民営化によって区民サービスは向上したのでしょうか。
区の施設を民間事業者に運営させる指定管理者制度導入も、どのような形態で管理・運営するのがいいのか、大田区としてのビジョンを示さなければ、単なる安上がりの民営化になってしまいます。
指定管理者制度導入に伴い、区の施設をどのような形態で管理・運営するのがいいのか、大田区としてのビジョンを示さなければならない時期にきていると繰り返し質問していますが、その際の区長の答弁は設置条例に書いてあるということでした。
設置条例は、その施設が何をするかという基本的な位置づけであり、それがあるから良いというのでは、事業内容は定款に書いてあるから営業方針や戦略は必要ないと言っているのと同じで経営者として役割をはたしたことにはなりません。
現在の民営化(まとめて民営化と申し上げますが)では、事業者頼み。たまたま選定された事業者が優れていればその施設の運営は良好であり、そうでなければ、単なる安上がりの民営化にしかなりません。
民営化にあたって「その施設を地域としてどのように活用充実していくか」それを大田区として明確にしたうえで、初めて運営方法の検討、運営主体の選定、業績評価があるのではないでしょうか。
「政策入札」という言葉が一般的になりってきました。
今後、公を担う事業者選定の際には、「法令順守」や「情報公開」「従業員の勤務形態」「福利厚生」「女性の雇用の状況と積極的活用のための取り組み」「障害者雇用」「人権問題」「消費者(=区民)対応」「環境に対する配慮」「地域との共生」「社会貢献活動に対する理解」等々・・といった項目も選定基準として具体的に盛り込む「政策入札」を行なうべきではないかとこれまでも提案してきています。
しかし、その際の区長の答弁は、社会的責任についての問題意識は当然持って参画をしていただく」という事業者任せの消極的なものでした。
多様な活動主体との連携・協働がすすめられていくなかで、これまで行政が担ってきた役割を、NPOや企業などとともに担っていくことになります。
自治体という、まさに社会(=地域)に対しての貢献をその存在理由としている主体が、それまで担ってきた事業を、単なる経済性や効率性重視で、バトンタッチしていくことには、大きな問題があります。
昨年の12月に議決された図書館の指定管理者としての事業者選定に当たり、財務内容の第一次審査に、唯一の民間選定委員であり、財務内容をチェックする専門家である公認会計士が欠席しています。これは、選定そのものが形骸化していることをあらわしている良い事例です。
今回の包括外部監査においても、指定管理者の選考について公募しない理由を決定する前に、候補団体への説明が行なわれていたという指摘があります。
このことは、これまでの指定管理者の事業者選定が事業者ありきであったのではないかという点で問題です。
今後、大田区が、事業者選定に当たっての目的や意義を明確にし、その基準に基づいた選定を行なわなければ、こうした、事業者ありきの不透明な選定、或いはコストのみの安上がりの民営化といわれても仕方ありません。