「子どもを守るごみセミナー」でお話しした東京23区の特別なごみの話に思う住民不在の広域化がもたらすもの

ごみの勉強をしたいので、とお声をかけていただき、東京23区の特別なごみ処理の仕組みについてお話ししてきました。
原発事故後に、ごみや下水汚泥の焼却灰の放射能濃度が高くなったこと、被災地の放射能に汚染されている瓦礫が東京に持ち込まれ焼却されたことなどからごみの問題に興味を持たれたそうです。
ごみ処理一般についてごみ弁連の武井由起子弁護士、地域の清掃工場の建て替え問題について地元の方、そして、私が東京23区のごみ処理のしくみについてお話ししました。

ごみは、産業廃棄物と一般廃棄物に分かれます。
一般廃棄物(*)は市町村のお仕事です。行政的に言うと、基礎的自治体(=市町村)の事務ということになります。
市町村の仕事であるというところが非常に大切です。
地方自治法の第一条で 国には国がなすべき役割が有って、きちんと役割分担したうえで、住民に身近な行政は出来る限り自治体にゆだねなさいと定めれれています。
憲法第92条〔地方自治の本旨の確保〕が根拠になっています。
ごみを処理するのに、今、日本では、
①ごみを集め、処理施設まで運んで(収集運搬) ②清掃工場で焼却して(中間処理) ③埋め立て処分場に埋め立てる(最終処分)
という3つの過程があります。
通常は、①②③を市町村で行っています。
【歴史的経緯】 東京都の中でも、23区は、基礎的自治体と言って、市町村並みの権限を与えられていますが、戦前(昭和18年)まで、東京市の内部団体(=川崎市幸区や横浜市緑区などと同じ)の名残りが様々なところにみられます。
通常であれば、自治体内で行っているにも関わらず、東京都が行っているものが少なくありません。 ごみの処理もその一つで、東京都が行っていたのが、23区の事務になったのは、つい先日、平成12年4月です。(清掃事務の移管) 
東京都から23区への清掃事務移管は、2006年以降の完全な自区内処理を目指し、収集・運搬は各区で、そして、中間処理は、23区が「東京二十三区清掃一部事務組合」という地方公共団体を設置し2000年にスタートしました。
しかし、2003年に、23区のごみ量に対し、清掃工場の焼却能力が足りたとの判断から、清掃工場の無い6区(千代田区 、 文京区 、 台東区 、 新宿区 、 中野区 、 荒川区)を残し、「当分の間」共同処理を行っていくことになりました。
*「当分の間」ということで、合意された23区の共同処理ですが、その際には、清掃一部事務組合の抜本的な改革行い、効率的・効果的な運営を図ることが確認されています。 その際、示された「抜本的な改革」は、その後の、一部事務組合の経営改革や清掃工場の管理運営や売電を担う第三セクターの設立などの流れを作ることになりました。
これが、今の、23区のごみ処理の状況です。
最近では、この「当分の間」という言葉にこだわる首長や議員も少なくなり、現行の共同処理が最終形のようにさえなってきています。 目前の経済性や効率性は、ことの本質を見えなくするとともに、大局的にみれば大きな無駄を放置することにもなりかねません。
【23区のごみ処理の仕組みがもたらす弊害】
収集・運搬、中間処理、最終処分が、23区各区、一部事務組合、東京都とバラバラに行われていることで、私は、以下のような問題があると感じています。
①各区が予測するごみ量と清掃工場の処理能力にかい離が生じ、清掃工場の処理能力に余力が生じる。(一部事務組合のごみ量予測が過大になる) ②23区で共同処理する東京二十三区清掃一部事務組合には、議会はあるものの、選挙で選ばれた専任の議員で構成されているのではなく、23区各区の議長が議員となって構成されている住民不在の議会のため、意思決定が形骸化しがち。自治体の長にあたる管理者は、23区長会の会長。 ③中間処理にかかる経費は、23区で分担する「分担金」でまかなわれているが、清掃工場のある区と無い区の公平な費用分担の在り方など算定が困難 ④共同処理であるがゆえに、費用削減のインセンティブが働きにくい

【ごみ処理の広域化という全国的な傾向】
一方で、こうしたごみ処理における一部事務組合のような広域化は、全国的に観られる傾向です。さすがに、人口900万人の23区を一つの区域としているところは他にはありませんが、広域連合や一部事務組合といったしくみを活用して複数の自治体のごみ処理を共同で行っているところは少なくありません。
23区の場合には、共同処理のもとに過去の経緯がありますが、一方で、自立した自治体であっても、ごみ処理を共同で行うところが少なくありません。
その背景には、環境省が平成9年に出した【 ごみ処理に係るダイオキシン類の削減対策について 】という通達があります。 ここで、環境省は、ダイオキシンは、高温で焼却しているときには発生せず、立ち上げ・下げの温度が下がった時に発生することから、連続運転を求め、 ①連続運転を行うためには、一定量のごみが必要だから広域化しなさい。 ②その際には、ごみ処理の効率性、発電の効率性・経済性等から考えて、焼却能力300t/日以上が望ましい。最低でも100t/日(大規模化)と具体的に数字をあげて示しています。
の2つを求めているわけです。
補助金を出す環境省の示すこうした目安が、ごみ処理の広域化と清掃工場の大規模化を招き、結果として、清掃工場の余力や意思決定の形骸化、経済性の問題を招いていると感じています。
そして、この問題が大きく顕在化したのが、災害瓦礫の広域処理だったと言っていいでしょう。
国は、産業廃棄物だった津波のごみをわざわざ一般廃棄物に指定し、国主導で、全国各地で処理できるよう「広域化」してしまいました。
更に今、国は、福島の高濃度の放射性廃棄物を、国が処理すべき「特定廃棄物」に指定し、地域住民の関与出来ない国の直轄事業にしています。そのうえ、更に環境アセスメントという住民の関与を経ないですむ、規模の小さな焼却炉による焼却を行おうとしています。
原発事故に関る津波のごみは広域化、福島の放射能の濃度の高いごみは国の直轄事業、結果として住民の関与を遠ざける形になっています。
市町村が通常行ってきた清掃事務を、これまで行ってこなかった国が直接行うことで、どのようなメリットが生じるでしょうか。 少なくとも、災害瓦礫の広域処理においても、また、現在福島で行われている高濃度の除染後の廃棄物などの焼却においても、国が行ったことで、より安全、効率的、経済的といった声は聞こえてこず、また、現在のところデータによる検証もみたことがありません。
憲法第92条〔地方自治の本旨の確保〕を根拠に

地方自治法の第一条で定められている、 国には国がなすべき役割が有って、きちんと役割分担したうえで、住民に身近な行政は出来る限り自治体にゆだねなさい
という地方自治の本旨がくずれ、中央集権化していることは、このごみの処理にも現われてはいないでしょうか。