区長、副区長、教育長、監査委員、行政委員会の委員、議員、職員などの給与・報酬の引き上げ議案が上程され、可決されました。
4年連続の引き上げです。一定の手続きを踏んで「適当である」とお墨付きを得たものですが、区長、議員、副区長、教育長、監査委員、行政委員会の委員の議案に反対し、職員は労働者であるという位置づけから賛成しました。

おもな理由は、官民格差の均衡をとるためと言いながら、
・調査対象が、比較的大規模事業者の正規職員であること。
・いまや非正規雇用が4割近くを占めているにもかかわらず、正規職員のみが対象であること
・政策立案・意思決定権を持つ立場で非正規や低賃金問題を認識しながら、改善策を講じていないこと

などです。

参考までに、ひき上げ額は、区長で年収で176,954円、副区長で141,946円、議員85,416円。大きな金額です。

以下に、議案の賛否を決めた際の討論の全文を掲載いたします。


フェアな民主主義 奈須りえです。

第92号議案 大田区長等の給料等に関する条例の一部を改正する条例
第93号議案 大田区行政委員会の委員の報酬及び費用弁償に関する条例の一部を改正する条例
第94号議案 大田区監査委員の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第96号議案 大田区教育委員会教育長の給与等に関する条例の一部を改正する条例
第97号議案 大田区議会議員の議員報酬、費用弁償及び期末手当に関する条例の一部を改正する条例
につきまして反対。
第95号議案 職員の給与に関する条例の一部を改正する条例
につきまして、賛成の立場から討論いたします。

区長、監査委員、職員、教育委員会教育長、区議会議員等の給与・報酬は、今回で4年連続の引き上げになります。

これらの議案につきまして、私は、昨年も、区民の理解を得られないことを理由に反対いたしました。

【公民格差均衡のための調査対象企業が規模が比較的大きいこと】

なぜ、理解を得られないのかといえば、報酬の引き上げの根拠となる調査対象事業所が、企業規模50人以上かつ事業所規模50人規模という、規模が比較的大きい企業の正社員の給与になっているからです。

ものづくりのまちと言われることの多い大田区ですが、平成27年大田区のものづくり統計調査によれば、製造業の従業員が50人以上の事業所は2.6%にすぎません。全国の統計調査でも、従業者50人以上の事業所に働く人は4割くらいです。大企業と中小企業との給与格差は歴然としています。大田区民の実態とはほど遠いところで、区長、区議会議員など特別職や職員の報酬などが議論されていることになり、区民の理解を得ることは難しいと考えます。

【対象が正規雇用のみであること】

しかも、人事委員会の勧告は、正規雇用の給与水準と均衡させるものです。労働者に占めるパート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託など、非正規雇用の割合が高くなってきていて、直近の非正規雇用の割合は37.4%、約4割が非正規で正規雇用は6割と少しです。非正規雇用の平均賃金は、正規雇用の労働者に比べ3割から4割程度低くなっています。

規模の小さな事業所の労働者や非正規雇用の労働者が引き上げと聞けば、公務員や区長や議員は優遇されているという気持ちになるのではないでしょうか。

【政策立案・意思決定権ある区長・議員などは職責を果たせているか】

しかも、区長ははじめ、私たち、議員など特別職は、政策立案にかかわり、意思決定権を持つ立場にあるということです。

質疑でも指摘させていただきました通り、いま、私たちは、貧困や格差の拡大という非常に大きな問題に直面しています。私たちは、この困難の解決のために、自らの職責を果たせているでしょうか。

【大田区行政内にいる、多くの非正規雇用、不安定・低賃金労働】

 大田区では、正規職員とほぼ同様の仕事をしていながら、非正規で働く方たちがおおぜいいます。社会保障サービスはじめあらゆる現場を民営化や民間委託して、正規雇用を、不安定雇用、低賃金労働にかえてきました。新たな事業も、委託で行うことが増えていて、委託先の従業員も低賃金であることが多いと聞きます。

【基準人件費を支払われない状況も放置している大田区】

しかも、大田区は、給付している基準人件費とは程遠い賃金しか支払われていない現場従業員がいることを知りながら、公契約条例や政策入札などで現場労働者を守ることもしていません。

人事委員会の勧告に従っているという意味では、今回の引き上げは妥当だということになるのでしょう。

しかし、責任ある政策立案の立場にいる意思決定権者として、そもそもの格差拡大への改善の努力もせず、一方で、非正規公務員、ワーキングプアなどの問題を招くことを自ら行っていながら、一部の比較的恵まれた従業員と比較して、お手盛りで給与や報酬を引き上げることが許されるでしょうか。

【当初所得格差の拡大】

税制調査会の資料をみると、1990年代後半以降の世帯単位でみた「当初所得格差」がものすごい勢いで拡大し続けていることがわかります。

【社会保障給付による所得の再分配は機能しているか】

これを2000年代以降、現金給付や現物給付と言われる社会保障給付による所得の再分配で改善させているというのが今の現状です。

しかし、本当に格差は解消されているのでしょうか。

【社会保障分野への営利企業の参入】

2000年の地方分権一括法施行以降、社会保障の責任主体は基礎自治体になり、社会保障分野に株式会社の参入が許されるようになりました。

【株式会社が提供する社会保障だと財産所得や株主配当分改善しない格差】

社会保障を公務員が提供しても、民営化で株式会社が提供しても、たとえば、同じ1億円を使えば1億円分ジニ係数が改善したことになるそうです。株式会社が社会保障を担えば、そこには、土地や建物などの財産所得や、株主配当や内部留保などの費用も含まれますから、直営ほどに格差は解消されないことになりますが、厚生労働省から、その違いをジニ係数では評価できないと聞きました。

【営利企業提供の社会保障では一般管理費分改善されない格差】

委託や指定管理者に支払われる、株主配当含む一般管理費は、約15%と言われますが、実際には20%を超えていると指摘する専門家もいます。子育てや介護の委託先、民営化先では、従業員の低賃金が問題になっていますから、営利企業が格差を解消するために社会保障を担うと、さらに格差の原因を作るという皮肉な状況もあり得ます。

【格差拡大と報酬引き上げのかいり離】
       ~問題意識のない大田区~
議案上程の際に、格差や貧困と、これら給与や報酬引き上げの乖離についてどのようにとらえているか質疑しましたが、特別区人事委員会の勧告に従うという答弁に終始し、大田区として何をすべきかといった問題意識は全くありませんでした。

大田区の報酬審議会は、区議会議員の政策形成などその責任や役割が大きく大切になっていると評価していると昨日の委員会で報告があります。私たちは、その役割を果たせているでしょうか。

区長はじめ特別職は、特区の規制緩和や中央防波堤の帰属ばかりでなく、こうした格差の解消のために大田区自ら何ができるか考え行動すべきです。

一方で、格差を拡大の要因をつくりそれを放置しながら、区長で年収で176,954円、副区長で141,946円、議員85,416円などの報酬引き上げ議案に賛成することは、意思決定権の現場にいるものとして到底できず反対です。

第95号議案職員の給与に関する条例の一部を改正する条例には、公務員以外のすべての労働者の処遇を改善させる推進力とすべきで賛成です。

このブログを公表してから、今の給与がいくらで、いくらになったのか総額が知りたいというご指摘をいただきました。
その通りでした。
全体の給与の新旧表

23区の一覧(他区は改訂前との比較になります)

です。