第一種住居地域に出されている大型店の出店

大田区議会第三回定例会に提出された陳情から

「住宅地に大型店舗を出店することに対する指導」に関する陳情が都市整備委員会に提出され審議が行われました。
 
 大田区池上の第一種住居地域にスパーマーケットの出店計画があります。
 1000㎡を超える大型店舗の出店は、大店法という法律により、大田区の場合は、出店者に対し東京都へ以下のような届出を義務付けています。 

(1)開店時刻、閉店時刻、年間休業日数及び業種
(2)交通手段別の来店見込み客数(平日休日別)
(3)駐車場に案内する経路
(4)駐車場・駐輪場の利用可能時間帯等
(5)廃棄物及びリサイクル対象物の保管・処理対策
(6)騒音と対応策
(7)バリアフリー対策
(8)振動・臭気・照明・地域景観との調和、その他の生活環境に関する特記事項

 区民の意見は、直接東京都へ提出することになっている一方で、東京都は地元自治体(区市町村)に対し必ず意見聴取を行わなければならないことになっています。
 現実には、上記のような項目はありますが、それらが法律上満たされているかどうかを、各部署が確認を行うだけで、要件を満たしていれば、出店を判断したり、制限したりするものではありません。

 しかし、大型店舗を出店する場合、地元商店街との営業競合関係や地域住民の住環境を乱すといった視点から、反対運動がおこることがあります。

 そうした場合にも、行政は、出店者と地域住民との協議を促すのみで、基本的には、双方に中立な立場をとります。
 協議の結果、開店時間を短くし、深夜営業を控えたり、車の搬出入についての工夫をしたりということはありますが、通常は、出店そのものを取りやめたりすることにはなりません。
 
 今回の場合は、特に、建設計画のある地域が第一種住居地域であることから地域住民は、住民の安全と環境保全の確保から出店の見直しを要望しています。

 大田区の場合、マンション紛争などの、民間と民間(=民民=マンション業者と住民)の利害関係の問題は扱わないとしていました。
 スーパーマーケットの出店も同様に扱われる可能性がありましたが、こうして、陳情で取り扱われたことは、これまで、民民ですませてきた紛争として切り捨てられてしまってきた問題を、「まちづくり」という自治体として取り扱うべき課題であるとの認識に立てたという点では、一歩前進であると、私は、とらえています。

 特に大田区は、これまで、地域特性をいかしたまちづくりに行政として積極的に取組んできませんでした。地域の特性をより鮮明にすることで、まちを暮らしやすくする。住みたいまちに変えていくことは、個人の努力だけでできるものではありません。
 土地を個人所有ととらえ、自分の土地ならなんでもして良いという発想から、大田区も、地域のなかで、地権者のまちなみへの責任や規制についても考える時期にきているのではないでしょうか。

 そうした意味では、これまでの規制緩和型一辺倒の都市計画・地区計画から、規制制限型の都市計画・地区計画を選択する地域がもっと出てきてもよいのではないでしょうか。

 大田区では、田園調布3丁目を中心とした地域や南千束1丁目を中心とした洗足池周辺地域が、建築物の用途を制限したり、緑化についての具体的な制限をかけたり、高さ制限を行ったするなどしています。

 陳情は、残念ながら、継続審議となりましたが、今後、更に、まちなみの保全や誘導に対する可能性への議論が深まることを期待しています。

 あなたの家の前に突然「スーパー」が「高層マンション」が建設予定になったら、一体どうしますか?


なかのひと