いま、大田区をはじめとした政治に求められるエネルギー政策とは

みなさんとお話ししていてよく耳にするのは「省エネしています」「これまでの暮らし方を見直さなければならないと感じています」・・・。

原発事故をご自分の暮らしに引き寄せ、何かしなければとお考えになる姿勢に頭が下がります。

便利さと表裏一体になっていた原発政策に、その恩恵を受けていた私たちがそう感じるのは当然のことと言えます。そして、無駄な電力をできる限り使わない、暮らしのありかたを見直そうというのはとても大切なことです。

だからと言って、政治が「省エネしてください」というだけが政策だとするならば、それは違います。

現在は、事故の被害を食い止めることが最優先課題ですが、その後目指すのは省エネだけではない効果的なエネルギー政策のはずです。


省エネ家電製品の性能も良くなりました。エコポイントは、必ずしもエネルギー政策だけというわけではありませんが(経済活性化)、日本の省エネ技術が無駄なエネルギーを削減する大きな力になっています。

私たち個人が「省エネ」に努めるとともに、政治の力で、省エネにつながったり、より安全なエネルギーへと効果的に転換できる政策が求められています。

■まずは大田区が省エネを!!■

例えば、区役所では「エコオフィス」と呼ばれる省エネ目標がかかげられていますが、達成されたと言っている背景には大きなまやかしがあります。

この間、大田区では、様々な事業を外部化していますが、これら外部化された事業の中の、「指定管理者制度」という施設管理を民間に任せるしくみを採用した施設の電力消費は大田区が使用する電力量に含めていないのです。

大田区では、この5年の間に「図書館」「プール」「特別養護老人ホーム」「障害者施設」「男女平等推進センター」「駐車場」「文化の森」「区民プラザ」「産業プラザ」・・・など実に多くの施設にこの「指定管理者制度」を導入してきました。

ところが、分母(=過去に使用した電力総量)はそのまま指定管理者を採用した施設を含めながら、分子からこれらの施設を除いているため、自動的にこれら「指定管理者制度」を採用した施設分の電力が、「省エネされたこと」になっているのです。

このことは、エコオフィスの達成状況を報告する前の段階で指摘し、修正すべきであると指摘したにもかかわらず、何の改善もせず、エコオフィスの目標が達成できたとする報告を大田区は出しています。

大田区の「省エネ」とは一体何でしょうか。区民に「省エネ」を呼びかけながら、公共部分の「省エネ」は真面目に検証さえされず、表面的な「評価」を吹聴しているだけという姿勢にがっかりします。

■電力消費の8割を占める事業者の省エネ推進のため行うこと■

例えば、電力料金体系は「家庭用」と「事業用」では根本的にそのあり方が異なっています。消費の2割を占める「家庭用」電気料金は、たくさん使うとそれだけKWH当りの単価は高くなります。

しかし、事業者用が使用する電力は、基本料金は非常に高く設定されていますが、KWH当りの単価は、家庭用電力のように、傾斜的に定められていません。そのため、ひと月内の電力使用料が多ければ、それだけKWH当りの単価が安くなるという構図が有ります。

家庭で採用されている電力料金体系を採用することで事業者への更なる省エネ効果が期待できます。

高コストな日本の電気

一方で、日本の電力料金は世界でも一番高額になっていて、アメリカの3倍にもなっています。はたしてこの差は、資源(石油や石炭)を持たない日本だからという理由だけで説明されるものでしょうか。

電気料金の中でも、原子力発電によるコストが一番高く、コスト高と言われている水力発電をさらに上回っています。電子力発電のコストは、一般には安く公表されているそうですが、どうも、算出基礎となるコストの取り方に違いが有るようです。この根拠は田中優さんが、電力会社が経済産業省に提出した書類から抜き出したものです。

事業者は、夜間電力を消費することで電気料金を抑制したりしていますが、電力をたくさん使用する鉄道事業者や精錬業者などは自家発電した方が電力を安く調達できるため自家発電設備を持っていて電力会社からは電気を買っていません。

日本では国際競争力をつけるためのTPPの議論が行われていましたが、電気料金をいかに安くするかということにも力を注ぐ必要があります。

■電気事業の自由化■

一方で、一時言われていた電気事業の自由化がすっかり身を潜めています。

今回の原発事故には様々な課題が潜んでいますが、その一つは、一事業者が独占して電力を供給している体制にあるでしょう。

大規模な発電設備から供給される電力を、大量消費地である首都圏で消費しているという構図です。

このことは、私たちが電力を選べないということにもつながっています。

欧米では、電気事業者を選択できる状況になっています。

A社の太陽光発電。B社の風力。C社の原子力。自然エネルギーを求める人、コストを重視する人など、それぞれが服や家電製品を選ぶように、自分の好きな電気を選ぶことができます。結果として、競争が働き、コスト削減と電力単価の低下、安全性の向上、自然エネルギー促進につながるでしょう。

これも先日の田中優さんの講演でうかがったことですが、欧米では、既に、新規に採用されるエネルギーの7割が自然エネルギーになっているそうです。

日本は資本主義社会であるはずなのにも関わらず、戦後70年にもなろうとするこの時にも電力事業が1地域1社独占というのはなぜでしょうか。