報告より)
昨年、大田区が飛散防止策をとらずに、土壌掘削した際に、超党派議員有志が、今後の改善策について大田区に申し入れた際にも、10mメッシュの間がどうなっているのかわからない。掘り起こしてみたらアスベストが大量に出てくることはありうると区に申し入れています。 (2009年10月29日活動報告)
こうした指摘があったにもかかわらず、工事を断行し、掘ってみたら予想外にアスベストに汚染された土が多くて費用がかかるので止めることが通用するのでしょうか。
■責任は誰がとる!?■
今回、区は、事前に指摘されながら、その指摘を無視する形で、工事に着工し、指摘どおりの結果になって工事継続を断念せざるを得なくなったわけですが、それでは、思っていた以上にアスベスト土壌があり多額の工事費用がかかるのでやめますという説明が果たして通るのでしょうか。
判断ミスの責任はだれが取るのでしょうか。
■計上した4億円余はどうなる!?■
一方で、アスベスト土壌対策費用として予算計上した4億円余はどうなるのでしょうか。
4億円余をかけて土壌対策を行う目的は、出張所建設と産業支援用地としての確保ですが、出張所は建設できるものの、産業支援用地としての活用はなくなっています。
このような事態になっても計上した4億円余は使い切るというのでしょうか。(大田区のアスベスト対策費用は埼玉県が計画している処理費用に比べて、異常に高いことがわかっています:同程度の面積で1/10程度)
そもそも、アスベスト工場跡地を購入した区の責任が問われるべきですが、その後、この土地周辺に環境被害者が多くでているにもかかわらず、土壌調査までして、多額の費用をかけて土地活用計画をたてたことへの責任も問われるべきではないでしょうか。
■中止の判断が遅かった■
今回の決定に先立ち、私は、1月19日の時点で、現地に調査に行っています。
出張所建設予定地からは、大量の杭が見つかっており、今後、出張所建設に当たっても、杭対策としてさらに費用がかさむことが予測されることは、かなり前の時点でわかっていたはずです。
今回、区は、出張所建設用地部分全ての土壌アスベスト置換工事を終了させた時点で、工事の中止判断を行っています。
しかし、アスベストが予想に反し、大量に見つかった時点で、また、杭が発見された時点で、工事を中止し、その後、土地活用の方針を再検討すべきではなかったでしょうか。
対象地近隣には、大田区の圃場(樹木などを植えておく場所。樹木の移設や建て替え工事の際の一時避難所などとして利用している)があります。
例えば、圃場を大森南に移転し、出張所建て替え用地を現在の圃場に移転するなど他の方策も検討すべきではなかったでしょうか。
アスベスト土壌対策費用が多額かそうでないかは、全体の金額ではなく、土地面積に対して、どの程度(いくらくらい)までが妥当であるかを判断すべきですが、大田区は、どうも、この工事にいくらまでは支払えるといった判断をしているかのようにも見えます。
■安全な工事は行えたのか:密閉する必要はなかったのか■
また、今回の工事中止は、安全性の確保と工法の関係からは全く言及されませんでした。
大田区は、コンクリートにより封じ込めるとしている部分について、飛散性アスベストとして扱い、プレハブを建設し、密閉状態の中で除去するとしていました。
今回、掘削した範囲が、予想外にアスベストが大量に発見されたということになれば、密閉して除去すべきで、単なる湿潤でよかったのかという問題もでてきます。