大田区のリフォーム助成増額補正にみる大田区の課題解決優先順位と公共サービス提供の公平性について
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大田・生活者ネットワークは、ただいま上程されました第99号議案 平成24年度大田区一般会計補正予算(第4次)に反対の立場から討論します。
まず、最初に補正予算について申し述べます。
生活者ネットワークは、平成24年第四回定例会一般質問において、公共サービスの提供において
提供の在り方にばらつきがあり、必ずしもサービス必要性の高い方から・経済的困窮度の高い方から公平に提供されているとは言い難い状況にあることを指摘させていただきました。
そのうえで、大田区の保育園待機児や特別養護老人ホーム待機者、区営住宅入居希望者を数多く出しているサービスが足りていない状況について大田区の問題意識を質問させていただいたところ、大田区も「問題であるという認識を持っていることを」確認させていただいています。
国の基準財政需要額から言えば都区合算で東京都・23区は不交付団体。都区財政調整制度で23区間は調製されていますので、大田区の需要に対し、理論上は足りていることになっています。
一般会計規模で約400億円、民営化や民間委託の効果を大田区は算出していませんが、学校給食・保育園・幼稚園・図書館をはじめ今日も議案として上程されている多くの施設の指定管理者制度導入をみれば、民営化による財政支出の削減効果は決して少なくないはずです。大田区は答弁でこの一般会計予算の増加を生活保護費と子ども手当と答弁しましたが、生活保護で増えたのは約130億円、子ども手当で110億円、合わせて240億円ですから、一般会計増400億円と民営化の効果分の説明には程遠い数字です。しかも、子ども手当は、児童手当が減った分は加味していません。
大田区の言う生活保護と子ども手当の増加だけでは、400億円プラスアルファの使い道を説明することはできないのです。
そこで、一般質問の際にも指摘したのが、優先順位の問題です。
もちろん、当初予算において何に配分するかという問題もありますが、補正予算もまた重要です。
たとえば、一般質問の際に指摘したのが、がん検診の予算計上の在り方です。
大田区のがん検診は、期間が他自治体に比べ、極めて短かく設定されているうえ、検診を希望してもすぐにいっぱいになってしまい、一部のがんを除き、検診できない区民が毎年でています。
ところが、予算がいっぱいになった場合の対応について、23区すべてと、周辺の数市を議会事務局を通じ調査したところ、流用や補正予算でほぼすべての自治体が対応していて、打ち切りにしている大田区のやり方は、極めてまれであることが明らかになりました。
今回の補正予算には、住宅リフォーム助成の増額1,000万円が計上されています。
住宅リフォーム助成は、当初予算で2000万円が計上されていますが、今回1000万円を計上し、予算規模を1.5倍にするものです。
たとえば、大田区のがん検診は、毎年希望者がいながら、検診の上限になると打ち切るため、希望者が検診できない状況が毎年続いていますが、予算措置も補正予算措置もされません。
昨年度は東日本大震災があったこともあり、太陽光パネルの設置希望者が増えました。23年度途中で補助金を使いきり希望者に応えられなくなりましたが、区は、次年度に申請してくださいと申請を打ち切りました。
自治体は、区民生活において、重大な影響を与える生活基盤をささえる事業を最優先すべきです。それが、子育て支援、高齢者、障がい者福祉、住宅施策などであると考えます。
当初予算における優先順位の考え方は、特に、こうした補正予算執行の際に顕著に表れます。
議案質疑の際に、補正予算計上についての大田区の優先順位についての考え方がわかる資料の提示を求めましたが、示されることはありませんでした。
結果からみれば、現時点で、大田区が、区民の住宅リフォーム事業を最優先したことになります。
一方で、確かに、防犯・防災・環境・バリアフリーは重要ですが、改修の際に、これらの名目のつかない改修はまずありえません。
大田区は、どの改修が多いかという質問に対し、データを取っていないと答えましたが、このことからも大田区がこの事業に防犯・防災・環境・バリアフリーなど一定の政策目的効果を期待していないことは明らかです。
結果として、大田区が、そして、行政が様々な場面で税金の使い道として問題視している「個人財産への助成」という課題を突きつけられることになってはいないでしょうか。
日本の税の機能は先進国中、最も逆進性が高い、所得再配分後のジニ係数が最も大きいと言われています。
たとえば、今回の補正予算1000万円を待機児対策に使うのか、高齢福祉に使うのか、障害者福祉に使うのか、によってわずかではありますが、ジニ係数も異なってきます。
リフォーム助成は基本的に、不動産を所有している区民に支給されるもので、賃貸物件に住む若年層はじめとした区民はそもそも支給対象外です。平成20年の住宅土地統計調査によれば、大田区の持家世帯は、戸建て・共同住宅合わせて約50%。人口ではわかりませんが、ほぼ1/2が持家ですが、一方で、賃貸、公営住宅、社宅ほか世帯も1/2。
リフォーム助成を受けられる世帯は1/2でしかありません。
大田区の区民生活に必須の基本的な子育て支援、高齢者福祉、障がい者福祉、住宅などの公共サービスは、足りていません。
一方で、国民健康保険制度そのものの在り方も問われていますが、現行制度をなんとか維持しようとするなら、予防は重要で有効な事業です。
足りていない公共サービスがありながら、合理的説明もなく、明確な優先順位もつけず、今後もこうした予算執行がなされるなら、優先改題は、常に先送りされ、更に区民生活は悪化します。
こうした、一つ一つの判断が、結果として、税の再配分機能に逆進性を持たせ、現在の先進国中で一番逆進性の高い国日本を作ってきたのは明らかで、到底賛成することはできません。
以上をもって反対討論といたします。